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リリーとルル


俺は今神殿をでて商人ギルドへ向かおうとしている。

しているのだが...


「商人ギルド何処にあるのか聞き忘れてた...」


聞いていないものは仕方がないのでその辺の誰かに聞くことにしよう。

誰か話しやすそうな人は居ないだろうかと周りを見渡すと、噴水のふちに座っている10歳くらいの男の子と女の子が目に入った。


「ねぇね、君たち商人ギルドの場所知らないかな?道に迷っちゃって...」


女の子がキョトンとしてから急に手を出した。


「教えて欲しいなら銅貨2枚ちょーだい!」


「ダメだよリリー...道聞いてるだけだよ?」


男の子はおどおどしながら女の子に言うが、女の子は聞く気はない様だ。


「あのねぇルル!お金は取れる時に取っといた方がいいのよ!私たち明日の食事にも困る身なのよ?ちゃんと稼げる時に稼がないと!」


しっかりした女の子だ、その意見はもっともだ。

だが俺は今金を持っていない。この子達は孤児というやつなのだろうか?それにしては身なりはきちっとしているように思える。


「ねぇ、君たち親は居ないのかい?」


「もう居ないわ!教会に預けられて以来迎えにきてくれないもの!」


ほうほうつまり保護施設的なものがあってそこで暮らしているから身なりがマシなのか、でもなぜ明日の食事にも困る身なのだろうか?教会では食事を出してもらえないのだろうか?謎が深まる...


「教会で食べ物は出してくれないの?」


「えぇ、出してはくれるけど1日パン2つだけよ。それも先に居た子達に奪われたりするから1日1つ食べれればラッキーな方なのよ!あいつら成人してるならさっさと出ていけばいいのに!!!」


女の子は急にプンプンと鬱憤を晴らす様にペラペラ喋りだす。相当ストレスが溜まっている様だ。

さっきからダンマリの男の子の方を見ると、黙って下を向いてポロポロと雫を垂らしていた。


「うん、大体事情がわかってきた。僕も助けてあげれるなら助けてあげたいけど...」


女の子がキラキラした目で見つめてくるので胸が痛む。


「今お金ないんだよね、一銭も。ごめんね」


「そぅ...お金が無い人から何かを取るつもりはないわ、話を聞いてくれてありがとう。商人ギルドまで案内すればいいのよね?ついてきて」


「お兄ちゃん...リリーのお話聞いてくれてありがとぅ」


あっやばい良心が泣いてる。俺の心が助けてあげたいって言ってる。よし。


「あのね、今はお金持ってないけど商人ギルドで今持ってる物を売ればお金が手に入る予定だからさ今日の夕飯一緒に食べる?」


「え!いいの!やたー!お兄ちゃん大好き!」


「えっと、お兄ちゃん...ありがとぅ!」


女の子はスキップしながら回っている、そんな姿を見ながらニコニコしている男の子がなんとも微笑ましい。

俺は比較的子供は好きな方だ、自分も昔孤児で他の子達の面倒を見ていたからだろう。たぶんそんな事もあったからこの子達に自分を重ねているのだ。


「えっと...それで商人ギルドは何処かな?」


「こっちよ!」


「まってぇリリー、ゆっくり行こうよぉ」


2人を微笑ましく思いながら後を追った。





〈side: リルベリー〉



「ルル、今日もパン取られちゃったの?」


「ぅん、ごめんリリー...」


ルーベルは今にも泣きそうな顔で頭を垂れる。


「ルルは悪くないでしょ!謝らないの!ほら、私の半分あげるから元気出して」


「うぅん、それはリリーのだから自分で食べて?」


優しく微笑む顔がリルベリーの胸を締め付けた。


なんでご飯がお腹いっぱい食べられないんだろう、なんでルルがこんなに苦しそうなのに何もしてあげられないんだろう。

お母様は私達だけ逃したけど、私も一緒に死ねば良かったかもしれない。


そんな自己嫌悪に浸りながら2人で噴水広場に脚を揃える。


お昼になると、屋台のおじさんが冷めてだいぶ時間が経った串肉をくれる。

行くところも無いし孤児院に居ても居心地が悪いだけなので、噴水のふちに座っていつものほほぉんと待ちながら道案内や手伝いで日銭を稼いでいる。


今日もいつものようにぼーっと広場を眺めていると1人の通行人に話しかけられた。


「ねぇね、君たち商人ギルドの場所知らないかな?道に迷っちゃって...」


ぼーっとしていたので反応が送れた。これは日銭稼ぎのチャンスだ!


「教えて欲しいなら銅貨2枚ちょーだい!」


少し、割増したけどこの街の人ではなさそうだから大丈夫だろう。貰えたらラッキーくらいに考えよう。


「ダメだよリリー...道聞いてるだけだよ?」


「あのねぇルル!お金は取れる時に取っといた方がいいのよ!私たち明日の食事にも困る身なのよ?ちゃんと稼げる時に稼がないと!」


〔ちょっ要らないこと言わないでよルル、もう〕


〔だって...騙しちゃダメだょリリー〕


〔騙してない!少し割増しただけよ、今日は2人で普通のご飯が食べたいの!わかったら念話してこない!〕


〔ぁ、リリ〜〕


「ねぇ、君たち親は居ないのかい?」


「もう居ないわ!教会に預けられて以来迎えにきてくれないもの!」


孤児なんていくらでもいるのに、何でそんなこと聞くの?

聞かなくてもこのペンダントを見ればわかるのに、この人この国の人じゃ無いのかな...

一瞬イラっとしたけどすぐ冷静に考えた。


「教会で食べ物は出してくれないの?」


「えぇ、出してはくれるけど1日パン2つだけよ。それも先に居た子達に奪われたりするから1日1つ食べれればラッキーな方なのよ!あいつら成人してるならさっさと出ていけばいいのに!!!」


気付けば先程まで考えていた事は全て忘れて日頃の恨み辛みをどんどん垂れ流していた。斜め後ろでルルが泣いている。

ああ、やってしまった。いつもはこんな事言わないのに。お兄さんもドン引きだろう、と顔を見ると意外な事に真剣に聴いてくれているようだった。


「うん、大体事情がわかってきた。僕も助けてあげれるなら助けてあげたいけど...」


うーん、とお兄さんは言いにくそうに淀んだ。


「今お金ないんだよね、一銭も。ごめんね」


少し残念な気がした。こんなに真剣に聴いてくれたのだから少しはお金を恵んでくれるかなと若干の期待を胸に抱いていたのでちょっぴり気が沈んだ。

でもお金が無いならくれようもない。無い人から強引に取るのはダメだと自分でもわかる。


「そぅ...お金が無い人から何かを取るつもりはないわ、話を聞いてくれてありがとう。商人ギルドまで案内すればいいのよね?ついてきて」


「お兄ちゃん...リリーのお話聞いてくれてありがとぅ」


お兄さんは少しバツが悪そうな顔をしてから、ハッと思い出したかのように顔色が良くなった。


「あのね、今はお金持ってないけど商人ギルドで今持ってる物を売ればお金が手に入る予定だからさ今日の夕飯一緒に食べる?」


自分でも驚くほど気分が上がったのがわかった。

隣のルルも花が咲いたように嬉しそうだ。


「え!いいの!やたー!お兄ちゃん大好き!」


「えっと、お兄ちゃん...ありがとぅ!」


嬉しくてちょっとスキップしてしまった、恥ずかしい...


「えっと...それで商人ギルドは何処かな?」


「こっちよ!」


「まってリリー、ゆっくり行こうよぉ」


勢いでスキップしながら道案内を始めたのでルルに怒られてしまった、今日はなんだか調子がおかしい。

でもまぁいっかと思考を放り投げた。


「ねぇ、君たちの名前はリリーとルルって名前でいいのかな?」


「えぇ、リリーであってる。覚えやすいでしょ?」


モジモジしながらルルも口を開いた。


「ルルはルルだよ。リリーが考えてくれたの。なんかお揃いっぽくて気に入ってるんだ」


「そうなんだ、じゃー僕もリリーとルルって呼んでいいかな?」


「「うん!」」


そういえばまだお兄さんの名前を聞いていない。


「お兄ちゃんの名前は?」


「ん?僕はビャクヤって言うんだ。僕の住んでたところの文字で白い夜って書いて白夜」


この国の貴族は異国の名前を嫌う風習がある、素敵な名前だけどこの国では使わない方がいい。


「そっかぁ、ならここじゃ言いにくいからルアお兄ちゃんって呼んでもいい?白い夜ってなんだかお月様みたい。この国の古い言葉でルア、月」


「ぁ...えっと、ルルはお兄ちゃんって呼ぶね。あとね、リリーが名前をつける人はみんな魔法がかかったみたいに好かれやすくなるんだぁ、ふふっ」


「ルアか、いいね。ありがとう」


気に入ってもらえてホッとした。初対面の人にいきなり名前を付けるのもどうかと思ったけど優しい人でよかった。ルルも珍しく懐いてるみたいだしこの人はいい人なんだろう。


「あ、そこの右側の大きい看板が付いた白っぽい建物が商人ギルドよ!」





〈side: ダーラ(おじさん)〉


「よう、クソジジィ。まだ生きてたか」


「なーにがまだ生きてたかだ、孫が結婚するまで死ぬもんか」


憎まれ口を垂れたがこれでもこのジジィは商人ギルドのギルドマスターで聡い人である。長い間付き合いがあり親しいので許される挨拶だ。


「そうか、じゃーまだ死にそうに無いな。ジジィの孫はまだ6歳だったか?結婚するにも少なく見積もってあと10年か」


「ワシの孫は可愛いからすぐにでも相手は見つかるさ」


「あーあー、もういぃ。このまま続けると孫バカの話が終わりそうに無い」


ムッとしながら反論しようとしたギルドマスターことドルゼータはダーラの顔を見て目を細めた。


「お前さん、何か企んでるな...?いい儲け話しでも持ちかけられたか?それとも新しい事業でも始めるのか?」


「いや、金のなる木の苗を持ってるが適切な育て方を知らない。でも今は知らないだけで何もしなくても手探りで勝手に育てそうないい目の奴と縁が出来た」


「ほぅ、お前さんがそんな事言うとは珍しいな」


「これから楽しかなりそうなんだ。今日このあと商品を売りに来る予定になってるが大丈夫か?」


「あぁ、勿論」


2人でニヤニヤしながら期待を膨らませた。




時間空いちゃったけど許してクレメンス。

そのうちこの回の挿絵?キャラデザも貼っつける予定だお。

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