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第21話 優勝のない運動会 8:46~9:14

申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。

そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。

誰でも解ける、みすてりー、を目指してます。

 マリちゃんと私は走り続けた。

 すれ違う他の学年、クラスの子たちに不思議そうに見られながら。それもそうだ。間もなく開会式が始まるってのに、私たちは逆走しているようなものなのだから。

「ちょっと! どこ行くのよ!」

 と偶然すれ違ったミキティにも言われたが、答えている暇はなかった。

 どうみても子供の悪戯のようなこの手紙。

 でももし、書いてることが本当なら、本当になるなら、放っておくわけにはいかな――、

 あだっ!

 急に立ち止まったマリちゃんにぶつかってしまった。

「ごめん、大丈夫?」

 う、うん。大丈夫……

 マリちゃんの後頭部がみぞおちに当たったから、見た目以上に痛かっただけ。とは言わないでおこう。

 ところでなんで急に立ち止まったり……。

「あった」

 私たちがたどり着いたのは3階の廊下一番奥。

 私たちの校舎は、各階の端に特別教室が設置されているのだ。特別教室ってのは図書室とか家庭科室とか、普通の教室じゃない教室のこと。って言わなくても分かるか。

 3階には、音楽室があった。

 ここに、みすたーえぬがいるの?

「特別な力って言葉から特別教室かなって思って。そしてその中二病の名前、特別教室の中で『N』が入ってるのは、音楽室くらいだったから。取り敢えず最初に向かってみたの」

 さすがマリちゃん!……でも、学校によっては色々違うのかもしれないけど、私たちの学校には少なくとも『N』がつく特別教室があるよね。保健室も『N』があるじゃん?

「『人の世より外れし存在』……口にするのも恥ずかしいその言葉から、先生や他の誰かが常にいる部屋は除外したの」

 そっか。今日は運動会だから、基本的には特別教室を使うことはないだろうけど、保健室は怪我をした生徒用に、いつも通りだもんね。保健の谷口先生がいるはず。

「どうやら正解だったみたい」

 マリちゃんが音楽室特有の、存在感のある分厚い扉を指さした。

 両開きの左右の扉を、まるでつなぐかのように、真ん中に封筒が貼られていた。

 マリちゃんがそれを剥がし取った。

 その時だった。

「あれ?」

 後ろから声をかけてきたのは、高木先生という、若い女の先生だった。

 去年私たちの学年を担当してくれた先生。生憎私たちのクラスは去年も次田先生だったし、隣でもなかったから合同授業とかでもお世話になったことないけど、遠足とかでお話したことあるから少しは面識ある。当時の印象は優しい先生。

 そしてそれは、今も変わらないだろう、穏やかな物腰と声だった。

「どうしたの? こんな所に……もう入場行進の始まる時間よ?」

 うわ、どうしよう。この手紙のこと、言った方がいいのかな?

 なんて、私が一人で頭の中で悩んでいると、マリちゃんは全く物おじせず、

「高木先生はこんな所で何をされているんですか?」

「へ? あぁ、私はね、今日のブラスバンドクラブの準備をね」

 ブラスバンドクラブは、私たちの小学校の生徒を中心に構成されているブラスバンドだ!

 ……私説明下手だね。

「課外活動の一つだね。会長も確か入ってる。運動会とか行事の時に演奏してくれるんだよね」

 そう、あれカッコいいよね!

「ふふふ、ありがとう」

 そうだった、高木先生はその顧問だったっけ。

「でも準備って、それこそ開会式の時に演奏してますよね?」

 そうだったね。もう今頃は外で準備してるよね。いつも私たちが入場門で整列してる時は、ブラスバンドの子たちが横で準備してるもん。

「忘れ物がないか確認しに来たのよ。私も自分の楽譜を取りに来ただけ」

 と先生が指さしたのは音楽室の手前にある、『音楽準備室』だ。ここは先生たちのお部屋だから生徒は入っちゃダメなんだよね。ちなみにその準備室と音楽室は一枚のドアで繋がってる。いつも授業が始まる時先生が出てきて少しびっくりするんだ。

「さ、早く行きましょう! あなたたち6年生だから最後尾だろうけど、もう今頃整列して確認してるはずよ。次田先生が心配してるわ」

 ……それはないと思う。


「ん? おぉ、お前らどこか行ってたのか?」

 ほらね。次田先生は案の定気にしてなかったし。……私たちのクラスのリーダーである浅野さんは睨んでたけど。

 なんとか整列には間に合った。けど、今更所定の位置には入り込めないので一番後ろに回されちゃった。 というのも、もう動き始めていたからである。

 運動場のトラックのさらに二周りほど離れた所に、境のロープが張られている。観覧する保護者達はそのロープの向こう側に場所をとるのだけど、すでにぐるりと保護者で埋め尽くされていた。自分の親を見つけるのなんて難しいくらい。

 わぁぁ……お母さんが見てたら、というか見てるよね絶対。あとで怒られるよぉ。何で後ろにいたの? 何してたのよ!って。

「でも、一番後ろならこの手紙も確認しやすい」

 行進が終わり、所定の位置に立つと、マリちゃんが小さく折りたたんでポッケに入れていた封筒をこっそりと広げた。

 ……そう言えば、マリちゃんのお母さんとかお父さんは来てるのかな?

 いつもお世話になってるんだし、今日会えたら挨拶しておかないと! 私って大人だなぁ。

 なんて言ってる場合じゃない。手紙を読まないと……。


『よくぞ私の居場所を見抜くことができたな』


 へっ! 当ったり前だよ!……まぁ私は付いて行っただけだけど。

 あれ? 今度はパソコンで打ったような字になってる。


『だが残念だったな。あまりにも到着が遅かったので一足先に退却させてもらったよ』


 えぇ!? そんなのずるい!


『健闘をたたえて、人質の命は奪わないでおこう。ただし、私を捉えることができなかった、その罰は受けてもらう』


 え!? 罰?


《只今より……》

 校内放送のスピーカーより、放送委員のアナウンスが聞こえてきた。

《第31回 時乃瀬小学校 運動会を開会いたします!》


              パン!

パン!

                           パン!

                           バン!


 空砲が秋の高い空に打ち上げられた。その音が消えるのを待たずして、ブラスバンドクラブの生徒たちがトランペットや太鼓などを派手に鳴らし始めた。

 わぁぁぁ……。

 ぱちぱちぱち……。

 保護者や来賓の人たちから拍手や歓声が沸き起こる。

 ……今、変な音が混ざってなかった?

「うん、私も聞こえた。みんなは気付いてないのかもしれないけど」

 開会式は何事もなかったかのように続く。選手宣誓をするために、会長がブラスバンドクラブの衣装のまま、朝礼台に駆け上っていた。

 私は、会長に心の中でちゃんと聴くことが出来なくてごめんと言いながら、手紙の続きへと目を向けた。

『さて、次に私がいる所を見つけ出せるかな?』

 まただし……もう。この犯人絶対許さないから!

『私は人の世より外れし闇の世界の住人。そう簡単に我を探し出そうと考える貴様たちはあさはかであると嘲笑を禁じ得ない』

「やぶり捨てようよ」

 ま、待ってマリちゃん。気持ちは分かるけど。

『私は一人、常夜の闇の中。どのような力が傍に来ようとも何物にも染まらぬ。眩い光に包まれようものなら陰に身を隠す。貴様たちは私が傍に居るにもかかわらず、存在には気付きもしない。これが笑わずにいられるか? クックック……精々必死になって探すがいい。ただし、いつまでも貴様たちと戯れているほど私も暇ではない。我の命を狙わんとする5人の哀れな勇者が旅立つ前までが猶予だ!ハッハッハァ!』


 うん、やぶり捨てよう。

隔週日曜日更新していきたいと思います!

回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。

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