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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第2章 AIたちの安寧の地
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第149話 AIの結婚



王国歴 264年9月第3週


オーロラ「カール様はアイと結婚はしないのですか?」


度肝を抜く直球の質問に、何と答えていいのか一瞬頭の中で『結婚とは』という検索キーワードがグルグル高速で回っている。


ふと、手を繋いでいたアイを見ると、少し頬を赤くしてニコニコしている。

こういった表情の変化は、グラフィックが綺麗なゲームでは、キャラクター作成画面でも見る事はできたし、そこからデータを流用したのだが…とてもいい。



結婚について、どのように話しをすると分かりやすいのかを考える。


「多分、結婚というのは、社会的な立場を明確にするために行われている制度だと思う。例えば、私はアリスと夫婦だけど、それはアリスの立場を『カール・ラングリッジという男の妻』と明確にする事が目的だったんだと思う。」


「でも今アリスは、子供を育てる母としての役割に全力を注いでいて、妻の役割は果たせない。それが北の里の文化だし、私もそれを理解している。」


「ここからは私の問題だね。貴族になった私は第二夫人を持てる。つまり、正式にもう一人の女性と結婚できる訳だけど、そんな気持ちは無くて。」


「元々アイは、アリスと全く同じに作った人形だから、アリスの過去の姿でもあるアイに、妻の役割を求めているんだろうな、私は恵まれているよ。」



オーロラ「それで、アイと結婚はしないのですか?」


「そうだったね。さっきも言ったように結婚とは、社会的に明確にするためにする制度だけど、歳を取らないアイの存在は、社会に明確にはできないんだよ。」


「飽くまでも、結婚とは人間同士で行う儀式。愛情とは別の問題なのさ。結婚を『夫婦間の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子が嫡出子として認められる関係』と定義している場合もある。」


「そういう意味では、アイとの性的関係では決して子供は生まれない。その事があらかじめ分かっている関係を正式に『結婚』とは認められない可能性もあるね。」



オーロラ「では、もしも子供が生まれる可能性があるなら?」


「その場合には、相手が人間でなくても『結婚』として受け入れられるかも知れない。」


「でも私にはそんな改造は無理だよ。それは神の領域だからね。」



オーロラ「人間なら、みんな結婚できるんですか?」


「いや、そういう訳じゃない。」


地球(日本)のデータによれば、1982年の出生動向調査で男性22%が『恋人がいる』と回答していて、それは2015年まで変化はない。


逆に言えば、70%以上の男性に交際相手は居なかったという事だ。


面白い事に、女性は1982年の24%から30%を超えて、1992年から2005年まで35%を超えている。


つまり、女性は恋人と思っているが、男性は恋人と思っていないという事だろうか?


江戸時代の戸籍資料によれば、武家人口は総人口の8%程度で、残り92%の庶民は、夫婦別姓、夫婦別財の経済共同体だったそうだ。


それが1898年明治31年に公布された明治民法により、庶民の結婚も家制度、家父長制度に規定され、妻は家事と育児という役割が規範とされた。


これにより、女性にとって結婚は就職のような位置付けになり、生活のためには結婚をする以外にはなく、お見合いという社会システムも機能して、1990年まで生涯未婚率は5%以下を維持する事になった。


この驚異的な結婚率が1875年明治8年に3340万人だった人口が、1967年昭和42年に1憶を突破する原動力になったと言われている。


「私の知っている世界の生涯未婚率は男性で25%、理由は自由が無くなる…だったかな。女性は16%くらいで、理由は結婚する意義が見つからない…だったかな。」


オーロラ「そうなんですか…」


「でも、オーロラにはハンゾウがいるじゃないか。お互いに嫌いじゃないんだろ?」


オーロラ「そうなんですけど、なぜか、ハンゾウよりもカール様が好きなんです。」


ハンゾウ「私もオーロラよりも、カール様が好きなんです。」


「それは分かるけど、その気持ちと結婚する気持ちとは種類が違うと思うよ。」



この日、軽装甲車のルーフに、レーダーの円形アンテナと、パトライトのように回転可能な人口眼球20を取り付けていたのだ。


一応の改造が終わり、二条城の地下駐車場から、ハンゾウとオーロラに見送られてキョウトを出た私とアイ。


興味本位で各パーキングエリアを訪問していたのだが、オオサカまでの中間地点という事で休憩をとる事にした。


だが、中央のレーダーパネルは雨雲が接近してくるのを映し出していた。

右側パネルは人口眼球20の画面だが、ここでも遠くの空に真っ黒な雲が見える。


レーダーパネルの表示範囲を広範囲に切り替えると、雨雲の発生は西南西方向の山で生まれていた。


この発生地点の山といえば黄山だろう。

黄山に衝突した空気が雨雲を作り出しているのだ。

装甲車の後部席でアイの入れたお茶を飲み、雨雲が到達する前に出発した。


オオサカから南に少し走った所から、黄山方面に分岐する道がある。


今日はここを入ってみようと思う。

実はあと2カ月ほどで冬になる。


この共和国南部のキンキ地方でも、1月2月は雪がふる季節だそうだ。

だとすれば暖房のために、木材が欲しいのだ。

黄山周辺に中型獣もいるという確かな情報も得ている。


食肉と暖房用燃料の両方が狙いだ。



お読み頂き、ありがとうございます。

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