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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第118話 ポルトランドの占有政策



王国歴 263年8月第1週


今の課題は、ポルトランドの占有政策だろう。

領地がほしい訳ではない。

経済的な支配こそが目的なのだが、いざとなった時に戦える者が欲しいのだ。

理想的には治安維持を担当して来た守備隊の人間を一定規模で送り込みたい。


そこで、南北の守備隊員には、鉄道を使って旧王都フエキまで各守備隊から来てもらって、南北方面軍に新規納入の装甲戦闘車(6名)と装甲輸送車(8名)×2台を使って、1回あたり最大22名をポルトランドに輸送する事にした。



ポルトランド市は、大通りで区切られたリチャード家の北部区画、チャールズ家の西部区画、ジョゼフ家の東部区画、フランキー達の宿屋が南部区画にあった。


南部区画はセントラル帝国が北進して来た時に真っ先に攻撃を受けるため、東部区画が最も良い区画だと認識されていた。


リチャード家とチャールズ家は既に制圧済みなので、当主たちは王国北部の妾の屋敷で隠居生活しているという事にしてある。


今まで贅沢な暮らしを見て来た住民は簡単に信じている。


今回移動した守備隊22名は堂々と空いている屋敷に入り、気に入ったなら家族を呼んでも良い事にしている。


既に候補者は電波塔設備で守備隊勤務の本人と家族が面接して、希望するなら、鉄道で旧王都フエキまで移動すれば、あとは輸送車で迎えに行く事になる。


入植してから1週間後、各守備隊の担当する周辺農地を、全員でカセット式小型耕運機などで耕していく。


おおよそ40名以上が農作業をしている。

入隊時に訓練を受けたため、懐かしい作業だろう。

これからは秋に収穫できるものを植える事になる。


ひとまず、耕し終えたら、側に建てた農作業小屋から散水用ホースを畝の間に引いていく。


途中でホースの接続金具を取り付け延長し、最後は終端金具。

初めて見るであろう小屋の散水ポンプを動かして、動作テストをする。



この作業の繰り返しで、北部区画の北側に大きな畑が出来た。

同じく、西部区画の西側にも大きな畑が出来た。

あとは、南部地区だが、ここはポルトランドの防御施設にするつもりだ。

言わば、七曜商事の占有地とするつもりなのだ。


占有地には七曜ショッピングモールを作ろう。

里の人に入植を募集し、ショッピングモールの店員になってもらうつもりだ。

もちろん、守備隊の家族もOK。

モールに入れるのは王国民と、帝国民の小作契約者だ。


モール内では様々な物品を配給券+ギルドカード決済専用とし、現金は使用できない。


配給券によって武器類などの購入制限を掛ける。

要は、帝国民のまま区画領主の傘下に入って、経済活動に参加するように仕向けるだけ。


この政策により最後に残った東部区画のジョゼフ家を孤立させる作戦なのだ。


王国は新たな領土は必要としない。

この地の住人に経済的な活動をしてもらい、その成果物を共有しようというだけだ。


ひとまず、農作業が一段落したところで、守備隊3名が1組になって各家を回り、ドアをノックする。


守備隊「おい、誰がいるか?」


住民「はい。なんでしょう。」


守備隊「リチャード家当主から、この地区の権利を買った者だ。ここから立ち退くか、それとも小作農家になるか、今週中に決めて返事をしてくれ。」


住民「私達にどこへ行けとおっしゃるのですか。」


守備隊「小作農家になるなら、収穫物の半分を税として納めれば良いだけだ。この家だって最初から有ったもので、お前たちが建てた家ではないだろう?どう考えたって、悪い話じゃないだろ。」



住民「どうすればいいんですか?」


守備隊「この契約書に、住んでいる者の名前、家番地、年齢を書けばいいだけだ。兵役の義務も無いし、労役の義務もない。契約をすれば配給券がもらえるから、必要な物は南部区画の商店で配給券と交換できる。」


守備隊「早い話が、真面目に働いて半分を納めればいいだけさ。」



このようなやりとりを北部区画、西部区画でおこなった。

ほとんどが、サインして配給券を受け取り、生活必需品を手に入れ、豊かな生活への第1歩を歩み始めた。


農作業は指定時間に集合場所に行き、農具を受け取り、自分の担当する区画に作りたい野菜類を育てるだけ。


小麦は守備隊が集団で作っているし、パンは商店街で配給券と交換できる。


モール内の運営は当初、人がいなくて守備隊に交代で担当してもらって、1か月もすると里の人がやってきて、得意な店を担当し始めていた。


今はまだ農機具ばかりが売れるが、次第に生活用品や便利グッズも必要になるだろう。

種類は徐々に増やす予定だ。



一方、6つの村には、東部方面軍から装甲戦闘車と装甲輸送車2台が、週に1回、貿易品を届けていた。


ポルトランド市の住民もそうだが、このエンジン車輌を見ただけで、圧倒的な技術力の違いに、反発心は消えてしまう。


戦って勝てる相手ではないのは農民でもわかる。



王国歴 263年9月第1週



ポルトランドへの浸透工作が進み、北部と西部の住民約250名ほどが契約を済ませ、穏やかな生活を過ごす中、残っていた東部区画のほぼ全住民が、北西部地区に移住してきた。


東部地区のジョゼフ家も特別な力は無く、彼らを引き留める事は出来なかった。


全住民が小作農家である。

それでも人数は500人以下。

まだまだ先は長いという事だ。



この1か月で発見もあった。


ポルトランド市の南西に巨大な海なのか湖があるのが分かった。

つまりその場所は砂漠地帯の東側になる。

ヨーロッパで言うところのカスピ海だろうか。

現状は、ポルトランドより南へ進駐するつもりは無いため、この湖の調査予定は無い。





お読み頂き、ありがとうございます。

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