表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家電メーカーの技術担当が異世界で  作者: 神の恵み
第1章 カルバン王国
1/164

第1話 カールラングリッジ

総合家電メーカーの技術担当が異世界へ…生産職として大成してハッピーエンドを目指す物語です。暇つぶしにどうぞ!


「ふぁーーー」


もう限界だな…さっきからあくびが止まらない。


一度まぶたを閉じると、あっと言う間に 2、3分は経ってしまう。


自宅勤務なので、椅子のすぐ後ろにベッドを置いている。


「もう寝よう!」


・・・・


・・・・


・・・・


翌朝、目を覚ましたのだが、頭痛がひどい。


体も節々が痛い…


・・・・


・・・・

なぜか、部屋の匂いが違う…、ベッドから起き上がったのだが、なぜか小さくなった自分の体…。


同じ配置だけど木製の四角い机と椅子?…クッションがほぼ無いベッド…。



いやいやいや…神様にもお会いしてないんですけど?…


頭痛が少しずつ良くなってくると共に、神山武志…43歳バツイチの記憶が遠くなり、まるでそれが夢だったように思えてくる……


私の名前は…そう!『カール・ラングリッジ』もうすぐ5歳になる。


でももうラングリッジ姓は使っていない。


部屋のドアが開いて、誰かが入ってきた。


「カール!どうしたんだ。クリフが一度、起こしたと言っていたのに、まだ寝てたのか」


そう言って、ベッドに近づいて来たのは、父、ビリーだった。


私はその父に顔を向ける


「頭が痛くて…」


すると父は驚いた表情で


「おい!耳から血が出てるじゃないか!  エルマ! エルマ!!」


父は、母の名前を叫びながら、慌てて部屋を出て行ってしまった。



そのあと、荷車に乗せられた私は、病院とは全く異なる『教会』に運ばれていた…。



どうやら、治療は終わったらしい。


耳から血が出ていたが出血量も少なく、朝起こしに来た兄のクリフ(10歳)が暴力を振るった訳でも無かった。



クリフは父ビリーのような、グランデ王国の北方守備隊の兵士にあこがれていて、10歳になって見習い兵士として訓練にも参加しているらしい。


その時の守備隊の訓練で受けた、『起きない奴はお腹を1発殴る』という起こし方を、弟である私にしたようだ。



しかし、神官が言うには『そんな事で耳から血が出たなど聞いた事がない』という事で、2日ほどは教会で様子を見るからと言われ家族は帰ったそうだ。


気が付いた時には周囲には誰もいなかった。


とにかく、色々な情報が頭に入って来ていて、神山武志の記憶と知識、カールの記憶と知識がせめぎ合っているみたいだ…。


頭が痛い事以外は体に異常はなくて、サイズの小さいカールの体からは


『ぐーー』


という空腹の音が出てきた。



すぐそばで、書き物をしていた神官の女性が、


「お腹が空いて、目が覚めたのですね。」


そういって、石ころのような硬いパンと、少しの野菜が入ったスープを出してくれた。


起き上がって、木のプレートにあるパンをスープに浸して食べる。


石ころパンの中は柔らかい。


神官の人に何と言えばいいのか分からないので、カールの記憶を探る…。とりあえず…


「ありがとう…」


そう言って、再びベッドで横になった。


ひとまず、頭痛のするカールの記憶から、生活習慣としての話し方や、過去の記憶を探っておこう。


不自然な言動をしないように…。




----- 神界 ------


そのころ、神界は少しもめていた。


男神は怒っていた。

「いったいどういう事だよ! できます詐欺じゃないのか?」


部下の女神は言い訳に必死だ。

「違います!『転生者』の受け入れは、今やどこでもやってるし、誰でもできるって聞いたんです!」


「『何が簡単です』だよ!いきなり死にそうになってるじゃないか!」



「おかしいですよー。人間の脳なんて10%しか使ってないって言われてるんですから、子供の脳でも大丈夫なはずです…」


とぼける女神に更に指摘をする。

「そもそも、割り当てられた魂を廃棄して、勝手に違う魂を持ち帰るなんて泥棒だぞ!」


「だって、割り当てされた魂は『63歳の医師』という立派なデータだったのに、なんかすごくいや~な感じがしたんです。」


「どういう事だよ?」


「なんて言うか、すごくスケベな感じがしたので途中で捨てて、改めて、そ~と地球に行って、キラッと光る魂が浮かんできた所をさっとすくって来たんですよ。むしろ褒めてほしいくらいです。」


少し落ち着いてきた男神だが…


「63歳にしてお前が感じるほどのスケベ爺さんか~…それはそれで子孫をたくさん残し、発展に寄与するとは思うがな…。それにしても、才能あふれる者の潜在能力も含めて全部を子供に移したんだろー?だから過剰だったんじゃないのか?」


「でもー」


「なにが『でも』だよ!能無し! 明日、5歳になったらきっと教会の水晶装置で加護を調べるだろうから、その時にでも彼の潜在能力を『加護』という形に圧縮しておけ。これから知識が増えるだろうから、要らない過去の記憶は消して領域を空けておけよ!もしなんかあったらお前のせいだからな!!」


「わかりましたよ…」




----- 人間界では -----


夜になり、目が覚めた。


カールの記憶と知識。それはごく普通のものだ。


祖父:アルバート・ラングリッジ。


今は無い北の国の元騎士団副長。

魔物が北の森からあふれ出て、都市を飲み込んだそうだ。

子供(父)を連れて南に逃れてきた移民1世。既に死去。


父:ビリー。


移民2世。

祖父が国境線で魔物の侵入阻止に活躍したため、親子共々移民として市民権を得た。

祖父は活躍の結果、グランデ王国の北方守備隊に採用が決まり、祖父の死後、同じ役職に父は就職できた。

国家公務員みたいな地位なので教会の治療も無料だそうだ。


母:エルマ。


地元グランデ王国フェドラ町にある武器屋の娘。

活躍した祖父のファンだったそうだ。


長男:クリフ。


父と同じ守備隊兵士を夢見る純粋な10歳の男の子。

若干脳筋ぎみ。



だが、私には忘れつつある大人の記憶もある。


祖父の名は神山安治郎:

この祖父は、夢で『海の向こうからやってくる蛮族から国を守れ』と言われ都会から山奥に来た変わり者。

見るからに都会のひょろっとしたハンサムな男だったそうだが、神社の一人娘だった祖母が祖父に惚れて結婚し、祖父は山奥の集落に根付いた。


日本海側への道さえ無い山の頂上付近に住まう集落。

不思議な一族であった。



父の名は神山武治。

山奥の集落から都会に出て来たイケメンだけが取り柄の6男、器用貧乏。

大工仕事だろうと家電の修理だろうと、すぐに何でもこなしてしまう父であったが、恋愛は苦手だったそうだ。

祖母に似た巫女姿の母とお見合い結婚したが、巫女は単なるアルバイトであった。



神山武志:

エンジニア。43歳。バツイチ。

結婚できない男が周囲に大勢居たため『2回も結婚できたラッキーな男』などと言う奴もいたが、幸せなら1回で十分だったはずだ。

私には子供はいないが、再婚した妻には中学に入ったばかりの娘がいた。


この娘の父親はプー太郎だが存命だったため、自分が父親というのは不自然なので『おじさん』と呼ばれていた。


この娘と二人で歩いている時に、不意に犬に吠えられて、驚いた娘が私と手をつなぎに来て、うれしく思ったのがきっかけで、仲良くなった。




私が神山一族の事を思い出していたこの頃、女神は神山の意識を共有していたため、今回の失敗の原因を知る事ができた。


女神「なるほど…この人の一族は、神から神託を得ていたから色々な潜在能力を持っていたのね…」




お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 五歳の少年がどのように成長して世界を変えていくのか気になります! これから「鍛冶」「錬金」「分析」の加護の力が、どう影響していくのか考えながら読んでいきたいと思います!
2022/05/13 21:13 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ