2: 推し(嫁)が勇者に恋してるかとしれない諦めようと思う。
ふぅ、今日は試験の当日だ。
試験に対する不安や心配や緊張は全くない。でも、カノンちゃんに会えると思うと緊張する...。
「ふぅ...落ち着け俺、カノンちゃんに会ったらCOOLにいくんだぞ...COOLに。
第一印象は大事にしないとな。」
第一印象は1番大事!!それ一番言われてるから。
公式設定ではカノンちゃんの好みの性格は少しヤンチャが好きと書いてあった。
でも、ここはゲームの世界と違って本物の世界だ。
ゲームと少し変わってるかもしれないから第一印象をきっかりすることに決めた。
「あっそうだナビちゃん」
「?...なんでしょうかマスター。」
「もし、試験で答えが分からなくなった時はナビちゃんに聞くからよろしくね!」
琉斗は最初から正々堂々と試験を受けるつもりは無い。
いくらゲームで満点を取ったからと言っても少し問題が違うことも想定している。
だかは、予めナビちゃんに言っておく。
ズル?知らんな、100%確実な方法をとって何が悪い。
「マスター.........私は初めてマスターに呆れているかもしれません...。」
うっわ、ナビちゃんに呆れられてるって相当だぞ俺。
「ナビちゃん...大丈夫!ナビちゃんはそもそも俺が創ったスキルだし知識も全部俺が入れたしナビちゃんは俺の体の一部だから!」
「何言ってるんですか?マスターは。」
うん、俺も自分が何を言ってるのかさっぱり分からない...いや、自分で言ったのにそれを分からないってどういう事だよ。
「ま、まぁ、兎に角!困った時は宜しくね。
相当な事態にならない限り頼らないから。」
これに関しては本当だ。俺にだって良心があるんだ。
ズルをするなんて心が痛む。
「マスターに良心なんてありましたっけ?」
こいつ!!ナチュラルに人の心読むなよ!!エロい妄想とかできないじゃん!!!
まぁ、しないんだけどね。
「っと、それよりもそろそろ試験会場に向かうか。
流石に試験当日に遅刻ってのはないからな。
あっ!ナビちゃん、一応周辺の警戒はしておいてね」
「...了解しました...マスター。」
もうすぐ生カノンちゃんに会えるぞ!!待っててね!カノンちゃん!
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ふぅ、ようやく学園に着いたな...試験会場って何処なん?受付の人に教えられなかったけど...。
ゲームじゃ転移で移動させられたから居場所なんかわからん。
「おっ、あそこの人にでも聞いてみるか。
あの〜すみません、試験会場って何処か教えて貰えませんか?」
「ん?試験会場の場所?良いよ、僕もここに受けに来たから一緒に行こうか。」
おお......さっきは後ろ姿しか見えていなかったけどこいつ、めっちゃイケメンじゃん。
いや、二次元に居るレベルのイケメンだぞ?
ん?こいつ見た事ある...あっ、勇者じゃん。
この金髪に碧眼はどう見ても勇者、勇者関係のクエストとかは今まで数回しか受けたこと無かったから一瞬分かんなかったな...廃人として有るまじき失態だ。
それにしても、勇者を生で見ると結構緊張するな。
なんか、オーラがあるというか...威圧感があると言うか、うん気の所為だな俺は陰キャだから陽キャにビビってるだけだ。
あっ、やべそんな事思ってたら話し方がわかんなくなってきた。
「......あっ、うんありがとう。
一緒に行こうか...うん。」
うっわ、陰キャムーブ丸出しだよ俺。
「じゃあ、行こうか。
あっそうだ、僕の名前はカミヤ・ヒカル 宜しくね。」
知ってる。まぁ、こっちも自己紹介しよう。
「お、俺の名前は...キバラ・リュウト 宜しく。」
こうして、俺は勇者ことカミヤ・ヒカルに案内されることになった。
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暫く歩いたら人がめっちゃ人混みができてる所に着いた。
「うわぁ...人多すぎだろ。これ全部試験受ける子達なの!?」
いやいや、パッと見二千人は居るぞ?
ああ、ここは王国だししかもここは一番最難関だからこんなに居るのか。
ゲームじゃこんなに居なかったから少しびっくりしたぞ。
「そうだね、こんなに人がいるとは思わなかったよ...。
あっ、僕はここで失礼するよ。友達と待ち合わせしてるんだ、お互いに合格できるように頑張ろうね!」
「あ、ああ、ありがとうな!お互い合格頑張ろう!」
......ふぅ、勇者ってめっちゃ良い奴じゃん!!
こんな事ならゲームでも勇者に話しかければ良かった。
「あの......」
そんな事を考えていたら後ろから突然誰かから話しかけられた......いや、この声はまさか!!!
「ん、ん?な、何か...用ですか?」
振り返ったら琉斗がずっと会いたかった人物...カノンが居た。
う...うぉぉぉぉぉぉ!!!!!生カノンちゃんだ!!!
やばい、めっちゃ心臓がバクバクしてきた、破裂しそう。
てか、俺話しかけられたよね!!
カノンちゃんから話しかけられるとか俺もう死んでもいいかも!!
これだけで学園に来た意味あったなぁ...ハァ、幸せ、カノンちゃん可愛い。
っと!!こんな事考えてる場合じゃない、カノンちゃんが話しかけてきたんだ、一言一句聞き逃す訳にはいかない!!
「あっ、はい...その、さっき一緒に居た人ってもしかして勇者様ですか?」
「あっ、う、うん。さっき一緒にいたのは勇者だね...。
うん。」
まさかの、勇者に関する事だった。俺は顔を引きつらせながら答えた。
まぁ、そうだよね。こんな冴えないやつに話しかけるとしたらその位だよね...まぁ、勇者のお陰で話しかけられたし勇者に感謝しよう。
「そ、そうですか...。
あの、勇者様とは仲が宜しいのですか?」
「いや、別にそういう訳では無いよ。
ここまで案内して貰ってただけ...。」
勇者とはゲームの中では少しは仲良かったけど今は全NPCだった人達は俺の記憶はないし。
今は、仲良くないな。
「そうなんですね。」
な、なんだ?何かカノンちゃんの様子おかしくね?
初対面の人なら何も分からないかもしれないがずっと見てきた俺には分かる。
これは、何か言いたいけど緊張して言えない顔だ。
そうなるとカノンちゃんは何に緊張してるんだ?試験かな?
いや、緊張だけならそうかもしれないけど何か言いたそうにしてるし...違うか。
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:カノンちゃん:
話掛けたはいいけど、緊張してお礼が言えないよォ...。
彼には昨日助けてもらったお礼言わなきゃいけないのにぃ。
あの時のお礼...。
――――――
昨日、私は申し込みに行くために昼頃に受け付け場まで向かった。
向かっている途中に猫ちゃんを見つけて追いかけていたら見かけない場所にいつの間にか居た。
猫ちゃんも見失ったし元いた場所に戻ろうとしたら急に後ろから声の低い男の人が怒鳴ってきた...曰くここは闇ギルドの本部らしい...やばいと思った私はすぐさま逃げようとした。
でも、そう上手くいくはずもなく呆気なく私はっと待ってしまった。
「ははは...こりゃ上玉が手に入ったな、たっぷりと楽しんだ後に奴隷商に売るか。
へへへ、こいつぁ〜白金化三枚の価値はあるかもしれんな。俺はなんて運がいいんだ。」
やめて!離して!そう思い腕を剥がそうと暴れても相手はビクともしない。
いつの間にかその男を中心に周りには仲間であろう人物達も居た。
私は諦めかけた...でも、最後の抵抗として助けを求めて大声で叫んだ。
「誰か助けてぇー!!!!!!!」
その瞬間私の手を掴んでいた男が突然倒れた。
よく見るとおデコが腫れている。
周りを見ると私を囲っていた男達はいつの間にか倒れていた。
助けてくれた人にお礼を言おうとした私は振り返った。
でも、助けてくれた人は目にも止まらぬ速さでその場を立ち去ろうとしていた。
「まってd......」
私が言い終わる前にその人の姿は見えなくなっていた。
顔は見えなかったけど後ろ姿はちゃんと覚えている...
いつか、会って絶対にお礼を言おう。
私はそう誓った。
胸がドキドキする...何なの?これ?
すごく、心地いい。
―――――
うぅ、昨日のこと思い出したらもっと緊張してきたよ...
なんか、この人の顔を見るだけでドキドキする。
ドキドキしながら私は言葉を何とか出した。
「あっ、はい...その、さっき一緒に居た人ってもしかして勇者様ですか?」
違うでしょ!!私!!お礼!お礼を言いなさいよ!!
勇者様は今はどうでもいいでしょ!
「あっ、う、うん。さっき一緒にいたのは勇者だね...。
うん。」
ほら!!この人顔引き攣ってるじゃん!いきなり声かけられてそれが勇者様の事だったらそりゃ誰でも引くよね!
うぅ、なんかこの人の前だと緊張して変なテンションになる。
平常心よ私。平常心、平常心......。
「そ、そうですか...。
あの、勇者様とは仲が宜しいのですか?」
違う!!話しを続けようとしなくていいでしょ!?
お礼を言いなさいよ!私!!いざって時にヘタレてどうするのよ!!
「いや、別にそういう訳では無いよ。
ここまで案内して貰ってただけ...。」
うん。なんかこの人無表情になったよ...きっと初対面なのになんだ!この人って思ってるんだろうな...泣きなくなってきた。
「そうなんですね。」
つい私は素っ気ない態度で返事を返してしまった。
ハァ......何かここまで来ると開き直りそう。
相手の方を見ると何故か神妙な顔をしながら私を見ている。
ああ、変な目で見られてるな...。どうしよう。
うぅ、変な目で見られてるとはいえ、見つめられてると恥ずかしいよォ...。
カノンは顔を赤くして俯いた。
その行動が琉斗を誤解させるとも知らずに。
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:琉斗:
いやいや...何かカノンちゃんが顔を赤くしながら俯いたんですけど!?
ま、まさかな?...そんなはずないよね?
俺の予想が正しかったらカノンちゃんは勇者に、カミヤ・ヒカルに恋をしている。
あくまで予想だけど...百人に聞いたら百人が恋をしていると思うだろう...これは。
まじかよ...泣きそう。いや、少し涙が出てきてるかもしれない。
耐えろ!!耐えろ俺!カノンちゃんの前で泣くわけいはいかない!!
カノンちゃん同盟のみんなで決めたじゃないか!!
どんな事があろうともカノンちゃんの幸せが第一と!!
...クソっ!勇者め羨ましい!!
.........ハァ、カノンちゃんは諦めよう。
めっちゃ、悔しいけど道中勇者と喋ったけどめっちゃ良い奴だったし...カノンちゃんにも相応しい。
勇者とカノンちゃんが結ばれるが一番カノンちゃんが幸せになるだろうし。
...仕方の無いことだ...仕方の無いこと。
俺は新しい恋でも見つけるとするよ...。
帰ったらめっちゃ泣くとしよう...。
ナビちゃんに慰めてもらうんだ。
「俺はそろそろ行くよ......じゃあね。」
この場からいち早く抜け出したいから俺は別れを告げて猛ダッシュでその場を離れた。
カノンちゃんが何か言っていたような気もするけど気の所為だろう。
今日の試験ダルくなってきたな。
学園に通う意味もなくなったし、やめよっかな。
...いや、受けよう、勇者とお互いに合格するって約束したし、約束は守りたい。
それに、勇者とカノンちゃんのラブコメを見てみたい。
どんなラブコメをするか今から楽しみだな...HAHAHA。
ラノベと同じで推しヒロインが主人公とラブコメする程度の気持ちで見よう。
この日琉斗はカノンを諦めた。