第101話 肉体改造
「あっ、ちょっと待ってください!……」
パニックになり、思わず声に出してしまった…。
男神「(断らないなら待ってもいいが…それと声に出すな。)」
「(うう…分かりました……期限はいつまでですか?)」
男神「(1週間以内に出発。一人では無理だ。AIを連れて行くように。それにしても、いつまでその体格のままなのだ。筋肉を付けパワーアップしたらどうだ。ではな。)」
ん?『筋肉を付けパワーアップ』って、どうやって?あっ、分かった!自分自身に『ヒール』を掛けて、肉体を構成し直すって事か~。
でも、サンプルは興味本位…じゃない、『AIに必要だった』女子生徒のデータしか取ってなかった。
では、マリリンの屋敷に戻って、ジャックの筋肉データを分析しよう。
「ジャック、ちょっとお腹を見せてくれる?」
ジャック「カール様、何をするんです?」
自分のお腹を見せて、
「15歳でこんな腹筋じゃ、みっともないだろー。だからジャックの腹筋をコピーするのさ。」
そう言って、ジャックのお腹に手を当て、分析を実行する。
腕や脚の筋肉も分析してデータを指輪に記録しておく。
「なるほど、さすがジャックだね。無駄な肉が無くて、硬くもない。」
ジャック「そうでしょう!筋肉は力が強ければいいってもんじゃねえ。粘り強さがあって鞭のように使えるのが理想ですぜ。」
「では…『ヒール』…ク…クク。」
筋肉組織が組み替えられ、皮下脂肪が多い筋肉から、赤みが多く瞬発力の強い筋肉になっていく。
いわゆる筋と呼ばれる物と骨との接合部が太く、強くなっていく。
だが、筋肉が変化するその痛みが腹部全体をピリピリと電気のように走るのだった。
本来は、脚や腕、肩の筋肉も、ジャックのような構造の筋肉にしたかったのだが、今日はやめておこう。
「ジャック、お礼だよ。」
そう言って、再びジャックの腹部に手を当て『ヒール』を掛けた。
「少し大きくしておいた。それと、これをあげる。」
先日お試しで作った青いひし形の薬だ。1パック4錠を2シート。
ジャック「これは?」
「ターニャはまだ、子供が出来てないんでしょ?これを飲めば頑張れますよ。」
ジャック「ええーーーまさかーーー!」
ジャックは錠剤に驚いたのではなく、股間を押さえて驚いていた。
王国歴 263年2月第2週
男神との約束の1週間まで、あと2日。旧王都屋敷に来た。
夕食に間に合うように来たのだ。
装甲車を屋敷の中に入れると、すぐ玄関にセバスとレナが迎えに出て来た。
セバス「お帰りなさいませ。カール様」
レナ「お待ちしていました。」
玄関を入ると、中にフローレンスとAIアリスが出迎える。
フローレンス「お帰りなさいませ。カール様」
「みんな元気そうで安心したよ。」
夕食の準備は既に出来ているようなので、ダイニングに行く。
野菜サラダとスープ、そしてステーキだった。
だけど無駄はなくて、とても良い印象だ。
「夕食はレナが作ったの?」
レナ「いいえ、AIアリス様です。」
「なるほど、料理もバッチリだね。」
全員で食後の紅茶を飲みながら、フローレンスに向かって
「フローレンス、私とアリスはこれから君の母、フレアの救出に行くことになった。でも神様の話だと状況はかなり悪いみたいだ。」
フローレンス「えっ、カール様が行ってくれるのですか?」
「うん。私は神様の使徒みたいなものだからね。神様からの依頼は断ることはしたくないんだ。でも、頼まれたからじゃなくて、フローレンスはもう私達の家族だから、フレアを助けたいんだ。」
「本当は、助け出せる状況じゃないらしいけど、もう時間がないみたいなんだ。だから、万一間に合わなかった時の覚悟だけはしておいてほしい。ごめんね。」
フローレンス「分かりました。どうか母をお願いします。それとカール様。みんなのため、必ずご無事でお戻りください。お願いします。」
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