第150話 黄山攻略キャンプ
王国歴 264年9月第3週
キョウト地域、ヒョウゴ地域、そしてオオサカ地域も基本的に忍びの者たちで管理できる体制を組み上げているところだ。
これは、『AIと人が共存できる環境』の大いなる実験でもある。
キンキが呉の国、又は、揚州の範囲なのか不明ではあるが、黄山の資源確保のためには、拠点作りが必要なのは明白だ。
まず私が土魔法で作り出したゴーレム2体を使って、4m道路の右側の森を幅20mほど更地にするところから始まる。
最奥に丸太になった木を積み上げて、アイが枝を落としていく。
200mほど進んだら、道路から5m奥まった所に奥行5m×幅20mの広さで切り株を取り除き、木材倉庫を土壁で作る。
最初は天井は無いのだが、ここに丸太と落とした枝、切り株をどんどん積み上げていく。
短調な作業だがこの作業の繰り返しだ。
200mを1時間のペースで進んでいく。
私の出番はその200mごとの木材倉庫を作る事と、4m道路を8m道路に拡幅し側溝を作る作業だ。
10時前から始まった作業だが、20時に2km。私は22時に拡幅した道路に停めた装甲車で眠りにつくが、ゴーレムとアイは眠る事なく、作業をしている。
翌朝6時には起きて、夜中に進んだ8時間分の倉庫建設と拡幅工事を行う。
今日から作業空間があるので、鉄パイプとシリコーン樹脂で屋根作りも行う。1日で4800m、10日で48km。
15日目に、コジロウとハンゾウが合流した。
キョウトのギルドを百地という伊賀衆に任せて来たらしい。
現在70km地点だが、ハンゾウには落とした枝を利用した炭焼き作りをしてもらう。
まずはそのためのレンガ作りからだ。
コジロウには周囲の獣狩りと山菜などの食材調達を頼んだ。
レンガを組み上げて炭焼き小屋を適度な間隔で作り、伊賀衆と甲賀衆にそれぞれ炭作りを任せた。
伊賀衆と甲賀衆ともに10人が1つの班として作業を行い、できた炭をそれぞれキョウトとヒョウゴに搬送するため、軽装甲貨物車を各1輌ギルドに渡した。
結果的に運転技能を教える事になり、キョウトの南側に、運転訓練場を開設した。
講師は週に1度、ムサシとオリビアが担当している。
ムサシとオリビアの2人のAIは、食品工場を守るだけでなく、積極的に帝国方面からの進入者を発見、検問している。
だが国境線は縦に500kmにも及ぶ距離があり、物理的な国境の構築は不可能なのだが、一応、国境線上に砦を作り、所々に入国希望者は砦に来るように注意看板を立てている。
黄山では、25日目にようやく拠点作りに適した地点に来た。
ここまではゆっくりとした上り坂であったのが、ここからは本格的な黄山への山道になる。中国の山水画に典型的な切り立った崖では無いが、ここから三合目という感じだろうか。
まずは、急こう配になっている山肌をくり抜いて倉庫を作る。
そう、ここからは土よりも岩が多いのだ。
はじめ、軽石のようなもろい岩だったのだが、3mほど進んだところで、突然姿を現した固い花こう岩。
岩の壁に、ゴーレムにつるはしを持たせて削る。
私の個人的な贅沢なのだが、軽装甲車が出入りできる大きさの通路がほしい。
大まかな作業は早いのだが、黄山攻略キャンプの構築には、コンクリートでトンネルの壁を補強し、奥行き10mの室内に下水施設の追加工事もあり、完成は9月末まで掛かった。
王国歴 264年10月第1週
食品工場の主役であるレミとコジロウの生産職組を黄山拠点に呼んで、この拠点での目標を打ち合わせた。
炭焼きは、伊賀衆と甲賀衆が各自の拠点に必要な数を生産、運搬するように指示してある。だが、工場の販売用も欲しいので、AI組も炭を生産しパック詰めの商品化をお願いした。
アイは森林で狩りをしながら、森林内の獣の分布を調べている。
私は魔力を使わない真空パック機を作り、シリコーン製のパック袋を作っている。
アイは、ある程度の大きさに切った肉を袋に入れて、乳白色の部分に肉の種類とグラム数を直接印字して、攻略拠点の岩盤冷蔵倉庫に入れていく。
そしてレミは、これら未調理のレトルト肉を調理釜で熱処理をしていく。
これが半調理済の肉パックだ。
ここから更にレミは、シチューやカレーなどの調理済レトルト商品を生み出していく。
料金は、完成品となった内容量(g)×グラム単価なのは、ギルドカードでの電子決済ならではのしくみだと言える。
ただこれらの事業を継続的に行うため、この地に食肉加工の第4工場。
収穫した山の幸と4工場の肉素材を使ったレトルト食品を作る第5工場。
そしてシリコーン樹脂やその他の化学繊維や機械を作る、私の研究室を作る事にした。
私は、手始めに靴を作る3Dプリンターを作りたいのだ。
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