ギルドを脅す勇者
「いやぁ、こっちの酒も
結構イケますね、兄貴」
ギルドに併設されている酒場で
異世界の酒を堪能する
勇者石動とサブ。
酒が飲めない下戸のマサは
本題である話を続けた。
「ここのギルドですが……」
二人は酒を飲んでいるが、
これは立派な
これから先を考えた
戦略会議でもある。
「冒険者の職業人組合と言うよりは、
冒険者とクエストの依頼者を
マッチングする
サービスを提供している
仲介業者のようなものですね
冒険者がギルドに登録するのにも
それなりの金が必要となりますし
クエストの依頼者からも
クエスト報酬の三十パーセントを
ギルドの取り分として
取っているようです」
まだ来て間もない勇者一行、
マサはギルドについて
調べたことを報告していたのだ。
「かぁっ、
両方から金取るとは、
ギルドっちゅうんはボロ儲けやな」
サブは頭は悪いが、
金に対しての嗅覚は鋭い。
「さらには、
冒険者が情報交換を兼ねて、
この酒場を利用する飲食代、
それを考えると中々の利益になりますね」
「ほぉ、随分と
いい仕組みじゃねえか」
勇者石動は悪い顔をして
何かを企んでいる。
「人間社会であれば、
独占禁止法に
引っかかるようなやり方ですよ、
この世界ならではですね」
ギルドを職業人組合と捉えずに
営利目的団体と捉えるならば
確かにそういうことになる。
「マサ、このギルドっちゅうんを
うちの傘下に出来んかのぉ?」
とんでもないことを
さらっと言っている勇者石動。
「そうですね、
ここを傘下に出来れば、
うちの資金源もかなり楽になります」
マサも別段驚いている様子もないので、
これがいつもの彼等の
やり方であるのだろう。
-
ちょうどその時
タイミングよく
酒場に居た冒険者同士の
喧嘩騒ぎが起こる。
こういうところを
この人達は決して見逃さない、
飛んで火に入る夏の虫、
彼等に口実を与えたようなもの。
「サブ、ちょっと行って、
話つけて来いや」
サブは荒くれ者の
それなりに屈強な
冒険者二人を
背後から酒瓶で殴った。
ガラス片が飛び散り
冒険者の頭からは血が流れる。
「テメエら、
兄貴が酒飲んどるのに、
何してくれてんじゃ、ごりゃぁ」
不意打ちを食らった
冒険者二人は
サブに向かって来たが、
それを一瞬でのしてしまう、
頭は悪いが腕っ節は強いサブ。
倒れる冒険者二人の元に
やって来た勇者石動は
詫びを入れろと言い出した。
「おぅ、お前等、
けじめつけろ、
今すぐここで、指つめろ」
「兄貴、こいつら
堅気じゃ
ないんですかい?」
「馬鹿野郎、武器持って
命のやりとりしてるような奴等が、
堅気なわきゃねえだろ
それぐらいの覚悟が無くて
どうすんだよ?」
「ここにはヒーリングとか、
そんなのがあんだろ?
それで後で治しゃいいんだよ
要はお前等の詫びの姿勢を
覚悟を見せろってことだからよ」
なにも勇者石動も
本気で指をつめさせたい訳ではない。
今回も勇者石動の本命は
ここではない。
彼の狙いはこの先にある。
-
案の定、騒ぎを大きくすると
ギルドの受付嬢がやって来た。
「よぉ、ねえちゃん、
せっかくの酒が
まずくなっちまったぜ
上の人間、呼んで来い
勇者が呼んでるって、
言ってな
迷惑料払って貰おうじゃねえか」
受付嬢を脅し、
ここのギルドの最高責任者を
連れて来させる勇者。




