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最悪 - 絶望・恐怖短篇集

最悪 ~ 具現虚空

作者: MAGI

 それは時折現れる。

 人間に喩えられる地獄ですら生温い、無限の虚無。

 ただ、無間地獄とは根本的に異なっている。

 空間も、時間も、存在もない場所から、それは生まれる。

 身体は粘着質で、不定形な状態で形作られ、そして何かに呼ばれるかのように虚無から離れる。


 向かった場所により、それは形を変える。

 その場所での"力のある生命体"のシルエットのみ象る。

 どう言うわけか、呼ばれる先はかなり偏っているようだ。

 この呼ばれている道中、それは力を擦り減らす。

 辿り着く時には、それ以上の弱体化を防ぐ為に象る。


 そして、何かを感じて向かった先で、残された力を駆使して無差別に暴れ狂う。

 向かった先では、妖や魔物と呼ばれた、人間と呼ばれる有象無象より力を持つ者たちですら、それを怖れた。

 荒ぶる神、という言葉でも収まりがつかない。

 呼ばれた先でも、それに堪え兼ねて滅殺しようとするが、どんな攻撃も一切受け付けない。

 更に、それは声を持っている。

 この声は周囲の対象の脳を破壊する作用をもたらし、直撃を受けた人間は精神破壊を受ける。

 しかも、一生回復が見込めない程に。

 それの声は、どうやら魂にも干渉するようである。

 その声を直に聞くと、汚染されるのか、直に聞いた者は精神的におかしくなるようである。


 ある時はトンネルの先に。

 ある時は古城に。

 ある時は人間の作り上げた団地と言う無個性な建造物群に。

 ある時は人の形を模した機械に。


 ごく稀に、意図的に呼び出される事もあるようだった。

 しかし、それらにはまるで関係ない事である。

 そもそもが、意志を持っていないそれら。

 三次元の万物の理全てに通用しない存在。


 そして意図的に呼び出された場所は、大体が争いの場だった。

 戦局の打開の為か、一方的な力を得る為か。

 しかしそれらにとってはどうでも良い事である。

 違いがあると言えば、呼び出される途上で、力の減少をほぼ受けない事である。

 最初よりはある程度弱体化しているものの、とてつもない脅威を見せつける。


 そしてよく向かっている、呼ばれる先にいるのは大体が、それらとよく似たシルエットを持った、複雑な形をした生命体である事が多い。

 それらと似たような、頭の下にある小さな穴から弱い音を発して、意思伝達をしているように思われる。

 その音の意味をそれらはまるで理解出来る範疇ではない。

 それを理解する力もなければ、理解する必要もない。


 ただその場にあるすべてを破壊し尽くすのみである。


 そして今も、また生み出されるのである。

 生み出され続けている。


 世界のバランスを取る為の、嫌な役回りの存在なのかも知れない。

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