第159話 リンダ護衛部隊
王国歴 265年6月第1週
とにかく、王国に無い物でリンダを飾ろうと考え、開発だけ済んでいる繊維、アセテートとレーヨンを作った。
コジロウの作った初期型織機は、大量生産はできないがコツコツと、ドレス作りをしている。
レミは染色と肌着作り。
オオサカ商人組合で作られていた2本指靴下と、私の3Ⅾプリンターで数種類のブーツを作る。
リンダは、元の世界では医師であったが知識を継承できた訳ではない。
だが町医者ケネスの息子だった時に得た知識は、スキルのように思い出していた。
そのような素地があり、レミから医者としての知識を学ぶのは、苦にはならない。
そこで、私が作り出したダイヤルロック付きのアタッシュケースに医療キットと、点滴用のバッグ、ホース、注射針などを入れておいた。
デリンジャー・グランデは私より6歳年上の24歳のはず。
来年には、25歳の誕生日パーティーが開かれるだろう。
地位を安定させるためその頃までには、心を掴んでおきたい。
リンダ・ラングリッジ18歳。知的な美人。
金髪で薄いブルーアイ。
やや小さめの164㎝、47㎏。
86、54、88…Bカップ。
王国で私カールの味方は、七曜以外にはダグザお爺さんしかいない。
経済的にという意味だけど、今は既に七曜商事に取り込んでしまっていた。
AIカールにダグザ爺さんの居所を探してもらう事にした。
北の里の出身ではないお爺さんは、フエキ屋敷に店舗を持っていただけで、住んではいなかった。
だけど、当然付近に住んでいるだろう。
そう思って、研究所のフェルマ食堂でAIカールが聞いたところ、以前の工房兼武器屋を借りているらしい。
待っていると食堂にダグザさんがお昼を食べにやってきた。
AIカール「ダグザさん!」
ダグザ「おぉ、カール!久しぶりだな。元気にしてたか?」
AIカール「はい。やっと暇になったので戻って来ました。」
ダグザ「戻って来た…ってどういうことだ。」
七曜の幹部たちは、AIカールの事を知っているが、本人が外国に居る事を知っているし、AIカールの事は気にしていない。
というか、相手にしていないのだ。
AIカール「実は、共和国の南部で助けた身寄りのない女性を、養子縁組して扶養する事にしたのですが、その人が王国での暮らしを望んでいるんです。」
ダグザ「ほほう…カールの娘という事になるのか…」
AIカール「いえ、歳は同じ18歳ですから、ダグザさんから言えば『孫』でいいです。」
ダグザ「うん…それで?」
AIカール「無人になっているあの屋敷で、3人で住もうと思っているんですけど、どうでしょう?」
ダグザ「おう、それはいいな!」
AIカール「但し、里からの使用人やメイドは居ませんよ。」
ダグザ「ああ、そんな人は居ない方が気が楽じゃよ。それでいつ引っ越すんだ?」
AIカール「養子の子は『リンダ』っていうんですけど、共和国南部に迎えにいかなきゃいけないんで、1週間後からの予定です。」
ダグザ「よし、わかった。どうせ食事は研究所で食べられるし…問題はない。」
研究所を出たAIカールは、研究所の装甲輸送車を無断借用してキンキ食品工場へ行く。
ダグザは一般的な武器しか扱っていないが、とりあえず、荷物を少しずつ屋敷へ運び出していた。
その頃、キョウトの忍びの若者たちから男女3名の選抜が行われていた。
初めての国外任務だ。
ヒョウゴやオオサカに移転した者と違い、ここに居るのは単身者寮に住まう、成人した15歳から18歳の者達。
いきなりホームシックに成られると困るのだ。
技術的に劣っていても、フエキ屋敷で鍛えれば問題ないだろう。
女子はリンダの護衛。
男子は屋敷の護衛を考えていて、武器は特殊警棒のみ。
AIカールがキョウトに到着したので、リンダのギルドカードを作成し、リンダが助手席、後部座席に6人の若者が乗り込んで出発だ。
今回、衣装はまだ出来ていないため、3Ⅾプリンターだけが荷物だ。
初めての長距離移動を体験する忍びたち。
彼らに合わせて4日間で共和国を縦断し、サンドワームは唯一銃を持つAIカールが仕留めた。
食品工場では、急ピッチでアセテートの色つやの鮮やかなドレスや、シリコーン樹脂製の乗馬服などが作られている。
当然、護衛達も同席する可能性があるからだ。
問題は武器だろう。
私はグロック34をベースにした毒針銃を開発している。
9㎜弾と同じ大きさの弾丸に高圧ガスを封入して、トリガーで破裂させて直径3㎜×長さ15㎜の毒針を射出する。
だが、火薬を使わない分、ガス圧が小さく反動が無い反面、スライドを後退させるパワーが無いため、手動でスライドさせて排莢と再装填をしなければならない。
ダブルアクションにはなるものの、反動が小さく命中率は高い。
しかも、サプレッサーが不要なので、極めて小型で携行性が良い。
ライフリングは3条で、十分な性能だ。
有効射程距離は20mくらいだろうか…。
お読み頂き、ありがとうございます。




