第134話 初めての家臣
アイ「この隠れ里の戦力はどのくらいなのです?」
長老「は!近年の食糧難で総勢120軒ほどに減っております。人員は男女合わせて500余名かと。」
「いや、女子供を戦いにやろうとは思わぬが、それにしても、なぜいきなり切り掛かって来たのだ?」
長老「は!キョウトが帝国の手に落ちたとの情報が入り、警戒を厳重にしたばかりだったのです。」
「キョウトが帝国兵に取られたのか?」
長老「密偵の知らせでは商取引を装ったセントラルの者達だったようで、商店街の者たちが体ひとつで西門から逃げ出てきた事で事態が発覚したのです。」
「その後、どうなったのだ」
長老「西側の門番たちが住人を助け、帝国兵を追い払ったのですが、門を閉めたその後のようすは分からぬとの事です。門番の隊長によれば、入場料などの手提げ金庫を持ち出す際に相手にした帝国兵の数が少数のため、増援を待っているのではないかとの見方でした。」
「分かった。ではおぬしたちを七曜商事の社員として迎え入れる事を許可しよう。」
長老「七曜商事の社員…とは…」
「まー追って説明はする。まずは若い者を代表に差し出してくれ。」
長老が集めた者は皆、美人であった。
何を勘違いしたのかはすぐに分かった。
キンキと言ってもこの世界の人間は西洋人の外形だから、それはそれは魅力的だが却下して、先ほど戦った男2名と、女2名を指名した。
「君達を指名したのは、先ほど私とアイと対戦して、君達の実力が足らない事を知る者だからだ。だが、真っ先に戦いに出て来た所を見ると、この里では実力者なのだろう。」
アイ「各自の名と、得意とするところを申し述べよ。」
男「それがし、名を藤林道順と申す。幻覚の術を得意と致す。」
男「それがし、名を柏木弥左衛門と申す。体術を得意と致す。」
女「わたくし、百地が娘、絹でございます。弓と薬を得意と致します。」
女「わたくし、北山が娘、静でございます。同じく弓と薬を得意と致します。」
「うむ。お前達で隠れ里の者を4組に分け、指揮する事は可能か?」
藤林「では、それがしが伊賀衆をまとめましょう。」
柏木「では、それがしは甲賀衆を。」
お絹「では私は伊賀の女衆を。」
お静「では私は甲賀の女衆を。」
なるほど。確か伊賀は傭兵の性質が強く、契約ごとに主人を変えるが、甲賀は生涯一つの主に仕えたのだったかな…。
「藤林、お絹、柏木、お静、今回は我々七曜の戦いぶりを見せてやる。私と一緒に来なさい。」
「隠れ里の者は全員キョウトに一旦は集合する事になる。準備ができ次第出発するように。キョウトはそれまでに制圧しておくから、安心しなさい。」
街道に戻り、オオサカとキョウトの間にあるパーキングで1泊する事にした。
食品工場と音声で連絡を取る。
「明日、セントラル帝国兵に奪われたキョウトの奪還作戦を行う。オリビアは工場の防衛。ムサシ、ハンゾウ、オーロラは各自の武装を持ってキョウトの西門に10時に集合。以上。」
ムサシ、ハンゾウ、オーロラ「了解」
翌朝、夜明けとともに宿を出発し、装甲戦闘車で私が運転。
アイが助手席、後部席に4人が乗っている。
考えてみれば、この状況でオオサカからキョウト方面に馬車を走らせる者はいなかったため、街道は高速道路のようだ。
キョウトの西門には9時半に到着。
3人は装甲輸送車で来ていた。
ハンゾウは彼ら忍者衆の総帥になってもらった。
男衆の藤林と柏木が付く。
オーロラは女衆のまとめ役になり、お静、お絹が付き、今日の戦闘を見る事になった。
戦闘前の打ち合わせで、日本家屋の特徴である通気性の良さを生かして、麻痺毒、幻覚毒、煙などを使って屋敷から追い出すなり、排除を行い、屋敷内を汚さぬようにと注意をした。
出て来た所を撃ち殺しても良いのだが、やはり、血の匂いや汚れが仕事を増やしてしまう事を思うと、出血させない殺し方が良いとも。
まず、西門を開ける前に、身軽なハンゾウが防壁上に登る。
赤外線モードで確認するが商店街区までに敵はいない。
門番が何やら言っているが、構わず門を開けて装甲車を中に入れて、商店街区で捜索を開始。
アイを入れて4人もいるので、さっさと捜索して捕縛。
貨物室に入れていく。
各宿に4人ほどのグループで食品を漁っていたようだ。
次に東側の屋敷街に行き、最初が鷹司邸。
風魔法を使いオーロラの持参した麻痺毒で屋敷内の11人を捕縛。
屋敷の外に積み上げる。
次が二条邸、九条邸と進み、一条邸には何故か誰もいなかった。
最後の近衛邸には、どこからさらって来たのか3人の女性が捕らえられていた。
ここで5人を捕縛。
公家屋敷と呼ばれた所は、二条城の事であった。
違うのは外堀が無く二の丸御殿も無い事であった。
本丸御殿の地下から防壁東門のところまで通路が通じており、帝国兵はここから侵入したのであろう。
まずはムサシが防壁東門を解放すると同時に東エリア全体に風魔法で風を送り、この風にオーロラが催涙ガスを乗せる事にした。
せき込みながら東門方向に逃げ出す帝国兵。
ハンゾウとアイが防壁の上から歩兵銃で始末していく。
今回は炸裂弾を使用して1発で仕留めている。
一方的な殺りくである。
どれだけ肉体的、体力的に優位であっても、ここでは何の役にも立たない。
公家を名乗っていた者も混ざっていたかも知れないが、気にしていない。
ほぼ御殿からも、庭園からも人が出て来なくなってから、東橋、西橋から御殿内部を捜索して、同じく女性13名を保護した。
その後は、アイの運転で装甲車が東側の帝国から来る増援と対峙し、後部席から私が歩兵銃と尖頭弾を使って敵兵を殺していく。
並んでいる装甲輸送車から出された捕虜が、貨物室から出されて帝国側に逃げていく。
背中を向けて逃げていく捕虜は撃たないが、増援でこちらに向かう者は全て撃ち殺す。
ムサシが輸送車から出て来て、同じく38式歩兵狙撃銃で、正確に遠方の兵を撃ち殺していた。
5分ほどで、増援の帝国兵は逃げていき、誰もいなくなった。
ただただ、そこには死体が転がっているだけであった。
病気の発生が無いように、土魔法で穴を掘り、AI達が無造作に投げ込んでいく。
忍び達は手伝うどころか、気分を悪くしているようだった。
全てが片付くまで、4時間。
まだ2時なので、装甲輸送車で4人を乗せてハンゾウとオーロラがキンキ食品工場の見学へと連れていった。
残ったムサシは、今日からキョウトの守備にも就いてもらう事にした。
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