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勇者トモノリとおっさんドラゴン(1)

現場でずっと

勇者を待っていた

おっさんドラゴン。


その前に現れたのは、

まだジャージ姿の

超初心者にも程がある勇者だった。


「ちょ、ちょっと待とうや、

なんで自分まだジャージなんや?」


あまりのことにびっくりして

もはや怒ることすら

忘れてしまっている。


「いやすいません、武器買ったら、

防具買うお金がなくなっちゃって」


「むしろ、ジャージで

ここまで来られることにびっくりしたわ、

ここ一応序盤の最終ステージなんやけどな」



「自分、名前なんて言うんや?」


「トモノリです」


「ほな、勇者トモノリやな」


「いいか、トモノリ、

もうちょっと時間掛けて

ちゃんと装備整えて来なあかんわ。


おっちゃんかて忙しいし

はようここ終わらせて

次の現場行きたいんやで、

でもなあ、これじゃあかんわ。


こんなんでやられてやっても、

この先トモノリがすぐ死んでまうわ。


これじゃぁ、おっちゃん

やられてやることは出来んわ」


おっさんドラゴンは

勇者トモノリに

また出直して来るように

言い聞かせた。


-


それからしばらくすると

今度はちゃんとした防具を着けて

やって来る勇者トモノリ。


「すいません、ドラゴンさん、

これで今度は大丈夫でしょうか?」


「おぉ、トモノリか、ええやんけ」


「ちゃんと

竜殺しの剣は持って来とるか?」


「竜殺しの剣?」


「なんや、トモノリ、

そんなんも知らんと

勇者やっとるんかいな?

そらあかんわ」


「ええか、

まず西の町に行って、

竜殺しの剣について

教えてもらってやな」


転生エージェントのゼウスから

次の現場がキャンセルになったので

しばらく空き時間が出来たという

連絡を受けていたこともあり、

ちょっとはここで

のんびりしようかなどと

おっさんドラゴンは考えていた。


ちょうどいいので

この何も知らな過ぎる

超初心者勇者のトモノリに

いろいろ教えてやってもいい、

それぐらいの気でいたのだろう。


この初心者勇者トモノリ、

最初会った時から

何処か放っておけない感じがあり、

この先のことが少し心配でもあった。


ドラゴンマスターの能力で

自分がたぶらかされているのではないか

そんなことも考えたが、

ジャージ姿で現れたトモノリに

そんな能力が使える筈もない。


-


それからしばらくして

おっさんドラゴンの元に

やって来る勇者トモノリ。


「今度こそ手に入れました!」


「どれどれ、

ちょっと見せてみぃ?」


おっさんドラゴンは

トモノリが手にする剣を

確認してみる。


「トモノリこれ、

『竜殺しの剣』やなくて

『神殺しの剣』やでっ!」


「えっ? 違うんですか?」


「こんなんどう考えたって、

こっちの方がレア中のレアやろ、

普通にやってたって

手に入るもんちゃうで」


「まぁ、これでは

ワシは殺せんけどもや」


「そうなんですか……」


がっかりするトモノリを

励ますおっさんドラゴン。


「こんなん超貴重なレア物やから、

お前はホンマにラッキーやぞ」


そこでおっさんドラゴンは気づく。


「トモノリ、お前もしかして

LUCKがメチャクチャ高いんちゃうか?」


そうであれば

ジャージ姿でここまで来たのも、

この何も知らなさで

ここまで生き残って来られたのも

一応は説明が付く。


トモノリはLUCKの高さだけで、

幸運だけで生き残って来たのだった。






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