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第十七話 変態観測-推理編②-

申し訳ありません。ミステリーと言っても全然本格的でも、すごいトリックがあるわけでもありません。

そういうのをご期待されている方は他の作家さんをお勧めしますので、どうぞブラウザバックしてくださいませ。

誰でも解ける、みすてりー、を目指してます。

ヒントが要らない方は、一番下までスクロールしないでくださいね☆

「それでは時間になりましたので、始めます」

 校舎にチャイムの音が響き渡ると同時に、会長が言った。

 6時間目の、本当なら国語の時間。私たちのクラスは授業が進んでいたこともあり、本来ならお楽しみ会のはずだったけど、今のクラスに、お友達と何かを楽しむなんて雰囲気はなく、また根岸くんの覗き事件の解決を望む声が多かったので、引き続き話し合い――いやもう、学級裁判と呼ぶべきかな――学級裁判が開かれた。

「真中さんたちは引き続き根岸くんが犯人だという意見で変わりないですか?」

 会長の問いかけに、ミキティはぷっと頬を膨らませながら頷いた。当然だ! とでも言いたげ。

「それから、」会長は私たちの方に視線を向ける。「菱島さんたちは根岸くんが犯人じゃないという意見のままでいいですね?」

 うん。と私は頷いた。マリちゃんは顎を小さく引いてみせた。

「では、どちらか意見のある方からどうぞ」

 会長が促すと、ミキティは早速立ち上がり、根岸くんを睨みつける。

「今日こそ終わらせるわよ! そして根岸、きちんと謝ってもらうからね」

 そこは小学生らしく、謝るだけでいいらしい。

 ミキティはにたりと口の端を吊り上げながら、

「今日は新しい証人にお話してもらうから」

 と言って、ミキティが指名したのは佐野くんだ。

 佐野くんは大人しい男子、という印象しかない……って言ったら佐野くんに失礼だけど。

 でも意外とスイミングに通ってるらしく、泳ぎが上手だったので、それこそこの前のプールの授業でみんな騒いでたよね。すっごい速かったし。あと趣味がカラオケだったかな。これにはクラスのみんなどよめいてたっけ。一度月曜日に学校に来た時、プロレスラーみたいな声になってたことあったし。

 佐野くんの証言はこうだ。

「あの日、プールサイドでストレッチをしていたら、校舎の方から根岸くんが一人でやってきたんです。別にそれだけなら気にならなかったんですけど。妙にソワソワしていたというか左右を確認しながら歩いてたので不思議だったんです」

 もう……なんでそんな不審な感じで歩いてるかなぁ!? 分かってるの? 自分が疑われてるのが!

 ……と言っても、その時はこんなことになるなんて思ってもないもんね。

 マリちゃんが早速挙手した。何か言いたいことがあるんだと思う。正直、私でもちょっとその証言だけだとどうなのかなって思うし。

「待って」

 とそのマリちゃんを遮ったのはミキティだ。

「誰も一人とは言ってないわ。あんたが反論してくるなんて予想済みよ」

 とミキティはすぐにもう一人証人を呼びつけた。

 それは中原くんだ。中原くんはよくも悪くも普通。年相応にやんちゃな所もあるけど、不良って感じでもない。授業はいつも真面目に受けてるしね。テニスをしてるらしくて、女子人気も悪くなかったはず。趣味は釣りだったかな。海に船でいったりするんだって。一度釣った魚に噛まれて試合が大変だったって左の指を見せてくれたことがあったなぁ。

 私もお父さんと何回か海に釣りに行ったことあるけど、だいたい途中で退屈になっちゃうんだよね。

「根岸がプールサイドの階段から降りてくるのを見たんだ。階段ですれ違って。気にはなったけどその時は早くプールに行きたいから気にしてなかったんだよ」

 わざわざ? 何のために……。

 そんな私の疑問を読んだかのように、根岸くんは「だから、ゴーグルがなくて忘れたのかと思って探しに降りたんだよ!」

 と訴えるが、

「アリバイ工作でしょどうせ!」

 とミキティがピシャリ。「そうやって、さも覗きなんてしてない、さっさとプールに一度上がってるって言い張るためでしょ!」

 うーん、強引だけど、それを否定なんて私にはできない。

 マリちゃんも、今は黙っている。あわわ……。

「さて、最後は……」

 えぇ!? 3人もいるの!?

 3人目に出てきたのは石河くんだ。

 石河くんはがり勉タイプかな。でもそんな暗いキャラではないんだけど。成績がいいからついそう思っちゃうんだよね。確か書道も上手で、冬休みの書道コンクールの宿題はいっつも金賞取ってるんだよ! 幼稚園の時から書道教室通ってるみたい。家庭科も得意で趣味が手芸と料理だったよ。私より全然上手だったから少しショックだったの覚えてるもん。だからってわけじゃないけど、右手の人差し指に針を刺してたのを見た時、ちょっと安心しちゃったのは内緒の話。

「僕は他の二人と違って教室の中での話だけど、根岸くんがあの日教室に帰ってきた時、何かを慌てて捨ててたのを見たんだ」

 捨てた?

「石河くんが拾ってくれたのよ!」

 ミキティは満面の笑みだ。


『故障中のため

ロッカー使用禁止!』


 と、二段に渡って、横向きに書かれた、湿気で滲んだのか少し掠れている文字に見覚えはあった。

「私たちの更衣室のロッカー、もっと言えば、私の使ってたロッカーの隣に貼られていたビラよ!」

 ミキティの言葉が、教室にいる生徒たちの頭の中に、まるで雷を落としたかのような衝撃を与えた。

「なんでこんなものあなたが持ってるのよ!」

 浅野さんが続く。「そうやって覗きの死角を潰して、一人でも多くの着替えを覗きたかったのね!」

 確かに死角だ……!

「し、知らないよ!」根岸くんは涙声で言う。「知らないんだよ! 教室に帰ってきたら、机の中からちらっと見えて、何かなって思って取り出したらそれだったんだ!」

「それで何でスムーズに捨てたの?」

 と訊き返したのは、マリちゃんだった。

「え? そりゃだってあんな風に疑われていたし、ロッカーって書かれてたからなんとなく嫌な予感がしたんだよ!」

「ふふっ」ミキティがほくそ笑む。

「それだけじゃないでしょ? バレちゃうからでしょ?」

「ど、どういう意味だよ!」

「この紙の裏をみてみなさいよ!」

 ミキティがひっくり返す。するとそこには、発行年月日とか出版社の名前とか色々書かれていた。

 何これ……?

「その本の情報だよ」

 マリちゃんが私のはてなな顔を見て、答えてくれた。「いわゆる奥付ってやつだね」

「ここには、つい先日配られた理科の資料集を示す情報が書かれてるわ」

 2学期から使う教科書なのに「これだけ早く届いたから」って言って次田先生が配っちゃったんだよね。

 奥付の前のページが空白の時は確かにたまにあるけどね、この資料集がまさにそれ。

「根岸くん、ずぼらなのね。まだ持って帰ってなかったんだから」

 浅野さんが妙に優しく言う。根岸くんはハッと何かに気付いて、慌てて教室後ろのロッカーに向かい、真新しい資料集を引っ張り出した。

 私も含めて何人かの野次馬が覗き込む。

 綺麗に奥付は切り取られていた。

「……決まりね」

 ミキティが勝利を確信したのか、そう呟いた。

「ち、違う! 知らないんだ! 誰かが勝手にやったんだ!」

 根岸くんが叫んだ。

 だけど……。

「まだ言ってるよ」

「もうさっさと謝っちまえよ!」

「やだ、ホントに変態っているんだ……!」

 

 響きもしないその声に、胸を打たれる人は、誰もいなかった……。



「はい」



 そう言って、きちんと着席したまま挙手をしたのは、マリちゃんだった。

 マリちゃんの少し幼さの残る声が、不思議にみんなの耳にそよ風のように入り込む。

 教室中が静まり返った。

「あ……は、はい。ど、どうぞ!」

 会長も、ついワンテンポ遅れて促した。

「もういいかなミキティ? お話しても」

 ミキティは笑みを引きつらせた。

「な、なによ。いいわよ別に」

「まずはお礼を言わないとね」

 マリちゃんはゆっくりと立ち上がった。

「は?」

 マリちゃんが前髪を払った。

「ミキティのおかげで、真相に辿り着いたんだから」



 みんなは辿り着いたのかな? 私? 全然! まだ出発すらしてないよ……。

 ちなみに、私が手にしたものは、全てマリちゃんに報告済みだからね。 

 

 ヒントは……




 


 なんでロッカーが故障中だったのかな。 

隔週日曜日更新していきたいと思います!

回答編と次の事件は同じ話数に記載予定です。

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