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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第110話 AIムサシの作成


王国歴 263年4月


フランキー親子3人が帝国へ行って半年。


情報収集と王国からの諜報員を受け入れる拠点作りが任務なのだが、あまり人気が出ても困るので、地理的にさほど需要がなく、従業員を雇わずに宿が営める規模の農家を、ポルトランド郊外で手に入れたと報告が入った。


オリビアには、日報形式で出費の明細を付けさせている。

これによって帝国の物価が分かるからだ。

オーロラ医師にも同様に出費の明細を付けさせている。


オーロラ、オフィーリア共に薬の販売などの入金は、レジPOSで処理し、病院システム用PCにデータが蓄積されていく。



帝国の状況調査は、半年かけてようやく拠点ができたばかりであり、この方法ははっきり言って打ち切りにする。


偵察機を大型化する事も考えたが、昔にラジコンをやっていた経験から、離陸は簡単だが、着陸は難しくて、現在のネットで受け止められる大きさが限界なのだ。


透明度の高いバルーンをアンテナとして考えたが、あまりにも目立ちすぎる。

そういえば昔はあちらこちらで広告として使われていたものだ…。

(遠い目…)


いやいや、ノスタルジーに浸っている場合ではない。

やはり冒険者を作るしかない。


そこで、今度は男性のAIロボットを作った。

内部構造はAIオリビアと全く同じだが、戦闘を強化した冒険者パーティーのメインキャラだ。


そのため、エリオットよりも劣るが男前で、かつ、細マッチョ。

冒険者の中で冒険者を見て育てようと、ショコラの冒険者ギルドに育成をお願いした。


特別な事と言えば、男性AIロボットが綺麗な肌だと不自然なので、強打された場所は、最初は内出血のようにやや赤く、次第に黒色に変化するように肌制御をプログラムしてある事だろうか。


また、オリビアとの異なる制御は、男性AIロボット特有の息子さん関連だが、(息子さんはやや大きめ)白色粘液は本物と差がない自信作で、相手の反応により射精できるようにプログラムしてある。


女性AIロボットは、もし相手がEDだったとしても、本人からは『興奮しない』と言い訳をするようにプログラムしている。

これでフォローできたらいいけど…。



最初に冒険者ギルドでカードを作る所から始め、初級者研修を受け、剣術の有料個人レッスンを受講させている。


構え、素振り、防御、合わせ、躱しなどの基本動作を驚異的なスピードで覚えてゆくAIロボットのムサシ。


CPU速度と動作速度のリミッターを解除するまでは、一般的な人間と同じような速度でしか反応できない。


だから、体中にあざができているはずだ。また、体力設定は『タフ』だが疲労蓄積が設定してある。

そのため疲労が70%以上から徐々に動きにペナルティーが付く。



パーティーメンバーの不足以外にも課題はあった。


共和国侵入時の課題は装甲車が目立ちすぎて苦労した事だ。

特に冒険者として侵入する今回の帝国では馬で行く事になる。

だが実際に乗馬訓練で分かった事は、時代劇で見た早馬の速度では1日中走る事は出来ないという事だ。


そこで、王国軍の軍馬で乗馬訓練をすると同時に、軍馬の筋組織や骨格の強化も行い、人馬ともに訓練と強化をする1週間となった。


ムサシの剣術初級の1週間が終わったのだが、最初、打撃強度『弱』で押され気味だったのが、最後には対等に戦っていた。

このあとムサシは剣術中級を1週間受けて、冒険者として出発するつもりだ。



王国歴 263年5月



宰相の許可を得て、半年間の帝国偵察の旅に出ることになった。

アリスの出産は来年1月なので、2か月前には戻る予定なのだ。

その頃には30m級小型巡視艇が出来ている事を期待しよう。



今回は冒険者として帝国に行くので、東の森ハリコフまで装甲車で行き、その後は強化訓練を行った軍馬3頭に分乗してボルトランド郊外のフランキー夫妻が経営する宿まで移動する。


先頭を走るのはアイで、警戒行動の見本を見て学習したムサシが後日、先頭を引き継いだ。東の森ハリコフから3日目。確かに農家そのものだ。


フランキー「カール様、お久しぶりです。」


「あー、フランキーさん。普通に接客してくれればいいです。」



フランキー「分かりました。では、お部屋は?」


アイ「2人部屋が1つ」


フランキー「少し、ご報告が…」


「では、あとで部屋に来て下さい。」



イブリン「夕食はいかが致しましょう?」


「あっ、そうか…じゃ、テーブル席でフランキーさんの話を聞きながら、用意ができたら直ぐに持って来て下さい。」


イブリン「はい。」



テーブル席に私とアイが座り、ムサシが私の後ろに立っていた。

『(ムサシも座れ)』

ムサシはフランキーの隣に座る訳にいかず、違うテーブルに腰かけた。


「(ムサシ、今後は護衛対象をアイとムサシで挟むように座るのだ。)」


ムサシ「(了解)」


フランキー「先日来た客が、酒を飲みながら『セントレア帝国と戦争になりそうだ』という話と、現在、隣のアイダホ市で兵士を募集しているという話をしていました。真偽は私には分かりません。」



「なるほど。ありがとう。」



実は、この情報はAIであるオリビアが客のひそひそ話を聞き取ったもので、私が来る事になって、何か有用な情報が無いか、フランキーがオリビアに教えてもらった情報なのだ。


諜報員としての活動をちゃんとやってますよ、アピールだろう。


「フランキー、有用な情報を得るのはありがたいが、君は家族を守るのが第1の任務だ。危険な事は出来る限り避けるようにしてくれ。情報は耳がいいオリビアに任せればいい。」


フランキー「おそれいります。」


ほっとした表情をした…。

この男、丸くなったものだ。


それにしても、オリビアからこの情報を得たためにムサシを作ってやって来たのだ。

そして、この地名、アメリカの地名のままだ。

位置関係が想像できるのでありがたいが、やはり、ここでも地球の神の意地悪なのか?



夜になって、部屋の扉前にはムサシが立っている。

部屋の中は私とアイが応接セットで座って、オリビアを待っているのだ。


ムサシ「オリビアが来ました」


「入ってもらえ」


オリビア「お久しぶりです。カール様」


「うむ。では早速、服を脱ぎ、ベッドに仰向けになってくれ。」


オリビア「はい。」


オリビアの各所の点検を行う。


問題は機構部だ。

特に可動部で摩耗などは無いか入念に目視検査を行う。

次に、手の握力測定。

トルクに誤差の発生は無い。

口腔内部に着色が若干見られる。

内部表面の劣化、傷は無い。


「(排水機構、排便機構に詰まりは無いか?)」


オリビア「(未確認です)」


「排水を少し出してみて」


オリビア「10ml出します。」


「成分分析、異常はない。」


「(膣は未使用だな?)


オリビア「(はい。処女です。)」


「(どこでそんな言葉を覚えたんだ。)」


オリビア「(宿泊客が私を見て言ってました。)」


「(…仕方ない。そうだが、オリビアには膜はない。)」


オリビア「(膜とは?)」


「(あーー、どうしてこうなった…後日、情報共有してやる。)」


オリビア「(ありがとうございます。)」


「(点検終了!部屋にもどれ。)」





お読み頂き、ありがとうございます。

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