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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第2章 AIたちの安寧の地
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第152話 双子の命名の儀


王国歴 265年1月第4週


マリリンの双子の5歳の誕生日が迫っている。

だが、名前はまだ決めていない。


これから王都ショコラに行き、マリリンと会うのだけど…。


いけない事かも知れないが、アリスとは夫婦なのに、会いたいという思いが希薄だ。


思えばアリスがやって来たのは259年2月。

当時アリスは12歳。

明るい性格、お金よりも相手の気持ちを優先させる価値観。


アリスが男だったとしても、親友になった気がする。


だけど最近のアリスは変わった、と確かに感じる。


お互いに18歳になり、大人になったからというより、社会的な立場も変わり、できる事も変わった。


おそらく、私だけが自由に行動できているのだろう。

AI人形とはいえ、若い美少女のままのアイと夫婦のような生活を続けているのだ。


だからこそ、昔の少女だった頃のアイと一緒に訪問するのはまずい気がする。

今回は男性AIと行こう。


忍びの者達の訓練は、オーロラに任せ、ハンゾウを護衛に選んだ。


軽装甲戦闘車は、防弾仕様の窓が上下しないタイプで、円形レーダーと赤外線監視が使用可能な人口眼球20がルーフに付いている。

(軽装甲輸送車は合わせガラスで窓が上下可能)


王国には銃を普及させてしまった以上、警戒はしかたがない。

ハンゾウはグロック34を携行武器にしている。



今回の帰郷では、湖の西側、豫洲よしゅう徐州じょしゅう~えん州を経由する予定だ。


例の統一教会の実体を探るつもりなのだ。


まずは豫洲よしゅう寿春じゅしゅんに行ってみた。現在の安徽省あんきしょうの中央部に位置し、川の蛇行により水害が発生しやすい場所だ。


穀物や植物油の生産が盛んで、主な産品は米・小麦・油菜・綿花など。

中国政府の貧困農民扶養開発計画の重点地区の一つでもある。


と言っても、それは本物の中国の話。


ここは名前だけ真似た土地なので、湖も川の蛇行も無いのだが、治水が悪いのは同じ。


中南部に位置する気候の関係から、米・小麦・綿花の栽培が盛んなのは同じようだ。

どうやらオオサカ商人組合が綿の仕入れをしているようで、最低限の生活は出来ている。


中心部に統一教会があるので、周辺の聞き込み調査をする。


教会長という役職の者は『キム』という人物だが、最近は見かけないらしい。

評判は悪くない。

金払いが良く、人の面倒もよく見ていたそうだ。


あくまで『噂』だ、と強調して教えてくれたのは悪評高いキム大統領の兄弟らしい。


だが今、資金源が途絶えたらしく、自給自足の者達の家になっているらしい。




次は徐州じょしゅう下邳かひ


位置的に湖に面しているし、小規模な農家しかない事から、帝国に野菜を売りに行っていたのは、この地方の者達だろう。

水が豊富なので米と野菜が主な産品だ。


聞き込みをしてみると、川船で野菜を売りに行ったそうだが、船を自在に操れる者が少なく、物々交換で得た肉も硬くて、割が合わないとやめてしまったらしい。


最後がえん州。現在の山東省さんとんしょうがある位置で、本物の中国なら、水滸伝ゆかりの梁山泊や、200億トンとも言われる石炭の地下資源が眠っているのだが…。


ここには統一教会の痕跡も無かった。



王国歴 265年2月第1週


えん州を抜けてから、2泊3日で王都ショコラへやってきた。

(結構、ギリギリになってしまった。)



双子の5歳の誕生日。

主役は里の者たちだ。


教会は既に無く、ここ王都では、病院のフィアナ女神像で祈りを捧げる。

本人と親には加護があれば、お告げがあると言われている。


男の子には『鍛冶』が、女の子には『神官』の加護があった。


私の出番は夜。

七曜ショコラ支部3階の会議室に集合を掛かっている。


装甲戦闘車を支部に横付けして、3階に上がる。

久々に七曜の幹部達が集まっていたが、まずは命名の儀。


日本の『お七夜おしちや』とは異なる里の一族の長の儀式。

(とは言っても、既にラングリッジ家の行事作法は誰も知らない)


「マリリンの産みし男子、5歳となる。命名、タクミ。」


「マリリンの産みし女子、5歳となる。命名、マリア。」


「タクミには、ショコラ工房のおさを命ずるものなり。」


命名の儀が終わり、その夜は、タクミとマリアとマリリンの3名で夕食を取った。

始めて見る父親の姿に、最初は緊張していたふたりだったが、寝る前にはすっかり仲良しになっていた。


次の日はアリス邸に行く。

2年後には娘が5歳になる。

3年後に息子が5歳に。


だが、今はまだ子供たちには会えない。

無事に5歳を迎えて欲しい。

今はただ、その思いだけだ。


アリス邸にはポルトランドにいた周辺隊がお世話係として働いていた。

かつては、『病弱の色白の子』と思っていたアリスが、館の主なのだ。


アリスによれば、彼らは大変熱心に仕事をこなしているらしい。

里の風習も理解していて、大いに助かっているとのこと。


少しピカピカ具合が減った感はあるが、元気なアリスとの一晩は、まるで再婚カップルのような感じがした。



無事にショコラでみんなと再会したあと、最後は宰相との面談であった。


参謀本部のあるフエキの宰相執務室に行くと、シンシアとエリオット、そして宰相がいた。


例の乳酸飲料は、ポーションを混ぜて参謀本部内で試飲されているようで、みんなすこぶる元気なようすだ。


エリオットとハグをしたあと、シンシアと握手したまま


「エリオットはどうですか?真面目にシンシアを愛してますか?」


シンシアをからかいながら『分析』をして、hCGホルモンの分泌を確認できたので、

宰相に


「シンシアは確かにご懐妊です。おめでとうございます。」


と、申し上げておいた。






お読み頂き、ありがとうございます。

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