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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第2章 AIたちの安寧の地
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第124話 共和国縦断


王国歴 264年5月第2週



2度目の遠征だ。


1台目は近接戦闘組の戦闘車、2台目は私とアイの戦闘車。

あとは移動販売車だ。


ルートはフエキから南方方面軍へ移動して1泊。

砂漠地帯に突入する。

前回同様、装甲車の後部ハッチから、1台目はオリビアが、2台目はアイが38式改造自動小銃+炸裂徹甲弾でワームを射殺していく。


ワームの死骸は移動販売車に2匹ずつ収容して、山を越えた所でキャンプをする事にした。

いつもと同じ、私だけの食事。

カップ麺でいいや…。


翌朝、アイのおっぱいの押し付けで目が覚める。

屋敷などの他人の目があるところでは誘惑してこないのだが、こうして2人だけの空間では積極的だ。


期待に応えてあげよう。


さて、着替えてからジュースのみで出発する。

ここから50km南がホクヘイだった筈だ。


約1時間もするとホクヘイの防壁が見えて来た。

元々北側の門には人が少ない。

そのまま湖側を通り過ぎると、東門が見えてきたが、ここにも人の気配が無い。


忍者組と探偵組に調査を頼む。


「(ハンゾウ、視覚共有。)」


ハンゾウ「(視覚共有セット。)」



忍者組が東門から中に入ろうとした所で、道に人が倒れている異様な風景が目に入る。


「(探偵組は帰還せよ。)」


探偵組「(了解)」


「(ハンゾウは村の内部状況を観察し、生存者の有無、戦闘行為の有無を確認。)」


ハンゾウ「(了解)」


「(オーロラは医師モードで東門付近の遺体を分析)」


オーロラ「(了解)」



ハンゾウ「(家屋の多くは無人。内部には生活の痕跡なし。)」

オーロラ「(外傷、骨折などはなく、飢餓による死亡と推定。)」



積雪、冷害などの災害による飢饉ききんが発生したようだな…。

早く引越しできた者は助かったという事のようだ…。


「(全員、引き上げるぞ)」


ホクヘイから南西に300kmほど走った夕暮れにラクヨウが見えてきた。

この都市は防壁がある広大な土地。

門前には入門の順番を待つ人々が見える。

前回、ホクヘイからは西に進路を取り、この都市を避けて行ったのだった。



「(忍者組、探偵組、偵察を頼む。防壁が高いので各自鍵縄、盗聴ダーツを用意して行くように。)」


全員「(了解)」


「オリビア、ムサシは周辺の偵察と見張りを頼む。」


オリビア「(了解)」


アイ「では、私は夕食を作りますね。」



今夜は肉と野菜が入ったバランスの良いスープだ。

アイの料理は美味しい。

周辺の偵察が終わったムサシが木に登っていく…上手になったものだ。

簡易アンテナを木に取り付けて降りてくる。

最後に取り付けるのが小型制御BOX…。



ムサシ「任務完了しました。」


「うむ。自由時間にしてくれ。」



そう言うと、ムサシは再び林の中へ消えて行った…。

偵察時に何かを見つけていたのだろう。

ウサギかな?


オーロラ「(視覚共有セット。)」


声とともに頭の中に浮かぶ映像…。

なるほど、ラクヨウが落ち着いているのは、防壁内に畑を確保したという事か。


都市の4分の1区画にも相当するだろう広大な畑…。

ズームして見ると、定番のナス、きゅうり、キャベツ、レタス、えんどう豆、ジャガイモ、玉ねぎ…。


農機具の小屋に農民らしき人達が見える。


「(盗聴ダーツ)」


オーロラ「(盗聴ダーツセット。)」


『カツッ』


農民A「……だろ、あの頃から葉物は虫食いが多くなった気がする。」


農民B「食っちまったもんは仕方ねえ。早い者勝ちだったんだから…。」



あの雀狩りの事だろう…だから虫類が増えているのだ。


農機具小屋に立て掛けてあるくわを見て驚いた。

なんと刃の部分まで木で出来ている。


確か以前は、安い物でも先端は鉄だった筈だ。

硬い鉄作りを推奨したせいだろう。

素人にできる事じゃないのに…。



農民A「荊州けいしゅうまで下った奴ら、気候がいいって言ってたが、こないだ荊州から来た商人は、連日雨が続いていて、葉物は特にだめらしい。」


農民B「こっちは日照り、あっちは洪水、どうにかならねーかね。」


農民A「西の山で雨乞の儀式をやった代官が、雷に打たれて死んだだろう?女神さまのお怒りはまだ収ってないんじゃないかな。」


農民B「副代官が、税はいらないって言ったそうだが、どうやら嘘らしいぞ。日銭でいいから、銭で払えだとさ。」


農民A「だから農業ギルドの奴、『農民は税はいらない』と言ったのか…。」


農民B「わからねぇー。誰がほんとで、誰が嘘か…もしかすると何もかも嘘かもな。」




「(忍者組、探偵組、任務を完了していいよ。)」


「(了解)」



さて、共和国の情報を整理しておこう。


ホクヘイは既に廃墟であった。


ダンジョンも活動を停止しているが、ひょっとするとアンデッドが巣食うダンジョンとして生まれ変わる可能性はある。


北部の拠点2大都市は、ここラクヨウと、前回襲撃した青瓦台のあるチョウアン。


カンチュウ、セイトは益州えきしゅうという西南地方に属していて、セイトは港町らしい。


どうも嫌な連想だけど、共和国の北中部は私のいた世界のC国、益州はK国のような気がする。


ジョウヨウは荊州を代表する都市であり南中央部に位置しているのだが、洪水被害が激しいとの情報だった。


私の世界では長江というダム決壊が噂される河川の流域。


帝国のカスピ海南部と陸続きの揚州ようしゅうが目的地なのだが、150km南下して、ジョウヨウのようすを見てから揚州に行こうと思う。



アイが再び食事の準備をしてくれている。

AI達はどうしたのか、と見回してみると、私が南部で農業をすると分かっているようで、様々な植物の種を採集しているみたいだ。


済まないが、今夜も先に休ませてもらおう。




お読み頂き、ありがとうございます。

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