第143話 七曜メンバー集合
王国歴 264年8月第3週
私とアイは金曜日にキンキ食品工場を装甲戦闘車で出発し、土曜日には無人の旧王都のフエキ屋敷に到着していた。
ちょうど、AIカールもセバスとレナと共に、週末を屋敷で過ごすために鉄道でフエキ屋敷に戻ってきたのだ。
普段、ショコラに居るジャックとアリス、病院のフローレンスもショコラ屋敷に呼んである。
最後に来たのが、エリオットだ。
2階の食堂に集まっている。
AI「みんなに集まってもらったのは、他でもない、私の隣に座っているAI人形の事を説明するためだ。」
瓜二つのカールに全員が固まっている。
しばらくして再起動したところで
「先ほど話をした方が、AI人形だ。」
みんなが困惑しているのが良く分かる。
本当は、どちらが本物か見分けがつかないからだ。
「宰相には話してあるんだけど、七曜の幹部である6人には話しておかなくてはいけないと思って、今回、この屋敷に集まってもらった。」
「思えば、七曜は、この屋敷から始まった。セバスとレナ、ジャックが来てくれて、僕は一人ではなくなった。そしてアリスとエリオットが来て、そこからどんどんと発展していったね。マリリンが来て男になり、アリスを愛し、エリオットという友人ができた。」
「今回みんなに伝えたい事の1つは、七曜の幹部として、フローレンスを迎えたいと思っていることだ。」
「気がついている人もいるかも知れないが、彼女は女神フリアノンの娘だ。」
「女神のように政治的に利用されないように、七曜で保護した方が良いと考えたからだ。」
「今は病院でフリアノンの癒しの術を民のために使っている。フローレンスのそばには、風の精霊も付いている。」
フローレンス「えっ、そうなんですか?私には見えないのですけど…」
「見えるようになるさ。病院のフィアナ女神像に心から感謝を捧げてごらん。」
「僕はその『癒しの神フリアノン』を助けに行ったけど、間に合わなかった。その結果、フリアノンは人を憎み、共和国に呪いをかける事になってしまった。」
「その結果、共和国は今でも天候不良が続き、人々は苦しんでいる。だけど、人々の祈りが届けば、いつかは呪いが解けるとお告げがあったから安心して。」
セバス「フローレンスを幹部に迎える事、異議はありません。」
全員が同意している意思を示すように、頷いている。
「二つ目は、AI人形達が安心して住める場所を作りたいんだ。」
「私は多くのAI人形を作ってきた。でも、彼らは歳を取らないから長い間一か所に留まる事は出来ない。そこで、彼らが安心して住める場所を作るために、今は外国に居るんだ。」
「でも、私がいなくても大丈夫なように、AIカールを王国に置いていくから、安心してほしい。」
アリス「AI達の国を作ることは理解したけど、どうしてカール様が外国で、AIカールが王国に残るのですか?」
アリス「本当は逆なんじゃないんですか?」
「いや、AIにはたくさんの魔力を必要とする仕事は向いていないんだ。だから、海軍省で新型船を作る仕事は私がすることにした。」
「王国の装備は、エリオットとアリスが、大抵の物は作れるだろう?」
「でも今の外国には、鍛冶の加護を持つ者がいないから、どうしても私が行かなくちゃならないんだ。AIカールでは、建物も作れない。」
------ アリス視点 ------
カールの説明は、明確には反対できないけれど、私には何となく納得できない、もやもやした気持ちがある。
そもそも、本拠地をショコラに置いて、必要な時だけ外国に行けばいいじゃない。だって、AIの国なんでしょ?なんでカールだけ人間なの?おかしい。
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「何か聞きたい事は無い?」
アリス「AIと人間の違いは、AIは力で、人間は魔力? それだけ?」
「見た目でのAIと人間の違いは、特に肌に現れる。しわやシミ、ほくろが全く無い。」
ジャック「話しすりゃ、すぐにばれるんじゃ…」
アイ「そうでもないんじゃない、ジャック。私はAI。カール様の護衛です。」
全員が驚いている。
AIアリスの存在は知っていても、以前はこれほど自然に話せる事を隠していたからだ。
大人になった…成人した七曜のメンバー。
まだまだこれからだと思うけど、今夜はアルコール飲料も出されて、弱い僕以外は、それなりに酔って、楽しい一夜を過ごした。
------- アリス視点 ---------
どうやらカールは、王国での仕事が片付いたら、本格的に外国で暮らすつもりのようだ。AIアリスとの雰囲気もまるで恋人みたいだし…。
そうは言っても、AIアリスは私の15歳の時のように、若くて、しかも人口皮膚なのでしわもホクロもない赤ちゃん肌。私に勝ち目はない。
カールはもう、歳を取らないAI達と外国で暮らすつもりのようだ…。
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