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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第106話 長安脱出


宿屋の窓から部屋に戻った二人。

私はとにかく眠い。

久しぶりのベッドだし…



朝、いつもようにアイに起こされる。


アイ「カール様、朝ですよ。」


「まだ、眠い。」


アイ「では、これはどうですか?」


アイは私の顔を自分の胸に引き寄せる。

『あー気持ちいい』。

でもアイに注意する。


「勝手にアリスの乳房で遊ぶな。」


アイ「これは私のおっぱいです。」



そんなやり取りをしていたら、目が覚めてしまった。


「夜中、市内のようすを監視していたのか?」


アイ「はい。明け方から青瓦台の方向が騒がしいです。」


「何かあったのかな?」


アイ「……さあ。」


アイ「(返り血が付いていましたので、綺麗にしておきました。)」


「(ありがとう、助かる。)」



朝食を昨夜と同じ個室食堂で、固いパンとスープを頂いていたのだが、


旦那「おい!大変な事になったぞ!」


と大声を張り上げて、恐らく宿の旦那と思われる人物が入ってきた。

昨日のおばさんが


おばさん「どうしたの?」


旦那「青瓦台が襲われて、大統領が行方不明だそうだ。」



料理人が奥から現れて『旦那さんだと思う』と言って玄関方向へ行った。



料理人「旦那さん、お帰りなさい。朝食はどうしますか?」


おばさん「せっかくだから、私は頂くわ。あんたも食べるんでしょ?」


旦那「あ、ああ。みんな冷静だな…」


おばさん「私達がどうにかできる事じゃないし…騒いだってお腹が減るだけよ。」


旦那「そりゃそうだけどな…」


おばさん「それはそうと、太原のコールの所から、うちを訪ねて来たお客さんが来てるよ。」


旦那「へえー、懐かしいな。」




このあと、ゆっくり話を聞かせてもらったのだが、セイトも天候不順の影響で食糧事情は悪いらしく、旦那はセイトへの移住は無理だと判断したようだ。


やはり、多くの民がそうするように、南部地域から帝国に向けて移動するしかないだろうとの見通しを語っていた。


彼らにとっていい話があるとしたら、勝手に大統領だの、首都だのと言って国民の移動を妨害していたチョウアンの役人たちが混乱していて、自由な移動ができる可能性が大きい事だろう。



「じゃあ、僕たちはこれで失礼します。」


おばさん「気をつけて…」


見送る余裕を見せた宿の人達。

店を出て装甲車を隠した場所に戻った。

偽装網を外しゆっくりと来た時の道を走る。

だが、太原の西側には、あの大きな湖があるはずだ。

そこでチョウアンを出た私達は、北へ進路を取る事にした。


現在でいう延安へは100km約2時間の距離で、その北側に湖はあった。

この水が黄河となって流れていく。

湖の近くを東へ走り約150km、 4時間ほど行けば太原である。

だが今回はこのまま湖の近くを北東に分岐する。

2時間ほど進んだ夜の湖畔に軍隊の砦を発見した。


ここから湖の町バルナに襲撃を掛けたのであろうか。

バルナに高速哨戒艇を配備して壊滅させてやろうと思った。

そして、この敵の砦が見える位置に装甲車を停めて、後部の簡易ベッドと寝袋で眠ったのだった。


夜中に目が覚めた。

一緒に寝袋に入っていたアイの温かさは消え、今は助手席から砦を観察しているようだ。

この装甲車は前後の仕切りが無く、後部席の簡易ベッドから助手席に座ったアイ後ろ姿が見えるのだ。


「アイ、砦には変化は無いか?」


アイ「はい。見張り2名を除いて、皆眠っているようです。」


「よし、では砦に潜入して地図が無いか見に行こう。」


アイ「私が行ってきます。カール様は睡眠系、拘束系のどちらも使えないですから」



「はっきりと言うなー。私も青瓦台を襲撃した時に痛感したんだけど、アイもだったのか…」


アイ「はい。拘束系の魔道具を何か考えながら、ここでお待ちください。」


確かにアイの言う通り、私は生身の人間だから、毒攻撃が自分にも危険を及ぼすが、アイはその点を考慮しなくていいから隠密行動に有利だ。



電撃系は精密射撃が難しいし、いい案なんて浮かぶ筈もなく、寒いので結局寝袋に戻ってしまった。

そう言えば夕食も食べてなかった。

これが目が覚めた原因かな?


そんな事を思い、魔法でお湯を作り、カップ麺を用意して助手席から砦を見ながら、カップ麺を食べる。

アイは食事はいらないのだが、心の中で謝る。


外でおしっこをしていたら、アイが戻ってきた。


アイ「カール様、戻りました。」


「ご苦労さま。後部席で聞こう」


後部席で持ち帰った物を披露するアイ。

砦周辺の地図。

それと銀貨と銅貨…。以上。


「俺たち、金持ちだぞ…」


アイ「はい。分かっていますが、つい。」


「ま~、泥棒と思わせた方がいいか…」



アイの顔を見てから、ハグをした。


「とにかく無事でよかった。」



朝になり、音を立てないように静かに装甲車をスタートさせた。

ここから約1時間、湖を回り込むように戻ってきて、森の中に作った道を走り、アンテナの異常がないかチェックしたあと、山の麓でキャンプした。


ここからは、来た道を戻るのだが、拠点などには立ち寄らなかった。

ひたすら野宿とカップ麺。

簡易のキャンプ用品を装甲車に積んで、時には自炊もしないといけない。


いつまでも子供みたいに、宿が無いと嫌だとか…そういうことから卒業したい。


精神的にも大人になって来たのかも知れない。

今回の任務は失敗に終わったが、それは不可抗力だ。

分かっているが、自分自身に不足する要素も色々発見できた。

そして何より共和国の状況が分かったのが大きい。



お読み頂き、ありがとうございます。

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