第102話 共和国へ侵入
翌日、朝早くに屋敷を出て、装甲車で砂漠の町ボルスキーまで約470km。
途中休憩をはさみながら、夕方に砂漠の手前まで移動し、装甲車の後部席で寝袋で眠った。
南部とは言え、2月はさすがに夜間に気温が下がる。
寝袋から出ていた顔だけが冷えている。
AIアリスは眠らないが、同じように寝袋に入っている。
「アリス、体温低下はどうだ。」
アリス「カール様、その呼称は紛らわしいので、AIとお呼び頂くのはどうでしょう。」
「うむ。アイ、体温…」
アイ「表面温度の制御に異常は見られません。前頭筋、側頭筋、眼輪筋異常なし…」
「ストップ!わかったから…お前はまだまだ普通じゃないって事もわかったよ。」
「じゃーこっちの袋に入って、俺を温めてくれ。」
アイ「はい。服は脱ぎましょうか?」
「うむ。普通はそうするだろう?」
アイ「レナ様は寝る時には裸ではありませんでした。」
「訂正。普通という条件はあいまいなので取り消す。時と相手によるからね。私と寝る時には特に指定の無い場合は服を脱いで温めてくれ。」
アイ「はい。」
柔らかくて温かい。これならこんな装甲車の簡易ベッドでもぐっすり眠れそうだ…。
アイが朝、私を起こしてくれた。優しく顔をさすってくれるのだ。極楽極楽。
アイ「カール様、朝から御所望でしょうか?」
「違う。これは男性特有の現象なのだ。ただ、そういう時もある。」
アリスの顔が目の前にある…本当に綺麗だ…だがアイとは目線が合わない。
この子の瞳の奥には欲望が無い。
なんとなく、その気になってしまった。
アイの乳房を包み込み、少し感触を楽しむのだが、感覚共有は切っていた。
『あっと、忘れてた』
そう言えば、私の肉体は肩、胸、腕、腹、脚という主要な筋肉を強化したのだった。
疲れ方は違うのだろうか?と、試しに励んでみた。
行為に及んだのは初めてだが、ものすごく体力や持久力が上がっていた。
ジャックはこんなにも強いんだと思い知らされた。
アイはアリスの感覚を記憶していたようだ。
上手に秘部に分泌液を再現できていた。
「アイ、上手にできていたよ。ありがとう。」
アイ「どういたしまして。では、朝食の準備に取り掛かります。」
本物との最も大きな違いは陰毛だろう。
皮膚に立体的だが線を描いただけなのだ。
頭髪は金属ワイヤーにシリコーン樹脂のコーティングをしてあるのだが、強靭さを重視したのだから、秘部には使えない。
今度、樹脂だけで作ってみよう。
装甲車の後部ハッチから、アイが38式改造自動小銃+炸裂徹甲弾でワームを射殺していく。
アイは反応速度が人間より早く命中精度も高い。
約30分ほどで砂漠地帯を抜けて、南部の山脈前まで南下して来た。
ここで偵察機の到着を待つ。
まだ時刻は10時。お茶でも入れて待っていよう。
60分ほどで偵察機が上空1000mからの地上の映像を映し始め、アイがその映像を受け取っている。
私はアイとの視覚共有によって同じ映像を左目の映像として見ている。
どうやら、山を越えたところには拠点はなく、部隊も展開されていないようだ。
私はゴーレム魔法を使って山道を広げ、その後ろから装甲車を走らせている。
脱出時にも使うだろうから、できるだけ直線に作っておこう。
山頂付近の木にアンテナを設置して、魔石BOXを接続し、パラボラアンテナの方向を調整する。
無事に南方方面軍の電波塔との交信テストが終わり、偵察機の飛行可能領域が南方向に広がった。
その後、夕方まで掛かって、山の麓まで降りて来た。
陽が落ちると逆に光が有るか無いかで、敵の存在は分かる。
さて、装甲車の後部、簡易ベッドでカップ麺の準備だ。
アイ「それは美味しいのですか?」
「味覚は人によって差が大きい。だが子供の頃に食べた物は好きな範囲に入る事は多いようだ。辛い物を食べて育つと辛い物無しでは不満を感じるものらしい。」
アイ「でもその『カップ麺』はカール様が子供の頃には無かった食品ですね。」
「だが、私が発明したのだから、嫌いなはずはない。」
カップ麺を少し食べて味を確認した後、アイに麺の味覚、硬さ、スープの味などを記憶させた。
アイ「記憶しました。」
「アイ、今朝初めて性行為を行ったわけだが、人間は男女ともに性行為による快感を一定量蓄積すると、飽和状態に達するのだ。この状態を『頂点に達する』とか『行く』などと表現をする事がある。脳内に快楽を与える物質、ドーパミンと呼ばれているそうだ。記憶。」
アイ「記憶しました。」
「『頂点に達する』と、脈拍数や血圧の上昇、骨盤筋のけいれん、膣や尿道の収縮などの反応が起こる。脳内の反応はドーパミン、オキシトシン、プロラクチンなどのホルモンが分泌され、精神的にも最高潮の状態になりやすい、と言われている。記憶。」
アイ「記憶しました。」
「諜報員として派遣したオリビアは、いずれ、今朝のような性行為によって、帝国の有力者を凋落させる必要があるだろう。オリビアに今朝のデータと知識を送っておいてくれ。」
アイ「思い出アルバムではダメでしょうか?」
「過去の思い出に格納しちゃだめ。オリビアと交信!」
アイ「オリビアと交信完了。オリビアから関連データを受信しました。」
「ん? 視覚共有。」
アイ「視覚共有セット。再生します。」
それはフランキーとイブリンの行為中の音声と、天井からの見下ろし映像であった…。
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