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死神VS悪魔

薄暗がりのライブスペースに

蝋燭の火だけが多数灯り、

この世界で聞いたことがないような

重低音のリズムと

高音のメロディが流れる、

集まった人々の心拍数を上げて行く。


なんだか分からないが、

刺激的な体験に高揚する人間達。


そこに現れる髑髏の死神が

サウンドに合わせシャウトし

観衆達を挑発して行く。


やがて人々も手を天に突き上げ、

一緒になって体を揺らし、

死神を真似て叫びはじめる。


その様はまるで

怪しい宗教のようであったが、

よく考えると

怪しい宗教が正解なので、

特に問題はなかった。


-


「いやぁ、

ごっつ緊張しましたわ、

勇者はん、

あれでよかったんでしょうか?」


ステージが終わった死神は

タオルで汗を拭う。


「いやぁ、

よかった、よかった、

超盛り上がってたじゃないか」


すっかりプロデューサー気取りの勇者。


サバトと言う名の

ライブを開催するにあたり、

勇者は機材を人間世界から盗んで来て

サウンドは打ち込みで再現していた。


電気に関しては、

自家発電機をやはり

人間世界から持ち込み、

死神自身に自転車を漕がせて

蓄電させていたものだ。



最初こそライブの客入りも

今一つであったが、

回を重ねるごとに

熱心なファンが増えて、

次第に噂が噂を呼び、

話題になって行く。


ライブのことを

サバトと呼んだのも

分かり易く厨二心を

くすぐったようだ。


悪魔や魔物の集まり、

魔宴であるサバトを

悪魔が不在で開催、

しかも死神が主催しているという

何ともおかしなことになっていたが。


しかしこれが刺激的だと

この異世界の十代若者の間に流行、

大人達はこれを批判したが

子供達は親に隠れて

死神主催のサバト(ライブ)に通っていた。


「死神なんかを信仰して、

サバトに行くんなら、

もうお前なんか勘当だって

親に言われちまってよ、

こうやって隠れて

サバトに行くしかねぇんだよ」


親に内緒でデスメタルに興じ

サバト(ライブ)に通う若者達は

隠れデスシタンと呼ばれ

社会問題にまで発展する。


そして、ここで本家である悪魔達が

死神のサバトに文句を言って来るのだった。



「てめぇ、神の分際で

勝手にサバトの名を

使ってんじゃねぇぞっ!」


突然死神のライブ会場に

乱入して来る悪魔軍団、

観衆は熱狂的に盛り上がり

興行としてはむしろ大成功であったが、

そんな悠長なことを言っていて

いいのかという気はする。


意外にありそうでなかった

死神VS悪魔という夢の対決の実現。


一神教における神の

アンチカウンターとしての

意味合いが強い悪魔と

絶対に一神教の世界観では

存在し得ない死神、

お互いの背景からすれば

相まみえることが少ないのは

当然なのか。


一神教の神からすれば

どちらも邪道という事だけは

共通しているのだが。



死神と悪魔、

両者が一触即発の雰囲気の中、

勇者はステージの中央に飛び出し

力強く叫んだ。


「セッションだっ! コラボだっ!」


勇者の声に

大観衆のボルテージは

最高潮に達していたが、

セッションもコラボも

何のことだが知る者は誰もいない。


まぁまぁみんな

勢いで誤魔化されている。


勇者の指示に従い、

死神と悪魔は交互に

音楽に合わせて

マイクで互いを罵り合い叫ぶが、

もはやそれはメタルではなく

ラップではないのだろうか。


-


盛り上がって終了したライブ、

その楽屋では死神と悪魔が

互いに謝罪し合っていた。


「いやぁ、すいません、

突然乱入なんかしちゃって、

一応形式上文句言っておかないと、

一神教の世界観の神が五月蝿くて」


「いやぁ、こちらこそ、

ホンマすんませんでした、

一神教の世界観の方々に

ご迷惑を掛けたんじゃないかと

ヒヤヒヤしましたわ」


「盛り上がってたんでつい、

『お前なんか神と認めねぇからな』

と挑発してしまったんですが、

多神教の神々を否定するような発言で

大変申し訳ない……


結果的に

一神教の神アゲになってしまったので

悪魔としてはそこも後悔してるんです……」



楽屋での死神と悪魔の謝罪合戦を

ずっと見ている勇者。


『こいつら、

一神教と多神教って、

めっちゃ気ぃ遣いあってんだな』


今回のトラブル、

その原因の張本人である

不遜な勇者からの謝罪は

当然のように一切無かった。






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