第135話 聖地キョウト
王国歴 264年8月第1週
16名の捕まっていた女性捕虜たちを、二条城で事情聴取を行うのはアイだ。
全員、公家達の関係者ではなく、使用人であった。
料理や洗濯などをやらされていた者達。
それぞれに親類縁者は居たのだが、今はどこに居るのかは分からないらしい。
とりあえず各屋敷の清掃、維持管理要員として雇用することにした。
二条城の本丸御殿は通常は使わないものとし、会議や国賓を迎える迎賓館として使用するくらいだろうと、内部の点検を行っていると、前方に座禅を組んで腕組みをして怒っている姿の像が見えた。
「(近くへ来なさい。神山武志よ。)」
懐かしい、地球での自分の名前だった。
「地球の神様なのですね。」
神「そうだ。仕事しか興味がない哀れな魂の君に、少なからず関心を持っていたのだが。まさかあの小娘がさらってしまうとは…。」
「私に関心を持ち、見守っておられたのですか?」
神「うむ。神山安治郎に与えた加護を、君は隔世遺伝していたからな…。」
神「『おっほん…。』このキンキ地域は地球から来た魂を応援するために作った世界だ。もちろん、男神との話は付いている。」
「えっ、男神さまの了解を取ったんですか?」
神「もちろんさ。あの女神、私が推薦した魂までもこの世界に連れて来ていたのだ。本人は否定していたが、その証拠をつかんだのさ。つまり、契約違反だ。」
「私以外に、もう一人地球から魂を連れて来ているんですか?」
神「そうだ。そこで君に頼みがある。彼の魂は転生もされず、恩恵もなく、セイトという辺りで人に憑依している。底辺の生活だ。そこから救い出し、ワカヤマにある熊野神社へ連れてきてもらいたいのだ。さすれば私が彼の魂を輪廻の環に戻す事ができる。」
神「もちろん、このキンキが落ち着いてからで良い。それまで私は君の助けに成るつもりだ。こうやまたけしよ、おぬしはキンキの統治者となり、この地域に安寧をもたらしてもらいたいのだ。」
「ずっと、こちらの世界にいらっしゃるのですか?」
神「ははは…いやあ…地球はもうだめかも知れん。人でない魂が多過ぎるのだ。だが、この世界では神としての権限がないからのう。」
神「あの熊野神社だが、フリアノン像も可能ならお祀りせよ。さすれば、いずれ怒りは鎮まり、呪いは解かれるであろう。」
「分かりました神様。このような地域まで確保頂きありがとうございます。最後にひとつ。神様の名前は何とお呼び致しましょう?」
神「気にせずとも良い。この像は仮の姿。おぬしが居なくなれば像も消えるからの。」
「ははあ」
土下座姿勢のまま、神を見送り、像が消えた事を確認してから顔を上げた。
それにしても畳の匂いはいいな~。
急遽、アイに言って忍者組のふたりと組頭4人、藤林、お絹、柏木、お静をギルド会館前に集めさせた。全員に向けて
「つい先ほど、神から、このキンキ地域の統治を任された。」
この情報は先ほど、アイからAIには全員に意識共有で共有されている。
「確認のため、ギルド会館に入る。」
施設のセキュリティーはヒョウゴのギルド会館と同じく、職員用の入口付近にあった。
端末が見える。下からギルドカードを差し込むと、******の表示が出た。
247101と誕生日を入力するとドアロックが解除され、中に入る。
1階フロアーに通じる扉には鍵が掛かっているので、階段を2階に上がり事務室へ入る。
カウンターに置かれた5つの堅牢そうな金属ケースを1つ開けて、水晶装置を取り出す。
私のギルドカードをかざすと、『統治者権限 確認』という表示が3秒間あって、次に『初期設定』という表示に変わった。やはり統治者に設定されたのだ。
ハンゾウをギルドマスターに、オーロラをサブマスターに設定してから、指示を出した。
オーロラ他のメンバーは、事務室のどこかに鍵の保管箱があるはずだから、鍵を使って1階の扉を開けて内部の確認をしてほしい。
可能であれば、関係者全員のギルドカードを発行するように。
3階にマスター室があるからハンゾウが入り、ギルドの運転資金があるだろう金庫の確認を指示した。
私とアイは、水晶端末から統治者権限で入る事ができる画面に切り替え、キンキの財務データを見つけた。
キンキ地区のギルド資産は金貨60万枚と表示されていた。
銅貨50G、銀貨1000G、金貨20000Gの価値とされている。
一人1日銀貨1枚で生活できるなら、1月金貨1.5枚。
1万人なら金貨15000枚という事になる。
しばらくして、オーロラと組頭4人はギルドカード発行の手順をマスターして、事務室に戻ってきた。
そしてハンゾウからは、金庫内に金貨50枚、銀貨150枚があったとの報告だ。
聞けば、隠れ里から住民達が移動を終えるまで約1か月掛かるとの見通しだそうだ。
そこで、当面の指示として、
1.防壁で囲まれたキョウトの東側、屋敷街と二条城は一般人は立ち入り禁止区域とする。
2.忍びの里からの到着者にはギルドカードを発行し、カード内に月15000Gを支給する。
3.伊賀衆は、田畑を確保して食糧の確保に尽力してもらいたい。肥料は商店街にて甲賀衆がギルドカードを確認のうえ、無償で配布する。
4.現在ある宿は、単身者の寮として活用して。1つの宿で客間が10部屋。3軒で30部屋だが、食堂も広くて風呂もあるし、1階の経営者の部屋は守衛の当直室にすればいい。
5.西門の近くに隠れ里で使っていた馬車を利用して『流通センター』を作る事とし、20世帯分の労働者用社宅(宿と同じ様式のものを2棟)建てる。
いずれ、キョウトは伊賀衆の管理とし、ヒョウゴは甲賀衆の管理とする。
そのため、甲賀衆はヒョウゴの空き家所在図を作成する事とした。
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