第120話 AIの居場所2
手持ちの作品を再確認しながら、皆さまに読んで頂ける機会を得た事、感謝しています。
第2章はある程度まで出来ましたら、再び、少しずつ掲載させて頂きます。
お暇でしたら、お読み頂けたらありがたいです。
感想、コメントも宜しければ、お願い致します。
ムサシのブースト動作(速度3倍)では、直後の冷却排気がないと、体内温度が電装パーツにダメージを与える可能性があった。
そこでコジロウは内部に水冷式の仕組みを取り入れた。
CPUの温度を冷却水で吸収し、血液のように全身の皮膚と筋肉組織の中間に流す事で、放熱をしている。
一定以上の温度に達した水は、戦闘終了後に立小便という形で体外に排水してしまう事も可能だ。
アイやムサシは体重50kg。
これを基準としてAI人形は作ってきたのだが、コジロウは水冷式で、骨格、筋肉量とも若干増量していて65kgになった。
動きが自然に見えるようにモーターの数が多いのだが、結果的にそれが功を奏してトルクは十分だ。
ハンゾウは忍者タイプだから、逆に体重の軽さを特徴としたい。
今までの骨格はステンレス鋼を中空構造にして使っていたのだが、今回は更なる軽量化のため亜鉛とマグネシウムを添加したアルミニウム合金を使用した。
この超々ジュラルミンはゼロ戦などに使用された種類の合金だ。
アルミニウム合金の中空骨格はステンレス鋼の3分の1の重量になり、シリコーン樹脂の筋肉、モーター、CPUと魔石という軽い材料と、165cmという小柄で設計されたハンゾウの体重は25kg。このため、もっと筋肉を付けて体重30kgの小柄マッチョになった。
AIのデータは全てムサシのコピーだが、体格や体重が違う。
目線の位置も違う。
このため、訓練場で3日間、ムサシ、コジロウ、ハンゾウ3体の訓練を実施して、各自、データの更新を行っている。
これで、私とアイ、オリビアとムサシ、オフィーリアとコジロウ、オーロラとハンゾウという4組、8人の秘密部隊が出来上がった。
移動販売車4輌を製作し燃料である液体アンモニアボンベを車体下部に装着。
今までの装甲戦闘車との違いは、後部銃座が無くなった代わりに、ヘッドライトに16穴強化懐中電灯を採用した事だ。
夜間走行はしないつもりだが、通常ライトに加えて、閃光灯と照準レーザーを使えて、運転席から吹き矢が飛ばせる武器を搭載した車輛にしたのだ。
ここまで4週間で作り上げてしまった。
オリビアとムサシ組に移動販売車を与え、七曜商事の販売員にふさわしい制服をシリコーン樹脂で作成して、着用させている。
側面の商品棚に加え、後部貨物室の長持には各自の使用武器と弾薬、変装用の服装、予備部品とメンテナンス工具を搭載して、再び、6つの村巡りに行ってもらった。
とりあえず、フローレンスが病院にインターンとして来たのでオーロラを病院から引き抜き、来週はオーロラとハンゾウ組が出発する。
先発のオリビアとムサシ組とはデータを共有できるので、接客対応や応酬話法も学習できるだろう。
村と村の間では、森林に入り、中型獣を相手にした戦闘訓練を指示してある。
オーロラのデータを共有した事から、全女性キャラが医師の仕事もできように医療キットも積載している。
フローレンスが病院に慣れるまで、オフィーリアが病院から引き抜けないため、アイとコジロウが移動販売車の準備を行っている。
王国歴 263年12月
アリスが無事に男の子を出産した。
今回は2回目という事もあり、案外に安産であったそうだ。
何となく、本当に何となくだが私は寂しい。
私以外はみんな里の出身者であり、里の文化を持っているのだが、私は違う。
父親が立ち会わない、側にいない事が当たり前というのは違和感があるのだ。
今後、王立学園の教育長としての仕事や海軍省の事も、顔を出さない訳には行かないのだが、いなくても現場は回っていけるように仕組みを作っている。
そこで、こっそりとだが、私のそっくりAIも作る事にした。
タイプは水冷式。
おしっこもするし、水も飲む。
最も人間らしいAIだ。
私の身長も既に175cmになっていて体重は65kgくらい無いと不自然だからね。
私の記憶もデータ化して記録してあるのだが、ゆっくりと1か月かけて作ったAIカール君。
これを私の意識とリンクさせて、フエキの学園と研究所、ショコラの工場とギルド、リビウの海軍省を巡回させてみたのだが、誰も気づく事は無かった。
王国歴 264年1月
最後はエリオットが居る参謀部と、宰相の執務棟だ。
控室まではAIカールは、顔が見えないようにして助手のように連れて来た。
そして服を交換して、AIカールに新年のご挨拶に行かせた。
エリオットが大尉になった時の話を聞き、私の意識で会話するため、誰も気が付く事はなかった。
ショコラの屋敷に行って、アリスの誕生を祝い、彼女だけにAIカールの事を話した。
通信がつながる時には、私はAIカールと意識共有ができるので、本物の私と話ができる事を説明した。
来月から、私も外国へ諜報活動に行こうと思うと言い、この日からアリスは子供との時間を少しだけ削り、私と生活をする時間を作った。
最終段階と判断し、エリオット経由で宰相に面談を申し込んだ。
さすがに宰相にはすべて説明をしておく必要があると判断したからだ。
新年の挨拶はAIカールだった事を打ち明け、人間との違いを説明した。
まず瞳孔。視覚感度を上げるため瞳孔は人間よりも開いている。瞬きしない。
次に肌。基本的にホクロが無い。
筋肉の材質は違うが、付き方は同じで外見から判断はできないだろう。
でも、前回の会話は私がAIカールを経由して会話したもので、その点では本人と同じ。
外国に諜報活動に行っていても、通信ができる場所では本人がAIカールの操作をするので問題は無い。
ただ、夜間はAIカールは眠る必要は無いが私は眠りますから、と言った。
宰相「君の技術は、そんなところまで進歩したのか…」
「でも、知っているのは宰相おひとりです。知れば誰も信じられなくなりますから…」
宰相「確かに、違いを知らず、疑わなければ看破はできないだろうね。」
「私と会話を希望する場合は3日前にはAIカールに知らせて下さい。通信が届く所に事前に移動するか、アンテナ工事をするなど、準備をしますから。」
宰相「分かった。くれぐれも気をつけて行動してくれ。」
「はい。」
宰相「それと、シンシアとエリオットの挙式が近い。つまり、住民登録の目途が立ったのだ。現在8割は登録されたと予想している。残りはショコラとフエキの繁華街などに居るスラム出身者と孤児だろうか。」
「孤児なんているのですか?」
宰相「ああ、面倒を見ているという虚偽申告で補助金をせしめている連中が居る。対応策として浮浪者や孤児などをポルトランドの入植者として送り出せるように準備しているのだよ。彼らに必要な家や農具、食糧品などが支給される制度だからね。」
「入植者として入るとして、直接的に誰が面倒を見るのですか?」
宰相「守備隊の者が面倒を見ているし、一緒に入植しているケースも多い。」
「なるほど…」
当面の計画としては、帝国南部と共和国南部は陸地でつながっていると思われるため、この場所を経由して、共和国のセイトまで行って、港を見る予定である事を伝えた。
本来なら150m級の船でセイトまで行くところなのだが、まだ船が出来て無いからだ。
第1章 終わりましたました。お読み頂き、ありがとうございます。




