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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第2章 AIたちの安寧の地
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第128話 七曜商事食品工場


さて、この地にどのような拠点を作ろうかと考えたとき、目的が、歳を取らないAI達が安心して過ごせる場所だった事を意識した。


ショコラの工場のように、関係者以外が入ることができない場所…。



このキンキという所に必要なのは、まず食糧のようだ。

文化レベルが異常に低く、治安の悪いこの地域では、王国のように広大な土地を使って農業することはできない。


だがAIと私なら、農産物の工場が作れるのではないか、その発想が原点。

まずはその原点の施設から設計しよう。


3階建ての体育館のような建物の中に、水耕栽培の棚とシリコーン繊維を土代わりに入れる。


1階はキャベツ畑。

出荷用のケースは卵の入れ物を大きくした薄いプラスチックを試作。

段ボールより中が見えていいんじゃない?2階はキュウリ、大根、ナス。

3階は小麦。


2棟目はトマト。

某メーカーの工場を見た事がある。

高い天井まで伸びるトマトの木。

この棟の2階も小麦。光合成の光はすべてライトの魔法と魔法陣の制御能力で対応しよう。

彼らは全員が24時間働けるからね。


実際にやってみると、鉄が少量しかない。

そこで全て平屋に変更。

土魔法とセメントで何とかしよう。

土さえあればケイ素由来のシリコーンは簡単に作れる。

鉄の仕入れのため、オリビアとムサシがナカヤマ氏の所へ装甲戦闘車で向かった。


彼は移動販売車に興味を持ったが今は売れない。

貸す事はできる。

軟鉄しか手に入らないのだが、それで充分だ。

そうだ、スクラップを手に入れよう。



王国歴 264年5月第4週


第1工場のキャベツ畑、第2工場の小麦畑、第3工場のトマトという3つの体育館規模の食品工場が完成した。


井戸水は塩分濃度が心配なので、長江の水をパイプで引き、浄水場第1タンクで濾過し、消毒したうえで第1貯水タンクへ。


湖の水もサブとして同じように第2浄水場で濾過し消毒後に第2貯水タンクへ入れている。


下水施設は、浄化槽を地下に埋め込んで濾過をする。

水質検査のあと、湖へ排水している。


スクラップを手に入れて、これを基にして鉄骨を作る。

25㎡単位で工場の壁沿いに2階部分を作っている。

最初はハシゴで上り下りになるのだが、彼らは気にしないようだ。

この2階部分ではキュウリ、玉ねぎ、ナスなどを作っている。



工場といっても農作物は3か月、半年といった中長期の生産になる。



彼らAIの本拠地をキンキと決めた以上、彼らを単なる戦闘マシーンにしておくことはできない。


だが一方で、私だけが魔力の回復ができる存在であり、AIは魔力を消費する存在。

従って、工場を含むエネルギーは魔力でなく、電力を利用しなければならないだろう。


幸いにして私はケイ素の加工に関するプロであり、発電材料である金属シリコンを簡単に作り出す事ができる。


無色透明型光発電素子のSQPV(Solar Quartz Photovoltaic)は、二酸化ケイ素の微粒子を電極材料に使うことで、一般的なガラスと同等の可視光透過を維持しつつ、遮熱や発電といった機能がある。


神奈川大学や東北大学でも透明型発電素子の研究はされているようだが、米国UCLAの透明発電素子は透過率70%で変換効率4%を実現したと、指輪の知識で検索できている。


私が現役技術者だった時、変換効率が20%だった事を思えば、十分な発電能力と言える。


これを3工場の壁面と天井に貼り付けて利用すればいい。



まず、ムサシだが、水冷式ターボ機構を持った唯一の存在なのだから、力仕事はすべて任せてしまおう。


魔力鍛冶が必要な部品は私が作るとして、できあがったエンジン部品の焼き入れ、組立、いざとなれば装甲車の完成品でさえ、一人で運べるかも知れない。



加えて、半導体など極めて微細な加工などは人間には向いていない。

CPUの作成も同じだ。

魔法陣の描画はAIに適しているだろう。


温度が冷える夜間に、溶鉱炉を使う作業を行い、昼間は工場一帯の周辺警備を担当してもらう。


夜から工房で始めるのはセメント作りだ。

石灰石と粘土、けい石、酸化鉄原料の粉砕物を混ぜて、1450℃の溶解炉で水硬性化合物にするのだが、この余熱を建物の温度調節に使用する。



次に、オフィーリアには、指輪の知識から地球上にある、あらゆる料理のレシピをデータベースにして、同じく腹部に追加した。

これで思考錯誤と訓練は必要だが、料理マスターと呼ばれるだろう。


そしてオフィーリアは14歳の学園生徒のデータで作った体形だったのだが、成人女性を意識して若干胸を成長させ、33kgとなり、名はレミに改名した。


オフィーリア改めレミには、食品工場の戦略商品となるであろうザワークラウトを作らせたい。


ザワークラウトは、キャベツの葉に元々付いている乳酸菌を塩分で発酵させたドイツなどで広く親しまれたお漬物で、肉料理の付け合わせにもよく使われていた。


私達が売る訳ではない。

ポイントは家に訪問して試供品の小瓶タイプを渡し、雑談なども交え健康状態を聞き取り、対処法を考え、アドバイスが出来れば良し、出来なければ医師でもあるレミに言えば良い。


私がいた世界では、自然界に乳酸菌は広く存在していて、たまたま酸っぱくなった乳の中を調べて乳酸菌の存在を発見したらしい。


菌の種類はたくさんあるが大別すると、顕微鏡で見て丸いのが球菌で、細長い棒状が桿菌、ビフィズス菌はY型の棒状だ。


一段落すれば顕微鏡を作ってレミに渡し、乳酸桿菌を探してもらおう。

乳酸菌飲料の製造に使うためだ。




お読み頂き、ありがとうございます。

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