8話
「なぜあなたと決闘をしなければならないんですか?」
「決まってんだろ!俺が気に食わねぇからだ!」
全く意味がわからない
「話になりませんね、そろそろ行ってもいいですか?」
「いいわけねぇだろ!そうだな...条件をつける!」
「その条件は?」
「決闘をして勝った方はクエストを受けられる。負けた方は装備品と財産を失うでどうだ?ま、俺が負けるわけねぇがな!ガハハハハ!」
うーん......確かに金がないから受けようとしてたんだし、ここで貰えるなら貰っとくか
なるべく多い方がいいし
少なくて困ることがあっても多くて困ることはないだろ
「わかりました。じゃあすぐにでも殺りましょうか」
「ガハハ!命知らずめ!後悔するなよ!」
お前がな
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そのまま闘技場まで連れてかれた
さっきの会話を聞いていた人が多いらしく、観客席は結構な人数で埋まっていた
「おーい、ロドリゲス!軽くあしらってやれよぉ!」
「そんな子供に苦戦すんなよぉ!」
歓声を聞く限り、皆俺が勝つとは思ってないようだ
好都合だ、こいつを完膚無きまでに倒してやろう
そしたら俺に迂闊に近づいてくるやつもいなくなるだろ
そんなことを考えてると、審判がやってきた
「これより、Aランク冒険者ロドリゲス対Bランク冒険者カイトの試合を始める!武器、魔法の使用は自由、勝敗は相手の戦闘不能、又は降参によって決する!なお、相手の死亡が確認された場合、殺した者は戦奴隷になるものとする!」
なるほど、刃引きはしてなくてもいいんだな
てか殺したら奴隷って......楽できないじゃん
速攻で殺そうかと思ったのに
「随分余裕そうだなぁ?」
なんか話しかけてきた
適当に返しとくか
「そうでもないですよ」
ロドリゲスは斧を両手で持っている
攻撃特化って感じかな?
一応俺は両刃の片手剣を持ってる
本当は刀にしたいんだけど、この世界じゃ刀って知られてないみたいだから、さっき武器生成で作った
「準備はいいか!」
「おう」
「はい」
やっと始まるか
「では......始め!」
という言葉と同時にロドリゲスは突進してきた
「おらぁぁ!」
......遅い
スローモーションじゃないんだから
これがAランクの冒険者の実力か?
あと二つしか上がないのに...
しょうがない、さっさと終わらせるか
「ふっ!」
「なにぃ!?」
おいおい、こんなんで驚くなよ
ただ突進して斧振り下ろしたからそれを逸らしただけだろ?
「ならば!」
といいながら薙ぎ払うように斧を振り回した
「ほっ!」
それを灰斗はしゃがんで避け、そのまま右肩目がけて突きを放った
「ぎゃあ!」
見事刺さった
そこから灰斗は連続で急所を外しながら刺しまくった
「ぎゃぁあああ!!ここ、降参だ!降参する!」
ふぅ、おわったか
「ロドリゲス降参のため、勝者カイト!」
「「「..........................」」」
あれぇ、皆止まってるよぉ?
ま、気にしない気にしない
「じゃあ僕はクエストに向かいますね」
「は、はい」
「あ、ロドリゲスの装備と財産は受付の人に渡しておいてください。クエストが終わったら取りに行きますんで」
「わ、わかりました」
一応審判に言ってから灰斗はその場を後にした
あ、受付に行っておくか
「すみません」
「っ!?カイトさん!大丈夫ですか?」
「なにがです?」
「いやだって決闘が...」
「あ、もう終わりましたんで大丈夫です」
「...え?終わった?」
「はい、なのでクエストを受けに来ました。あ、ロドリゲスの装備と財産は預かっておいてください。多分三時間もすれば戻ってくるので、その時に受け取ります」
「あ、はい!わかりました!...はい、これで大丈夫です。クエスト、頑張ってくださいね?」
「ありがとうございます、では、いってきます」
「はい、いってらっしゃい」
...久々に言われた気がする
それにしても、ゴミも処理できてすっきりしたな
清々しい気持ちでクエストに望める
そことお金だけはロドリゲスに感謝だな
さて、そろそろ行くか
場所は...東の森か
頑張りますかねぇ
灰斗はそのまま東の森に向かった
だが、灰斗はまだ知らない
その森がとても面倒くさいことになっていることを
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...めっちゃかっこよくない?
え、あの人優良物件だわぁ
まずあの強さ
ロドリゲスさんは素行が悪くて有名だけど、実力はSランクに近いAランクだったはずだ
それをこんな短時間で倒すなんて...
それでいて礼儀正しいし......かっこいいし
「ん?どうしたのメルク、なんか心ここに在らずって感じ?」
「へ?ううん、何でもないよ」
「もしかして......惚れた?」
「うぴぃ!?」
変な声でちゃった......
あ、そうそう
挨拶し忘れてたね
私はメルク、冒険者ギルドの受付嬢よ
かれこれ5年くらいはやってるかしら
んで、私に変な声を出させたのは
「え、なに、ほんとに惚れたの?あの恋愛に全く興味のなかったあんたが?」
...失礼な
いい人がいなかっただけですぅ
っとまぁそんなことはよくて
この女性は私の一つ上の先輩で名前はリース
人の恋愛話が大好きなんだけど...
「そんなこと言ったら先輩だってまだ恋愛したことないじゃないですか」
「うっ!?そ、それとこれとは話が別よ!」
否定しないんですね
そう、先輩は私と同じで恋愛をした事がないのだ
まぁ私は今さっき一目惚れしたけど
「それに......普通あんな優良物件を見て惚れない人なんていませんよ。強くて礼儀正しくてかっこいいんですよ?」
「かっこいいかはともかく他二つには同意ね」
ふっふっふっ...こんな優良物件、そうそうお目にかかれない
絶対に手にしてやるんだから......!
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その頃ロドリゲスは
「...ヒール」
回復魔法を唱えていた
「はぁ、なんで俺がこんな目に...」
自己責任だ
そんなこと自分でもわかってる
相手の力量をランクで測ったからこうなった
俺は調子にのってたんだ
なぜならSランク冒険者《雷帝》の二つ名を持つあいつと戦って追い詰められるくらいまで俺は強かった
結局《雷帝》には負けてしまったが...奥義を出させ、ギリギリ押し負けたと言ったところだ
Aランクでそこまで出来れば上出来だろう
しかしそんな自信も、あの小僧によって打ち砕かれた
全ての攻撃をいなされ、為す術もなく負けてしまったのだ
自分が勝つと信じていたがためにつけた条件
まさかこんな形で帰ってくるとはな...
はぁ......明日から奴隷か
そんなことを考えると憂鬱になるロドリゲスだった