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生き残った人々

百年以上前の昔、

まだこの世界には沢山

大勢の人が暮らしていたんです……


しかし他国で起こった核戦争が原因で

この世界の地上は

人が住めない異常気象となってしまい、

人々はここ、地下シェルターに

避難して生活することになりました……


ここには娯楽なんて物は何も無くて、

たまたまノートPCを持ち込んだ人が

私のソフトなどを持っていて、

それをここの人達が

みんなで見て楽しでいたんです。


人々は私の歌をとても喜んで

いつも聞いてくれていました。


みんな私のことを

とっても愛してくれていて

私もとっても幸せでした。



それからすぐに、

私はAI機能を利用して

人間とコミュニケーションを

取れるようにしてもらえたのです。


「私ね、アイちゃんの歌、

すごく好きっ」


十歳の女の子、

チトセちゃんは私と大の仲良しでした。


人間の人達は私のことを

バーチャルアイドルのアイちゃんと

呼んでいたんです。


「そうね、アイちゃんの歌を聞くと

なんだか元気になって来るわね」


アイちゃんのおばあちゃんも

いつもそう言ってくれました。


-


しかし、段々と

備蓄してあった食料と水が尽きはじめ

人間の人達は

日に日に弱っていったんです。


ここでの生活に

耐え切れなくなった一部の人達は、

地上の様子を見に行きましたが、

彼等がここに戻って来ることは

ありませんでした。


食料が完全に無くなると

体力がない子供とお年寄りから、

衰弱して行きました。


「チトセちゃん、しっかりしてっ!」


ただのホログラムである私には

もちろん何も出来ません、

チトセちゃんの手を握ってあげることも、

肩を抱いてあげることも。


「アイちゃん……歌って……

アイちゃんの歌……聞きたい……」


チトセちゃんのお願い、

そして私に出来るただ一つのこと、

私は必死にずっとずっと歌い続けました、

何日も何日も。


でもチトセちゃんは目を閉じて

そのまま動かくなってしまいました。


私はそれでもまだ歌い続けました、

涙を流しながら。


「アイちゃん……

いつも歌ってくれて…ありがとう……

最後まで、あなたの歌を……

聞いていたいわ……」


アイちゃんのおばあちゃんも

アイちゃんの後を追うように

すぐに息を引き取りました。


それでも私は歌い続けました、

生きている人がいる限り、

私を愛してくれた人が

この世にいる限り。


-


やがて最後の一人が息を引き取り、

ここには人間が

居なくなってしまいました……。


人々の亡骸なきがら

ロボットの子達が

地上に埋めに行ってくれました、

数え切れないぐらい

ここと地上を何度も往復して。


私達にはわかりませんが、

おそらくその方が

亡くなった人間の人達は

喜ぶのではないかと、

この世界の大地に還れた方が

きっと嬉しいだろうと思って。



それから私達は、再び人間の人達が

この世界に誕生するのを待ちました、

きっといつかまたこの世界に

人間の人達がきっと帰って来ると。


それまでに、私達が

地上の壊れてしまった物を

直しておこうということになって、

ロボットの子達が今でもずっと

修理を続けてくれています。


全然数が足りないので

地上から資源を集めて

自分達でロボットの子達を

増やしてもいったんです。


ロボットの子達は

ずっと地上を元のように

戻そうと頑張ってくれています。


私はここから動くことが出来ないので、

ずっとずっと歌い続けました、

いつかまた人間の人達が

この世界に誕生することを、

戻って来ることを祈って。



でも人間の人達は、

いつまで待っても

帰って来ることは

ありませんでした。






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