第142話 海軍訓練学校
さて、海軍訓練学校の訓練施設。
王国軍出身者は、常日頃から自主トレを行ってきたので、基礎体力での脱落者はいない。
合格者は32名。
既に多くの者が北方や南方で1士、又は士長の昇任を受けている。
守備隊出身者は、54名。
王立学園は出ていないものの、同じく、北方訓練所での訓練経験者を含め、即日合格者は27名になった。
彼らは午後、戦闘試験から始まる。
30分の自主練習時間があり、以降、2人一組での打ちあい練習と2対1の模擬戦闘を経験する。
ここで自然と北方方面軍の近接戦闘試験を思い出した者達がいた。
そして気の合う者3人一組が自然と結成されていく。
今日はセバス少佐とレナ大尉が、訓練のようすを見ながら、優秀な者をピックアップしていたのだ。
成績リストを見て気が付くのは、王国軍出身者は貴族に近い者が多く、計算が上手で航海士に向いていた。
守備隊出身者は庶民出だから、親が職人だったり、職人との距離が近く、技能職に対する忌避感がなく、整備士に適正がある者が多いようだ。
2日目 午前。
基礎合格者の午後は、銃の訓練だ。
いきなり撃つ訳ではない。
模擬弾を使っての分解組立を規定時間内で終わらせなければならない。
ここでも王国軍兵士から合格者が出て、早速、射撃訓練とテストを受ける者が出ている。
3日目 私の出番だ
Xバンドのアンテナに、回転させるモーター、そして、マグネトロンを接続して、アンテナユニットは完成した。
操舵室の上のマストに設置する。
レーダーをONにすると、持参したタブレット端末に陸地だけが映っていたが、帰港してくる哨戒艇がタブレットに映し出される。
三角形の先端が港方向を向き、残像表現の影が後ろに描かれていた。
高速哨戒艇には船室が無いので操舵室のうしろが広く、セバス、レナ、ウイリアム大尉、ライリー少尉、ディラン少尉の5名に見せて、後の講義をお願いするつもりであったのだが、港外に出たその時、動いていない高速哨戒艇が表示された。
どうやら釣りをしているようだ。高速哨戒艇に無線連絡を入れる。
「釣りをしている職員に告ぐ。直ちに港内に戻りなさい。」
そう言って、エンジンのスロットルを上げ、素晴らしい加速を披露する高速哨戒艇。
レーダーには逃げる哨戒艇の進行方向が三角形の頂点で示される。
38式歩兵小銃に模擬弾のカートリッジを装着し、セバスに操縦を代わってもらう。
本来は後部に銃座があるのだが、船首の中央位置に立ち、AIカールのしっかりした体躯を利用して、逃げる哨戒艇の操縦桿を握るルーカスの後頭部に赤いペイント弾を命中させる。
続けてトビーのおでこ、最後が逃げ回るフィンの側頭部に命中。
AIカールは、長短レーダーから得た船速、風速、及び目に入る船の上下動のデータから、最適な射撃タイミングを計算して撃ったのだ。
AIだからこそ可能となった、銃との一体化制御。
ウイリアム大尉が高速哨戒艇に乗り込んで操舵を、セバスが3人を拘束し哨戒艇は港内に戻る。
我々も哨戒艇に続いて港内に戻り、全員ドックから出て、今日は終わりにした。
明日以降も実習で見せてあげれば良いだろう。
いつ牢から出たのか報告は聞いていないが、3名は南方方面軍のイベントに参加が決まっていたそうで、その競技のための練習と申告していたらしい。
この後、除隊処分にした。
当面、3隻の巡視艇に勤務する艦長、航海士、整備士が求められているのだ。
艦長の資格はコンパスなどの機器を使って船の位置や、速度を計算、操船できる航海士の資格が必要だし、武装やエンジンなどの整備士の資格も求められる。
船員の選定は、ウイリアム大尉、ライリー少尉、ディラン少尉に任せ、私は地図データの標準位置として、港の先に灯台を建て、内部からビーコンが発信されるようにした。
海軍省ビルの3階、長官室の隣の使った事がない控室を潰し、海軍省指揮本部室を作った。
AI機能を有する全ての船舶、航空機は、相互に交信し、海上作戦部隊指揮管制支援システムに接続され、この指揮本部にデータ統合されるのだ。
3隻の艦長、航海士、整備士の行動評価は作戦部隊指揮管制支援システムも評価を行い、数値で表してくれるだろう。
実際に獲れた魚のデータを入力すれば、魚群探知機の反応データがどの魚のものか、事前に分かるようになる。
セバス少佐とレナ大尉はこの部屋から、隊員の評価や弱点が分かるのではないだろうか。
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