第27話 あわてんぼうはサンタクロース
申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。
そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。
誰でも解ける、みすてりー、を目指してます。
答えはウマさんだね。
「な、なに?」
そして時間は7時!
「ど、どうしてそうなるのか……そこまで言えねぇと答えにはならねぇってもんでぇ」
動物たちの中で馬さんだけが干支の動物で、ねずみから数えて7番目だからね。干支って昔は時間を表すのにも使われてたんだよね?
「畜生!」
おじさんの悔しそうな顔は、私の心をすっきりさせた。
ちなみにおじさんは、「お嬢ちゃんにゃあ無理だろうけど、他にも解き方はあったんだぜ」とよく意味の分からない捨て台詞を吐いていた。
「次こそは必ず勝つからな!」
とどこかに泣きながら走って行った。
とにかく、私の大勝利! これで豪華な景品をプレゼントにできるね!
……あ、雨……。
どうなることかと思ったけど、当日は無事に晴れてよかった! でもすっごい寒い……これだけ太陽が輝いてるっていうのに。
もちろん、どしゃぶりの雨の中、クリスマスを迎えるよりはいいんだけどね?
ミキティのお家に着いたら、もうみんな集まっていた。あらら、最後になっちゃった。
なんだかんだでみんな楽しみにしてたのかな。
……うわ、みんな可愛い服着てる~。
「あ、きたきた!」
会長はゆったりとした赤いセーターに、緑のタイトめなチノパンで、色合いはクリスマス感があるけど、意外とボーイッシュな服装。
「やっと全員揃ったわね。じゃ、ママに言ってくる!」
ミキティはフリフリのエプロンドレスみたいな服だね。意外とファンシーな趣味だなぁ。お人形さんみたいとはまさにだね。
「まだ待ち合わせ時間より速いくらいだから大丈夫だよ」
さて、マリちゃんはというと、白いパーカーにデニムのホットパンツだ。黒いストッキングが目を引くね。でも、残念ながらクリスマス感はそれほど? あ、でも黄色いカチューシャ付けてる。
いやぁ、みんなはしゃいでるね~、と、親戚のおじさんみたいになってしまったけど、私が一番浮かれてるのかもね。
ミキティのママが作ってくれたケーキはなんと3段にも重なっていた!? こんなのウエディングケーキじゃないの!?
「ちょっとママが張り切り過ぎちゃって……」と顔をトナカイの鼻のように真っ赤にして言ったミキティの隣では、ミキティママが腰に手を当て、ドヤァと満足げな顔をしていた。あ、そういう所は意外と似てるかも。
もちろんケーキは嬉しいけど、こんなに食べられるかなぁ? でも、このミキティママの嬉しそうな顔、そして感想を期待して輝かせている目を見ちゃうと、「残す」「食べられない」という言葉を言うことはとてもじゃないけど出来ない……。
「わぁっ! すっごいですね!」
とママに負けじと目を輝かせたのは会長だった。「嬉しい♪ 私甘い物大好きなんです! これ全部食べてもいいんですか?」
本気!?
「もちろんよぉ!」と声を弾ませたのがママなのは言うまでもない。「他にもお料理作っちゃうんだから、是非食べてってね!」
まだ出てくるの!? という驚きを声にするのを私は必死で抑えた。
私たちもお菓子とか、ちょっとした料理を持ち込んでるんだけど、これは……頑張らないと!
まぁ、お昼ご飯食べてないし、きっと何とかなるよね!
意外と一時間後……。
料理はすっかり片付いてしまった。
「はぁ~、美味しかったぁ~」
と、とろけるような声を出したのはもちろん会長。私にマリちゃん、そして実の娘であるミキティでさえ、お葬式くらい静かな顔をしているのに。
「会長、いっぱい食べるんだね……」
マリちゃんが絞り出した言葉だった。
会長は、ケーキは一人で二段食べるし(その大きさは一般的なケーキのサイズ、5号と6号だからね!)、チキンとか、サラダとかパスタとか……とにかく食べてた。
「え? あ、あはは……」今更顔を赤くして、「な、なんかね、最近すごい食べちゃうのよ。成長期ってやつかな」
「聖奈……あんたそれだけ食べてたら太るわよ絶対」
ミキティがはっきり言う。いや、この言葉に悪気はないんだ。女の子同士としての忠告だよ。
「そうなのよねぇ。だから、ちょっと寒いけど外でバトミントンでもしよ?」
!? ま、待って……今動くと……。
それから、お腹が落ち着くまでたどたどしく会話をしたり、ボードゲームをしたり、ホントに寒い中バドミントンを楽しんだ。
そんな時である。
さすがに疲れたからお部屋に戻ろうという話になった。待ちに待ったプレゼント交換もあるしね。
「あ、でも、その前にちょっといい?」
とミキティが言い出したのだ。
「この先ちょっと行ったところにね、すごいお家があるのよ」
「なに? オバケでもでるの?」
「そんなわけないでしょ! だとしても冬にそんな話しないわよ」
相変わらず、マリちゃんはミキティをからかうのが好きみたいだね。少し羨ましい。
「イルミネーションよ! 毎年ね、12月になると、お家をLEDでキレイに飾るの」
あれすごいよね! 私の家の近所でもしてるところあるけど、つい見惚れちゃう。見つけると嬉しい気持ちでいっぱいになるよね。
「私も好きだな。つい写真撮ったりするのよね」
と会長も興味津々だ。
「私も色んな所で見てきたけど、あの家が一番凄いんだから。ちょっと行ってみない?」
ミキティが腕をくるりと半回転させて時計を見る。「今16時だから陽が暮れるには少し早いけど、いつもこの時間には点いてるし、着く頃には良い感じになってると思うから」
ということで、私たち4人はさっそく歩いて向かった。
意外と遠くて歩いて20分はかかったけど、お話しながらだったから、あっという間だったよ。
「あ、あの家よ。ここを登ったところなの」
山の斜面を利用してできた住宅街。坂の途中にある家のようだ。手前から5段目の家。ミキティが指さしてくれたので、それはハッキリと見えた。斜面が東向きになっているので、まだ夕日が沈んではいないけど十分暗い。
そのおかげで、確かにオレンジ色の光が見えている。
「すごい明るいわね。オレンジが綺麗……」と会長がうっとりする中、
「ん? あんな色だったかしら? たしか先週観た時は青と白の光が多かったんだけど……」
ねぇ、あれって煙? お庭で何か燃やしてるのかな?
「え、」
ホントだわ――とミキティが言い切る前に、マリちゃんが少しずつ足早となり、
「あ、ちょっと!」
と私たちが追いかけようとした時にはマリちゃんはもう走り出していた。
私たちがそのお家に辿り着いた時には、煙とそして光は納まっていた。
そしてそのお家の周りには大勢の人が囲んでいた。
ざわざわと色んな言葉が行き交う中、大人たちの緊迫した、怒声にも近い叫びが時々聞こえてくる。
「あれ? 長束君?」
そんな人混みの中で会長が長束君を見つけた。
「あ、君たち、こんな所で偶然だね」
「何があったの?」
と挨拶の時間も惜しいという感じで、マリちゃんが言った。
「あぁ、うん」長束君は少し驚きながらも話を始めた。
「実はこの家で火事というかボヤ騒ぎがあってね。今近所の人たちが消火してくれたところだよ」
お家の庭にいる大人たちはその手にバケツや消火器なんかを持っていた。
お家の壁や庭の芝、そしてお家の隣にくっつているカーポート下のコンクリートの地面などが黒く焦げていた。黒い灰が散乱していて、今も空中をふわりと舞っているものもあった。2本の消火器がその役目を終えて芝生の上に寝転がっている。今見えてる状況で分かることはこれくらい。
「幸い大火事にならずに済んだけどね、この家の人が倒れてて……」
「煙を吸ったのかしら?」
「多分ね。消火しようとして誤って煙を吸い込んだかもしれないって。もうじき――」
と長束君の説明を遮るように救急車のサイレンがやってくる。
近所の人たちもあわやお祭り騒ぎだ。救急車から『道を開けてください!』と怒られてやっと動き出すやら、自由に動くから中々救急車が落ち着かない。
私たちはすぐに端によってその様子を眺めていた。
やっと止まったと思えば、しびれを切らしたかのように救急隊員さんが飛び出してきた。
そして担架を担いだ二人がお庭に入っていき、説明を聞こうと消火活動をされていたであろう大人に話しかけ――
マリちゃん!?
「えぇ!? いつの間に?」
「あの子なにやってんのよ!?」
どこかからやってきたマリちゃんは救急隊員にかけより、何かを話している。最初は困惑している様子の隊員さんたちだったけど、マリちゃんが何かを熱心に語り掛け続けていると、次第に隊員さんたちはマリちゃんにしっかり姿勢を正し、何度か肯いた後、塀の傍に倒れていた女の人を担架に乗せて行ってしまった。
隊員さんたちと入れ替わりに私たちはお庭の中に入り、マリちゃんの許へ向かった。
どうしたの!? とか色々聞きたいけど、マリちゃんはすでに消火活動に当たっていた大柄な男性とお話していたので、ここはぐっと我慢する。
「……で、急いで家からバケツを持って来て燃えてた庭の芝に水をぶっかけたんだよ。そしたら小野さんの奥さんが倒れてたから声をかけても何も言わないから、慌ててつい引き摺っちゃったけど火から放して、救急車を呼んだんだよ。そうしてたら井上さんが来てくれて、一緒に消火してくれたってわけさ」
と、やっと話が途切れたのかと思ったら、隣にまた、今度は白髪交じりの痩せたおじさんがやってきていた。どうやらその井上さんみたい。
「私の家はこの通りの一つ下でね。何か騒がしいなと思って表に出て周囲を見渡していたら煙が出てるじゃないか。もしかしたらって思って消火器を持って来たのがよかったよ。永井さんに奥さんのことは任せて私は消化したってわけ。他には? あぁ、私と同じくらいに石本さんが来たね。町内会長の」
と指さしたのは近所の方とお話していた小太りのおばさんだった。
「――え? あぁ。ビックリしたよぉ。いやぁね、最初煙が見えたから。私の家、小野さんのお家の上になるんだけどさ、この町ではバーベキューやごみを燃やす行為は禁止されてるのさ。当然だろ? 煙は上に昇ってくるんだから。この住宅街では特に上の家の人たちが困るし。それで町内会長として注意に行こうと思ったらまさかの火事だったからビックリしたさね。煙は凄いは、灰は舞うわでもう大さわぎさ。とにかく叫んでみんなに注意を促したんだけど……逆効果みたいだったね。ガハハハ。え? 消火? もちろんしたよ。火の粉がいろんなところでくすぶってたからおばちゃんのカーディガンで叩いたり、どこかに燃え移ってないか点検もしたさ」
3人の話を聞き終えたマリちゃん。
「なるほどね」
と言いながら前髪を人差し指で払った。「これでさっき救急隊員さんに話したことが間違ってなかったと確信できた」
マリちゃんは、一体このお家のどこを調べていたのかな?
回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。
次回、最終回は2018年12月31日投稿です!




