第144話 かがゆき型巡視艇
王国歴 264年9月第1週
兵士達の教育訓練を、セバス少佐以下のスタッフに任せて、昼間の私は、入荷したアルミ合金を設計に基づいて錬金している。
H型鋼を作り船の骨組みを組み立てていく。
かがゆき型巡視艇というサンプルがあるので迷いはない。
延々と図面通りに錬金魔法によって成形していく。
船体は最終的に鋲の無い一枚ものに仕上げる。
ウォータージェット推進のプロペラを推進器の中で成型して、ノズルを取り付ける。
ドックの中にある鋼鉄製の30m船はプロペラがむき出しで、船底を上にした姿のまま放置されている。
あとで、インゴットに変えておこう。
データによれば、かがゆき型巡視艇の総トン数は100tほど。
基本排水量はざっくり総トン数の40%程度と言われているが、それでも40トン。
入荷したエンジンを1隻あたり3基取り付けて、残り1基は整備用と訓練用だ。
長短レーダーや魚群探知機などの細かい部品を作りながら、取り付けていく。
今度は操舵室後ろの乗員の個室に取り掛かる。
部屋は6部屋用意した。船長、航海士2名、機関士2名分だ。
操舵室正面の43インチ表示パネルには、XバンドとSバンドのレーダー反応が表示されている。
この左のパネルは魚群探知機の映像用であり、右のパネルは赤外線捜索監視装置で計3枚を取り付けた。
兵装だが12.7mm×99mmのNATO弾を使うM2重機関銃を模倣製造する事にした。
理由は信頼性が高く量産がしやすい事と、さすがに1000発/分のガトリング式機関銃はオーバースペックだし、機構が複雑で作りにくかったのが理由だ。
M2重機関銃は構造がWebにもアップされていて、模倣しやすい。
しかもこの銃でも400~600/分の発射速度はある。
この銃に照準付きガラススコープと人口眼球40を取り付けて、船首の砲台に固定する。
重量は40kg。全長1,654mm、有効射程 約1000m。
砲台の回転用と銃座固定部の2か所に上下用のステッピングモーターを取り付けて、操舵室のレバーにより発射できる。
レーダーと赤外線捜索監視装置のリンクにより、中央のレーダー画像でも、右側の赤外線探索画像からでもターゲット指定はできる。
ターゲット指定により、操舵室のCPUによる目標追尾型遠隔操縦機能(RFS)がONになり、有効射程内に入りしだい、発射レバーは有効になる。
実はこの巡視艇の速度は60km/時と哨戒艇よりも速いのだ。
射撃指揮装置があるので、波による船の変動や、風の影響も自動的に補正される。
最後に水上発射管を左弦後方と右弦後方に追加設置したが、魚雷用ではなく投網用で、魚群探知機と連動して射撃指揮装置が威力を発揮してくれるだろう。
そして機密だが、この小型巡視艇のAI化を図る。
長短レーダーと赤外線捜索監視装置、そして船体左右のソナー(魚群探知機)、これらの情報と操舵室の監視カメラ、船室の監視カメラなど、すべてのセンサー類の情報に基づき、意思決定支援システムが出来上がる。
これにより、行動の選択肢が示されたり、艦長の指示に矛盾がある場合などに、警告や適切な指示が出される事もある。
昼は私が、夜はAIカールが作業をして2日で完成した。
まずはこの30m級小型巡視艇を私が作った部品や装備を組み立てて、あと4隻は作りたい。
とりあえず、私はただひたすらに部品と装備品を作る。
但し液晶パネルだけはAIカールに任せた。
作業が微小すぎて肩が凝るのだ。
船体用のアルミ合金も入荷して、私の仕事は主にアルミ合金のH鋼を作り骨格を作り、アルミ合金を成形して、アルマイト加工を施す事だ。
久しぶりに毎夜、魔力がほぼ空っぽになって、アイの胸で眠る。
AIカールは24時間、組立を行っている。
エンジンほぼ1週間で、3隻が組み上がったが、あとはAIカールに任せよう。
まずは小型巡視艇を使った魚の回遊ルートや、海底図を作る調査活動から始まる。
ここまで作っておけば何とかなるだろう。
AIカールに内臓されている魔石に魔力を補充し、私とアイは鉄道でフエキ屋敷に戻り、装甲戦闘車のヘッドライトとテールランプの外側、つまり車幅の近くに人口眼球20を取り付けて、自律走行への第1歩を踏み出した。
明日、午後にエリオットとシンシア、宰相と私の3か所同時のオンライン会議を申し込んでいる。
午前は研究所に行く予定だ。
久々に懐かしい大きなお風呂に入る。
アリスとよくいちゃいちゃしたものだ。
そう、今もアイが湯舟に入ってくる。
AI達の特徴に表面温度が低いというのがある。
室温とほぼ同じなので、その点も人間との違いだが、こうしてお風呂に入ると人間と同じようになる。
「こらこら、そこをそんなに触っちゃだめ。」
今は16歳、年齢も関係あるのだろうけど、やればやるほど性欲は強くなる傾向がある気がする。
適応力だろうか。
ご無沙汰するほどに持久力は弱くなっていくが瞬発力は強くなる。
などと自己分析により、気を散らしていたのだが、刺激されるとすぐに反応してしまう。
アイ「だって、カール様の毛は天然ものだから…」
彼女達AIの陰毛は線で描いたもので本物ではない。
それは髪の毛が70ミクロンの金属線を樹脂コートした物で出来ていて、それを陰毛に使うと肌に刺さる可能性があるからだ。
第一、そこまで精密に作る必要なんてないでしょ?との考えだ。
翌朝、装甲戦闘車で研究所に行った。
ここも定期的にAIカールが訪問して申請書類などの事務仕事を片付けている。
今回違うのはアリス(アイ)が一緒に来ている事だろう。
お読み頂き、ありがとうございます。




