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畏怖と正義
魔王を討伐した勇者は国賓として宮廷に迎えられた。
宴は夜を越えて朝まで続き、勇者には盛大な褒美を取らせることを国王は民に告げた。
「勇者よ、お主に褒美を取らせよう。何でも欲しい物を言うがよい」
王の言葉に、満身創痍の勇者は
「ゆっくりと休める、私だけの小さな土地を下さい。そこに家を建て、静かに暮らしたいのです」
「そうか、殊勝な心がけだな。よろしい。では褒美を取らせよう」
そして勇者は王が与えた土地へと旅立った。
だが王は、強い力を手にいれた勇者を恐れ始めていた。
「強すぎる力は世界を滅ぼしかねん。あの者が魔王との闘いで体力を消耗指定している今が好機だ。殺めよ」
「御意」
しかし勇者は王の心を読んでいた。そして自らが追われる身になることを理解していた。
勇者は人々が寝静まる深夜にこっそり城を抜け出し、王の使用するゴブレットに細工をして、行くあてのない、終わりの無い旅にでた。
後日、国王が毒殺されたというニュースが紙面を賑わわした。