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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第2章 AIたちの安寧の地
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第129話 王国との輸送ルート


王国歴 264年6月第1週



ナカヤマ氏との交易により、コジロウを運転手とする移動販売車を1台レンタルすることになった。


週5日の夜明けから夕方5時までのレンタル。

交換として得た資材を倉庫に入れて工房を作った。

硝酸工場が無ければ肥料も燃料も火薬も作れないからだ。



だが一方で、私とアイは、全てをこの拠点で賄う事を諦め、湖の西岸を、アンテナ工事をしながら北上し、ポルトランドとキンキ食品工場との間の海運ルートを作りたいと考えた。


これが出来れば、セメントや鉄材、エンジンなどを簡単に補充できる。



ホクヘイまで300km。

干ばつの続く大地を走破するのは簡単だ。

平均時速50kmは出ているかも知れない。

だが、途中で画像通信が可能なパラボラアンテナを取り付け、キンキ食品工場との送受信のテストと指向性調整を行う。


それでも約12時間後には、ホクヘイの北、以前に建てたアンテナの所まで到着した。


最後に、このアンテナを1つ追加して終了。

この日は再びアイに癒されて、眠りに付いた。



AIカールに戦闘車で高速哨戒艇を牽引してポルトランドに来るように指示をした。

当然だが、ショコラの工場に2隻発注し、運ぶ仕事になる。


私とアイは、砂漠地帯を抜けるため、アイが後部ハッチからのワーム退治を担当して私が運転する。


本当はこの事を失念していたのだ。

ただ寂しいからアイと一緒に来た。

間抜けな自分にカツ!


今回ワームの回収はパスして、ルハンシクから北上してハリコフの東部方面軍本部を目指す。


距離は約300km。時速40km制限(自主規制)なので8時間くらい。

方面軍はすでに夜だが、軍は24時間対応。


久しぶりに七曜商事ロゴの顔パスで帝国方面のゲートを抜けた所でキャンプする。


共和国南部に行って初めて知った『なぜか越せない国境』がある事。

ここも同じでハリコフ以外では、なぜか帝国側に行けないのだ。

もしかすると湖も…という懸念も頭をよぎる。



いつものようにアイのやわらかい胸で起床して顔を洗う。

今朝は新鮮な野菜サラダとジャガイモ入りのコンソメスープ。

絶品。


ここから帝国のポルトランドまで90kmくらいの距離だ。

宰相に連絡して、ポルトランドまで高速哨戒艇を2隻牽引して来てもらうことになった。


前回は強化した馬でハリコフから3日掛かったのだが、装甲戦闘車だと約2時間。


ポルトランドから更に南に南下して前回無人だったセイラムを確認する。

やはり無人だ。

だがここから西に行く道は無い。

更に南下してユージーン手前を西に行くと南西方向に湖畔が見えた。


つまり、ここに船着き場を作らなければならない。

森に行って木を切り枝を払い、丸太をアイに運んでもらう。

この繰り返しから、更に湖の中に丸太を打ち込んで行かねばならないが、これもアイにしてもらう。

人間ではできない作業だ。


3本ずつ湖面に打ち込んだら、その幅は90cmくらいになった。

9本丸太を打ち込んで90cm×90cmの四角形。

これを20セット打ち込んで、約18mの桟橋が出来上がる。

その横に全長10mの高速哨戒艇が左右に2隻という事だ。



アイがユージーン方向の偵察をしている間に、私がアンテナを立てて、ポルトランドとの通信が可能にする。


フランキーと指向性調整を行ったあと、宰相に連絡して、この場所に高速哨戒艇を2隻牽引して来てもらった。


ハリコフで宰相に依頼してから1週間、AIカールが高速哨戒艇を牽引してきた。

キョルトの工場から2隻を王国軍兵士1名とともに運んで来たのだ。

兵士は、船外機4基を下し、空になった軽装甲輸送車に乗って、帰っていった。


AIカールとアイのふたりが高速哨戒艇を軽々と持ち上げ、湖に浮かべる。

そして船外機を、哨戒艇に各2基取り付けて作業は完了だ。


AIカールは私達の軽装甲戦闘車を南方方面軍まで輸送し、戻ることになっている。



これで、キンキ食品工場との物資輸送の目途が立つ。

あとは国境を越えられるだろうか…最後の試練だ。


恐らくだが、直線コースで弾かれる場合には、サンフランシスコから湖岸沿いに進めば越えられるだろうと考えている。


私とアイはそれぞれ高速哨戒艇に乗り込み、船外機を始動する。


先頭を走るのはアイだ。

周辺に敵がいないか、確認しながら、ゆっくり西に進む。

だが、湖の途中で進めなくなった。


やはり砂漠方向には行けなかった。


そこで、進路を南に向け、抵抗を感じながら船を進める事にした。


どうやら境界線は南西方向に少し斜めになっているように感じたが、目印がなくなると方向感覚を失ってしまう。


私は自分の腰袋から以前に手に入れた方位磁石を取り出して、アイの船と横に並び、磁石を投げ渡す。


「(アイ、間もなく日が暮れる。今でも目印が無いから方向は分からなくなるが、いずれにせよ、すぐに到着する距離じゃない。悪いが夜間は私の船を牽引してくれ。障害が無くなったら、方位磁石を見ながら南西方向に進み、陸地が見えたら教えて。)」


アイ「(はい。おまかせください。ではロープを投げます。)」


まだ陽がある間で良かった。

ロープを受け取り、船首のボラードにくくり付けて


「(アイ、こちらはOKだよ)」


アイ「(了解)」


アイは銃座を越えて、操縦室の上部にロープをくくり付けた。


アイ「(カール様は少し横になって下さい。船酔いされないように、酔い止めを飲まれた方が良いと思います。では。)」



しばらく操縦席に座って、引かれるままにしていた。

湖は波が少ないと言っても、湖の沖合ともなれば、それなりの揺れはあるのだが、私は大丈夫みたいだ。

それに夜は寒い。

寝袋に入り、操縦席で横になり仮眠状態に入った。



翌朝、目が覚めると陸地が見えた。

しばらくして、アイと連携してロープを解き、西岸沿いに南へゆっくり船を走らせると、我が拠点の建物が見えて来た。


何と桟橋も出来ている。


AI達が勢ぞろいして、桟橋に立っているのが見える。


船を桟橋に順方向に付けるのは、なかなかに難しいのだが、ムサシが鍵縄で銃座を引っかけて無理やりに着岸させてしまう。

(さすがだ…)


船外機を停めて、プロペラを上げる。

アイの操縦する船も同じく着岸していた。

船を下りて桟橋に渡ると同時に、オリビアが飛び付いて来た。


なぜが鼻をグスグスしている。


オリビア「寂しかったんですからね!」


次々と男性キャラまで抱きついてくる。

オリビア以外は無言なのだが…。


「みんなに心配を掛けたようだね。反省する。」


どうやらアイが私と離れた事で、いつもモニターしている脈拍や血圧などの健康データが取れなかったために、『データ不足』という警告が出たらしく、それが全AIに共有されていたようだ。




お読み頂き、ありがとうございます。

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