表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/29

第5話 逃げられぬ恐怖 中編

申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。

そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。

「危ないですから離れてください!」

 警察官さんが野次馬に向かって大きな声で言っているのを、私は呆然と眺めていた。

 てきぱきと公園の出入口にロープが引っ張られていく。

 さっき倒れていたお姉さんが、救急隊員に担架で運ばれて行くのを見て、すごい不安だった。

「通報してくれたのはお嬢ちゃんかな?」

 とやってきたのはこの間の三木松刑事さんだった。

 私はようやく知ってる人に出会えて、涙が止まらなくなった。

「え?どしたの?」

 刑事さんはそんな私を見て、おろおろと狼狽えていた。私もそれが分かっているのだけれど、弾みがついてしまって泣くのを止めることが出来なかった。

「何小学生を泣かせてるんですか?」

 と現れたのはマリちゃんだった。

 警察の人に事情を話して、中に入れてもらったんだって。

「刑事さんに呼ばれたってことにしときましたから」

「そいつぁやっかいなことを・・・」刑事さんは額に手を当てて天を仰いだ。

 私は刑事さんに構わず、マリちゃんに抱き付いてしまった。

 マリちゃんはそんな私の肩をぽんぽんと叩いて宥めてくれた。


「もちろん犯人を追いかけてたんだよ」

 どこに行ったのかマリちゃんに確認すると、そう返事が返ってきた。

「な、犯人を見たのかい?」

 刑事さんと、その近くにいた警官さんが数名、目を丸くしてマリちゃんを見た。

 マリちゃんは、いつものように動じることなく、一呼吸を置くと、

「見てはいないよ。ただ、方角はハッキリしていたから追いかけただけ」

「方角?」

「そう、この公園は交差点の北西に位置するよね?私たちは南の西側の歩道を歩いて北の方角へ向かって歩いていたの。そして交差点を渡ったところで、悲鳴を聞いて、その場に留まった。その間、公園からは誰も出てこなかった。公園はほぼ正方形で、南側と東側が道路に接していて、北と西は隣の建物の敷地と接しているから、1階分の高さは優にある高い塀で囲ってあるから、逃げれないこともないけど、現実的じゃない」

「そうか」刑事さんは手の平を打つ。「君たちが公園から誰か出てくることを見ていないなら、当然東側、しかも北方向に向かって犯人は逃げている可能性が高いんだな」

 刑事さんは目を爛々とさせた。

 マリちゃんはこくりと頷き、

「片側二車線のこの道路を、更に朝の通勤時間帯に横断歩道でも使わず駆け抜けていく勇気があるなら話は変わって来るけどね。それならそれで目撃情報を得ることも出来るだろうし」

 ま、それくらいは当然だけどね、とマリちゃんは言っていた。えー、私そんなこと想像もしなかった・・・みんなはこれくらい簡単に想像できたのかな?

「で、犯人は今どこにいるんだ?」

 刑事さんは鼻息荒くそう尋ねた。が、マリちゃんは首を横に振る。

「いや、だから言ったじゃん。見てないって。それに捕まえれるわけないでしょ。小学生の女の子が、自分より大きい大人の犯人を捕まることなんてできるわけないじゃん」

 なるほど。というか、確かにその通りだ。私だったら絶対できない。

「そりゃそうか」と少し刑事さんは残念そうだったが、「いや、でも犯人が逃げた方角は粗方分かったようなもんだ。おい牧中、さっそく検問を準備しろ!それと、不審な人物を見かけていないか聞き込みに当たれ」

 刑事さんは隣にいた警官さんに指示を出していた。

「二人には、もう少しだけ話を聞くことになるけど大丈夫か?学校にはこっちから連絡しておくから」

「大丈夫です」とマリちゃんは頷く。「もう学校には連絡してますから」

「そうか?ま、一応入れさせておく」


 それから、私とマリちゃんは色々聞かれたけど、あまり捜査の役に立つとは思えなかった。だって肝心なことは、さっきマリちゃんがほぼ全部お話してたしね。

 他に大事そうなのは・・・、


・マリちゃんが中に飛び込んだ時には、被害者のお姉さんしか公園にいなかったことと、

・周囲には私たちの他に誰もいなかったこと、

・そして悲鳴だけが聴こえたこと、


 くらいだってマリちゃんが付け足していた。

 私たちは、それだけ話し終えると、また学校が終わったらお願いするかも、と言われて解放された。

 マリちゃんと私はてくてくと学校に向かって歩き出した。

 刑事さんにはパトカーで送っていこうか?と言われた。私はもちろんパトカーになんて乗ったことがないから、やった!って言いかけたんだけど、マリちゃんが、「あと歩いて10分ぐらいだし、変に目立つから遠慮します」と断っちゃった。

 マリちゃんは歩きながら、何も言わない。いや、普段から無口な方だけど、人差し指を唇に当ててる時は、何か考え事をしている時なのだ。

 きっとさっきの事件のことを考えているんだろう。あのお姉さんとは面識ないし、

「命に別状はないから意識が戻ったら犯人の名前を聞ける」って刑事さんも言ってたけど、マリちゃんは気になるのかな?

 あ。そうだ。

 私は写真を撮ったことを思い出し、マリちゃんに邪魔にならないようそっと声をかけてみる。

「写真て、あの現場の?」

 マリちゃんは考えるのを止めて訊き返してきた。

 うん、と私はスマホを取り出して見せた。

 マリちゃんは食い入るように覗いて来たので、スマホごと渡してあげた。

「ありがと」とマリちゃんは画面を見ながら言う。私はマリちゃんがそっけないとは微塵も思わない。

 むしろ、頭をぐるぐると働かせているマリちゃんが大好きなので、役に立てて嬉しいぐらいだ。


 写真はどんなものかというと、お姉さんの倒れている姿を写したもの。

 お姉さんの体型は、普通といった感じ。倒れているから分かんないけど、太ってはないし、背も低そうには見えない。高くもないけど。もちろん私、135センチよりは大きいよ。

 右肩にナイフが、これは果物ナイフだね。細い刃だけど、立派に凶器だ。肩に対して垂直に差し込まれたままになっている。うぅ・・・その周りにじんわりと赤黒い染みが広がっているのが気持ち悪い。

 公園の地面が薄茶色い色だから余計に目立って見える。

 お姉さんの服は、その血と、砂や周りがギザギザの葉っぱなんかが付いていて汚れている。

 刑事さんはその服と、散乱したお姉さんの鞄の中身を見て、犯人ともみ合ったんだろうって言ってた。

 化粧ポーチとかハンカチとか、手帳とか・・・私は感心しちゃったのだ。だって、大人の女って感じでかっこいいじゃん。

 もちろん、刑事さんとマリちゃんは別のこと話してた。

「やっぱりないね」マリちゃんはスマホを見ながら言う。何だろ?

「ほら、さっき刑事さんと言ってたでしょ?財布とスマホとかの携帯電話にキー類のこと」

刑事さんが言うに、「大人なら必ず持っているだろ」とのことだそうだ。マリちゃんは「必ずかは当てにならない」って言ってたけどね。確かにお家に忘れることもあるしね。

 でも、マリちゃんはそうは言いつつも、その時も、そして今もやはり難しそうに考えている。

 そんなマリちゃんに刑事さんは「駐車券があるから、車のキーは持っていてもおかしくないんだがな」と言っていた。マリちゃんにそのことを尋ねると、「それについては私も同じ考えだよ」だって。

 じゃぁ財布とかはやっぱり盗まれたのかな?私は、マリちゃんに訊ねた。

 するとマリちゃんは答えた。

「まぁ、そうだとは思う。でも、あれはどっちでもよかったんだと思うけどね」と言った。

 学校手前の用水路に架かる小さな橋までやって来ていた。


 マリちゃんが言う、あれとは何なのだろうか?

 私は一足先に教えてもらったけど、それがどっちでもよかったってどういうことだろ?

 一体盗んだ物から、マリちゃんは何を考え出したのだろうか?

隔週日曜日更新していきたいと思います!

回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ