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家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
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第103話 北平(ホクヘイ)


王国歴 263年2月第3週



さて、昨日同様、寝袋にアイという体温ヒーターに抱えてもらって眠る。

アイは私が眠りにつくまでと、朝方に寝袋に戻っているようだ。

私にすれば、いつ見てもそこにアリスが居る。

こんな幸せな事はない。


陽がのぼる。

だが今朝は霧が出ているようだ。

しばらくして、霧が晴れてから偵察機を呼んだ。

80分ほどで上空に達する。


逆算すると旧王都フエキから900kmくらいか。

今日はもう少し高度を下げて、500mからの周囲の偵察だが風魔法による推進なので全く音はしない。



敵部隊、及び、基地も発見できないため、高度を上げて都市を探す。


南へ50kmの所に小高い山に囲まれた町があるようだ。

偵察機を基地に返し装甲車で町に近い森まで進んだ。

偽装網で装甲車を隠し、とりあえず用意して来た冒険者の服に着替えた。


アイはレナを参考にした筈なのだが、装甲車の長持からメイド服やドレスが出てくる。


最後に取り出したのはダテ眼鏡にローブ。

仕方がないので積んであったシリコーン樹脂を使って濃紺パンツにブーツ。

上は白のTシャツに革の胸当てを作り、着せ替え人形に。


細身の鍛鉄剣と、予備武器の吹き矢内臓の懐中電灯を渡して、仕上げは私とお揃いのパーカー風ローブだ。

風魔法で土煙を上げ、服装を埃っぽくする。


首都チョウアンより北側は警戒が薄いとの情報だったが、確かに街中に入る者のチェックもしていない。


まだ昼前だが出入りする者が少なく、服装が薄汚い以外に参考にならない。


町の南側に回り込んで、同じく観察していると、こちら側は出入りする者はそれなりの人数だ。



南からの街道は、南西方向に進んでいてその先には村などは見当たらない。

そこで町には入らず、街道を南へ歩く。

『言語共有』


アイ「(言語共有セット。)」


要は声を出すな、という指示だ。


すれ違う者達はみんな、周囲に注意を払っていないようだ。

しばらくすると、街道は大きな森を横切るのだが、手の届く範囲の木の枝が払われている事に気が付いた。

まさか暖房に使っているのだろうか…


森の中を小川が流れているようだが、見ると橋が壊れていて馬車は通れない。

だから、橋の横にみんなが通る道が出来ていた。


何だか経済が破綻している気がする。


夕方近くになり、後ろから馬の足音が近づいて来た。

役人だろうか制服のような服を着た男が2人、馬に乗っていた。


役人「おい、そこの2人! こんな時間にどこへ行くつもりだ。」


「はい。南へ戻るところです。」


役人「なんだ、冒険者か。まー北平は大きいだけで、何も無いからな。次の村まで100kmはあるんだぞ、気を付けろよ。」


「はい。」



「ホクヘイ? って事は北京か…」


アイ「共和国の地理がお分かりになるのですか?」


「あー私の知っている通りなら、大体の位置関係だけは分かる。こんな所をのんびり歩いている場合じゃない。戻ろう。」


北平の南西から再び装甲車に戻り、装甲車で眠った。

翌朝、再びカップ麺だけで南西方向に車を走らせる。

50kmほど走った所から西に進路を変え、森を突っ切って100km走ると平野部へ出る。

ここから平野部沿いに南西に200km暗くなってきた所で森に車を隠して、村へ。


恐らくだが、ここは太原たいげんあたりだろう。


歩いて村に入り食事場所を探すのだが、飲み屋が多い。

仕方なく飲み屋で席に着き、周囲の人達のテーブルにある物を観察するのだが、ろくなものは無い。



店員「いらっしゃい。冒険者なんて珍しいね。うちは宿屋もやってるんだ、良かったら泊まって行ってくれよ。」


「そうなのか。一泊いくら?」


店員「そうだね、食事付きで銀貨2枚でどうだ」


「たっけー」


店員「おいおい。金持ちじゃないのか?じゃ食事なしで銀貨1枚」


「たっけー」


店員「馬鹿な事を言うんじゃねぇ。宿賃は銅貨では受け取らないんだ。」


「分かった。なんか食べる物ある?」


店員「持ってくるよ」


持って来たのは刀削麺と、なにか分からない草の炒め物。アイが毒見役で食べて


アイ「(問題はありません)」


私は味の薄いスープを残し、味の濃い草の炒め物の汁をスープに加えて食べた。


アイ「(私の分もお食べになりますか?)」


「(いらない。)」


アイはスープを飲み干して、飲用水にするつもりのようだ。

店員だと思っていたのは店主のようで、奥のカウンターの中で立ってこちらの様子を見ていた。

食事代、銅貨5枚を払い部屋の鍵を受け取り、更に銅貨5枚を払って


「いろいろ教えて欲しい事があるんだけど…」


と言うと


店主「じゃーあとで湯を持っていくよ。」



なるほど、と思って2階の部屋に2人で入った。

1階から話し声が聞こえなくなり、戸が閉まる音がする。

階段がギシギシ音を立ててから、トントンと扉を叩く音。店主が来たようだ。


店主「おじゃまするよ。」


「申し訳ない。いろいろ教えて欲しいんだ。」


店主「まーそんなに若いんだ。冒険者に成りたてって奴だろ、分かる。何でも聞いてくれ」



「おじさん、元は冒険者だったんでしょ?どんな道具を使ってたか教えてよ。」



店主「あーそんな事ならお安い御用だ。ちょっと待ってな。今見せてやるから。」



店主は1階に降りるのではなく、逆に上の階に上がっていった。

うまく行けば簡単な地図くらい見れればいいんだが。



店主「待たせたな。これが俺が使ってた道具だ。」




お読み頂き、ありがとうございます。

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