表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/53

スポーツマンシップ

腰パン男が背中から金属製の筒のようなものを取り出した。カチャリという音がして手元で短い棒が延びた。

手馴れた様子でそれを一振りさせ、凄みを利かせてくる。


「そんなもん出してどうすんだよ?オレもそいつも部活の途中なんだ。あんたらと違って忙しいんだよ」

「うーん、余裕こいちゃって、カッコイイねぇ」

「あんたが格好悪りいだけだろ」

「口が減らない困ったライオン丸は調教が必要だねぇ?ん?」

晃は体をくねくねさせながら、冷やかすようなに賢悟を見た。


「やだ……怪我しちゃうよ……晃くんやめて! ねえケンゴもっ……あたしなら本当に問題ないから……晃くんは親戚なの。だからケンゴはもう行って……!」


「マジくどいぞ」

賢悟は溜息混じりに眉をひそめた。

「お前ねぇ、人の話し聞いてた?オレ二回も言わねェぞあんなこと」

お得意の仏頂面を作ったが、視線はひょいと空に飛ばした。

「だってあたし……!」

「もういいから、アタシは少し黙ってろ」


その時、金髪の男が前方から向かってきた。ユニフォームの襟をつかまれそうになる。


「触んなよっ」

賢悟は上半身を捻って男の腕を除けた。

そして軸足をずらし足を曲げると、スパイクの底で思い切り男の腹を押し戻した。

咄嗟の突き返しに金髪の男は後方へ尻から転がった。

「くっ……このクソガキが!」

「そっちが悪りんだろーが……」


不安と困苦の入り混じった顔で温彩が叫んだ。

「待って!喧嘩はダメだよ!大会、出られなくなっちゃう!」


「今のは正当防衛だっつの。心配すんな、手は出さねぇよ。オレ、スポーツマンだから」

賢悟は起き上がろうとする男の頭を飛び越えた。

「ということで、奪取する……!」

ジャンプをしながらそう言うと、着地するなり温彩に向かって走り出た。


「おい」

さっきまでニヤニヤして傍観していた晃が冷たい声を放った。

「調子にのりすぎだぞ……」

晃は後ろのポケットから瞬時にナイフを取り出すと、すかさず刃を立てた。

パチンという音と共にチラッと光る刃先。それを温彩の首に絡めた。

「きゃ……!」

晃は脅しをかけるように、温彩の肩を乱暴に揺らして見せた。


「……!」

賢悟は思わず立ち止まった。

間を取ると拳を握り締める……とことん虫唾の走るヤツだ。


「さてさて?じゃあキミの言う‘スポーツマンシップ’とやらを見せてもらおうか?」

そう言うと晃は、グラグラと踊るように温彩を揺すった。


「お前……そんな真似までして何でそいつにこだわんだ?あんたらがどこで何やろうと勝手だが、健全な高校生巻き込んでんじゃねえよ」

「人聞き悪いねぇ。一体何に巻き込むって?ん?あつさ姫とボクは家族なんだよん?」

「何が家族だ」

「ククク……」


下手に動けなくなった賢悟の体を金髪男が押さえた。

「スポーツマンは辛いねェ?」

「くそっ……」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ