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第十八話 閑話休題

申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。

そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。

誰でも解ける、みすてりー、を目指してます。

「真相に辿り着いたって……なによ今さら」

 ミキティは目を点にして言った。うぅん、ミキティだけじゃない。クラスのみんなが視線をマリちゃんに向けて、ゴクリと唾を飲んだ。

「今更じゃないよ」

 マリちゃんは当然、いつものように淡々としていた。「今まで分からなかったんだから」

「それはあんただけでしょ? もうみんなは犯人が根岸ってことはわかってるんだから」

 ミキティがむっとして言い返す。

「そっくりそのままお返しするよ」

「どういうこと?」

「根岸くんが犯人だって決めつけてるのはそっちで、本当の犯人を見逃すことになってるのに」

「ぐっ……いいわよ!」

 ミキティがどかりと椅子に座り直した。「そこまで言うなら示してもらおうじゃないのよ!」

 ミキティに促されるようにマリちゃんは立ち上がると、まず先生に例のゴーグルを借りた。

「このゴーグルがあったばかりに根岸くんが犯人だったってことは、このゴーグルが根岸くんの物じゃなかったら根岸くんは犯人じゃないってことだけどこれ以上調べるのは私たちじゃ難しいかもしれない」

 マリちゃんはミキティの方に歩き出した。その目的はさっき机の上に叩きつけられた貼り紙を手に取るためだった。

「でも、この貼り紙が貼られたロッカーが怪しいのは分かるよね」

「怪しい?」

「死角? たかが一つのロッカーを使用禁止にしてなにが変わるの。全員がそこを使う訳じゃないし」

 確かに、一人減ったところで他のみんながもし見えてるのなら意味はないけど。

「そ、そんなの知らないわよ。じゃあなんでそんなこと……」

 ミキティがふと表情を曇らせた。

 と思えば、口を震わせて蒼褪める。

「ま、まさか……う、嘘でしょ?」

「そう、」

 マリちゃんが小さく肯く。「ロッカーの中に入ってたんだと思うよ」

 マリちゃんの言葉が終わる頃、クラス中の女子が悲鳴を上げた。男子も騒めきだす。

 さすがの次田先生も「静かにしろ!」と声を上げたくらい、みんな喚き散らしていた。

 少しずつ落ち着き始めたのを見計らってミキティが訊き返す。

「……じゃぁなによ? 他にも変態がいたってわけ……!?」

「……さぁ?」

 マリちゃんはというと、少しとぼけたような間で、そう答えた。

「はぁ!? なによそれ!」

「犯人が変態かどうかは分からないけど、その中に忍び込んでいたんだろうね」

 マリちゃんはポケットから、昨日ゴミ捨て場からついてきた一本の糸を取り出した。

「なにそれ? い……と?」

 ミキティが目を凝らす。別にミキティの視力が悪いんじゃないよ。

 凄く細くて透明な糸だから簡単には見えないんだよね。

「この糸を根岸くんのゴーグルに付けて、外から引っ張ったんだと思う」

「はぁ?」

「扉の下のように、ロッカーにも隙間があるでしょ? そこを通した。出入口側の壁にある窓はいつも小さな隙間が開けてある。あの時も開いてたし。そして窓の外側すぐ下には靴棚がある。その後ろを通せば簡単には見つからないよ」

「そ、それはそうかもしれないけど」

 実際に私たちは気付いてなかったしね。

「ゴーグルに括り付けて、その糸を引っ張ってちゃんと外れる? そんなに上手くいくとは思えないわ」

「括り付けてたら、ね」

 マリちゃんがそう言って取り出したのは、私が最初に調査した時に拾った玉だった。

「何それ?」

「これは紙粘土を丸めた玉」

「玉? 何か穴が、すごい小さな穴が空いてるわね……ま、まるで、その糸が通るくらいの……」

 ミキティは自分で言ってて、何かに気付いたのだろう、言葉を話すのがぎこちなくなってる。

「ゴーグルのゴム部分の隙間に糸を通して、その先端に紙粘土の玉をつける。玉が引っかかってゴーグルは動いてプラスチックのスノコの下から出てくるし、靴棚の一番下の段の隙間に糸を通しておけばその隙間を通れなかったゴーグルが引っかかり、玉が堪えきれずに外れて、糸だけを回収できるってわけ」

 そういうことだったんだね! 私がマリちゃんに玉を見せた時、マリちゃんが凄い大事に取ってたけど、あの時にはもうわかってたのかな?

「ゴーグルをスノコの下に隠してたから最初に更衣室に来た時には見つからなかったんだと思う」

「ちょっと待ちなさいよ!」

 ミキティが慌てて止めに入る。「それが上手く行ったとして、どうやって侵入したわけ? 更衣室には鍵が掛ってたのよ?」

「鍵なんてかかってたの?」

「え?」

「授業が連続である時は鍵なんてかけてないんじゃない?」

 と言われて、ミキティが隣で座る浅野さんを見返す。

「じ、実は……ゴメン!」

 浅野さんが両手を合わせた。

「取りにはいったのよ? でもそこで次田先生にかけてないだろって言われたんだけど、みんな外で待ってくれてたし、言えなくて……鍵開けるフリしちゃったの……。一年ぶりのことで忘れちゃってて……」

「更衣室の鍵は開けられていたんだと思うよ。犯人が侵入している以上はね」

 実は私が聴き込みに行った最後の一人は、私たちの授業の前にプールだった5年B組の委員長。「次が6年生だから鍵はかけなくていい」って担任の先生に言われてたみたい。

「つまり、犯人は女子が更衣室に入る前に急いで教室を飛び出し、仕掛けを準備して、貼り紙を貼ったロッカーの中に待機。みんなが入ってくる頃合いを見て、ゴーグルを出しておく。後はハプニングが起きるのを楽しむだけ。出る時は簡単。みんながいなくなってから出て行けばいいんだから」

「そ、そうだとして!」

 ミキティは驚きが休まらないまま、

「一体誰が犯人なのよ!?」

 マリちゃんが、もう一度貼り紙を見せつける。

「左から右にかかれた文字が掠れてる。つまり犯人は左利きの可能性が高い。犯人が左利きで、なおかつこの糸、これは釣り糸だね、0.5号の細い糸。初心者がちょっと釣りするだけだとこの糸は手にしない。この情報から導き出されるのは……」

 クラスの視線が、マリちゃんから、ある男子に動いた。

「中原くん、あなたが犯人」




 結局、中原くんが犯人だった。中原くんはほんの出来心でやってしまったみたい。女子更衣室を覗くというより、根岸くんに嫌がらせをしたかったんだって。タイミング悪く根岸くんがしゃがみ込んだのがちらついて、本人が想像していたよりも大騒ぎになったとか。

 もっと言えば、釣りをしていた時にその悪戯を思いついて、試してみたかったって言ってた。「バカじゃない?」っていっぱい女子に言われてた。

 ゴーグルを買った生徒はいっぱいいたから参考にならなかったけど、紙粘土を朝一番で買いに来た中原くんのことは、購買のおばちゃんも覚えてたらしい。

 ちなみに石河くんも左利きだったけど、「書道を習ってる人は字を左じゃなく右で書くように習うこともあるから」ってマリちゃんは言ってた。実際にはどうなのかマリちゃんも分からないけど、実際石河くんは右手で字を書くし、普段は左利きだ。だから裁縫をしてても怪我をするのは針を持たない右手の方ばかりだって言ってた。

「ロッカーの中からは覗けない」ってことで中原くんは土下座をすることで許すことになった。

 だけど、中原くんがそれだけの準備をしようと思ったら、教室でのんびりなんて着替えてられないから、ロッカーの中で着替えたのか……それとも、みんなが出て行った後着替えたのか……分かりたくもない疑問だけは残った。

 マリちゃんにだけこっそり聞いたら、流石にロッカーの中は狭すぎるからって、マリちゃんが眉間に皺寄せてたのを覚えてる。その荷物はどこかに隠しておいて、一番に教室に帰るようにした。だからビラを根岸くんの机の中に隠すこともできたと思うとも言ってた。水泳バッグの中は確かに物を片付けるのにはいいかもね。ゴーグルは根岸くんの鞄の中から盗み出し、中原くんがそれを使っていたんだって。名前の部分を裏返すように使えば見えないから。で、自分のゴーグルに『根岸』って名前を書いておいたらしいよ。ホント変に計画性良くて呆れるよね。

 だから、ゴーグルに名前を書くことを今年は厳しくしたのも、更衣室の施錠をきちんとするようになったのも他のクラスは知らないだろうけど、中原くんのせいだというのは私たちのクラスはよく知っている。


 ともかく、1学期最後の事件は、ずいぶんと幼稚な話で終わってしまった。


 そして夏休みになった!

 私はマリちゃんといっぱい遊ぼうと思ってたんだけど、6年生の宿題って多すぎだよ!

 自由研究に読書感想文……今までだったら原稿用紙2枚でよかったのに、6年生になったからって四枚だよ!? それに自習学習とかもあるし。マリちゃんに相談しようかなって思ったけど……私とマリちゃんじゃ成績が違いすぎるから真似したりしたらすぐバレそう。

 でもなんとか一息ついてやっと遊べるようになったのは8月に入って、お盆のころになってから。

 丁度町内のお祭りがあるから、さっそく一緒に行ったの。

 金魚すくいしたり、かき氷食べたりして色々楽しかったけど、何より思い出に残ってるのはなぞなぞのお店!

 その場で制限時間内になぞなぞに答えたら景品がもらえるの。1等のクイズに答えたら今年はなんと、ニンテ●ドーswitch!

 私は欲しかったけど、当然景品が豪華になるにつれてクイズも難しくなるんだよね。

 去年も一回やってみたけど、全然わからなかったんだ。1等は大人の人が当てたらしいよ。

「あんたならできるんじゃない?」

 と一緒に来てたミキティがマリちゃんに言ったの。

「私別にあの景品欲しくないし」

 マリちゃんが言った。

「でも菱島さんが欲しそうだけど」ってミキティが意地悪で言ったんだけど(まぁホントに欲しかったんだけど、そんなに顔に出てたかな?)、そうしたらマリちゃんが「じゃあ一回だけ」って言って挑戦してくれたんだよ。私としてはもうそれだけで1等賞の気分だよ! ミキティもたまにはいいこと言うね!

「たまには余計よ!」


「――大丈夫かい?」

 お店のおじさんはニヤニヤしながら言った。「お嬢ちゃんたちにゃ難しいと思うけどねぇ」


『問題

 

  ヒントを頼りに「0123456789」 の数字の中から5つ選び

  そしてその中から仲間外れを選べ 

  

  ヒント  234272554255 』


 全然わかんない……。ミキティも眉間にたて皺をいっぱい作っている。マリちゃんが問題が書かれた紙を眺めていると、おじさんが、余裕からかマリちゃんにヒントをもう一つ出していた。

 そのせいでかはわからないけど、ぷぷぷ、マリちゃんは見事に解いたんだよ!

 どうやって解いたの!? 私とミキティは景品が手に入る喜びよりも答えが気になって仕方ないとマリちゃんに飛びついた。

 でもヒントを聴いても私たちには全然わからなかった。マリちゃんも、このヒントは私たちにはあんまりヒントにならないって言ってた。

 私たちだと解けないけど、誰かに見せたら解けたりするのかな?

隔週日曜日更新していきたいと思います!

回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。

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