表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由なる旅人  作者: ブラックニッカ
9/42

2 糸の町『コルティオ』

言われた通りに道を進むと数件の宿を見つける。

朝森を歩き始めてからここにくるまでに陽は沈みはじめており、建物の光はあるがあたりは少し暗い。

ここにくるまでにドッペルと背負われたテオがかなり目立っていたが気にしないようにしていた。

テオは楽しそうにキョロキョロと町を眺めている。

時々「おー…!」と小さく呟いていた、あらかた買い物が終わったら観光するのもいいかもしれない。

そんな事を考えつつゼルエルは見た目値の張らなさそうな比較的綺麗な建物に入った。


「ん〜?……っ!?」


建物に入ると広間の奥の椅子に座っていた男がこちらを見た、おそらく宿屋の店主だろう。ドッペルを見て驚いた様子だ。


「店主、部屋は空いてるか?」


「いやいやいや、その前にそっちの黒いのについて説明しな。おっかねぇ」


「あぁ、うっかりしてた。共に旅をしてる彼女の靴が使い物にならなくなってな、俺の魔法で抱えているんだ」


「はぁ〜ん…そりゃ便利なもんだな。……ま、害が無いならいいんだ。二人部屋なら一人一泊ミユ銀貨二枚と銅貨三十三枚だ。湯浴みしてぇなら右奥の廊下の奥に三部屋ある。ま、専属の炎使いがいねぇから水しかでねぇがな。混んでりゃ順番になるが使いてぇなら一回銅貨二十三枚。石鹸とかは持参でも良いが無いなら五枚で売ってるから言いな」


「一週間程使わせてくれ」


「そうかい、ならあんたと嬢ちゃんでミユ銀貨三十二と銅貨六十二枚だ。……一応聞くが、二人別払いか?」


「んなわけあるかっ!ほら、確認しろよ」


「毎度……銀貨三十三枚、湯浴みどうするよ?」


「あぁ、使えるか?石鹸は持ってる」


「なら釣りは銅貨十五枚だな。今なら一つ空いてるはずだ、好きに使いな。ただ一時間以上は追加で払ってもらうぜ?…部屋はそこの階段を上がって左の十三号室だ」


「ありがとう」


主人から部屋の鍵を受け取りテオの方を見た。


「テオ、部屋に荷物を置いたら体洗うぞ」


そう言ってゼルエル達は自分達が借りる部屋へと向かうのであった。



☆☆



部屋はベットが二つと小さな机が一つ、机の上には灯用のロウソクがロウソク立てに飾ってあった。

それだけの質素な部屋である。


ゼルエルは荷物を置くとスーがのそっと外に出てくる。

リュックの中から布と石鹸を取り出しテオの方を向く。


「はいこれ、石鹸と布。…どした?」


「すごい…ここにとまれるの?」


「そんなに良いか?外見は綺麗だったけどそこまで良い宿じゃないと思うぞ?」


「そーなんだ…でも、すごいよ!……いつもゆかかそとだもんっ…!」


興奮気味に話すテオに、ゼルエルは少し同情しそうになる。


テオは元々奴隷なのだ、よく考えればまともな場所で寝ている筈がないのだ。それこそベットなど使えるはずも無いのだ。


「なぁテオ……ちなみにだけど、身体とかどうやって洗ってたんだ?風呂とか使えたのか?聖魔法の浄化とか?」


「ううん、かわ。どれいのみんな、かわになげられるの。……かわでにおいなくさないとけられるから…みんなかわでからだこするの」


ゼルエルは奴隷に関して詳しいことはよく分からないが、とりあえずテオの元主人であるレギスという奴は糞なんだなと頭の中で結論づけた。


「……とりあえずテオ、身体洗いに行こうか?」


「かわ?」


「いや川じゃなくてね?」



☆☆



湯浴み室と書かれた扉の中に入ると小部屋がある、部屋の角には棚があり、下にはおそらく糸でできた柔らかいマットがある。そして奥にもう一つ扉がある。


身体を洗うための湯浴み室の中は小さな個室となっている。

人一人が膝を曲げて入れる程度の小さな浴槽と、それに水をいれる蛇口が付いている。

床には桶が置いてある。


ゼルエルは服の中に忍ばせてたスーを引っ張り出し、手に乗せる。


「浴槽に水溜めたら炎魔法で湯にするから、それまで石鹸で身体洗っとけ。お湯になったら桶で掬って身体の泡を流すんだぞ。ついでにスーさんも洗ってやってくれ」


そう言ってスーを近づけると、テオはおっかなびっくりといった顔でスーを見る。


「……かまない?」


「ぶふっ!」


「ゲグァ……」


テオの言葉に吹き出すゼルエル。

スーは噛まねぇよ!と言いたそうな目でテオを見つつ、笑ったゼルエルを右前足で叩く。


「いや、ごめんっ…!スーさんは歯がないから安心しな…くくっ…」


笑いを堪えつつスーを手渡し、テオは両手でスーを持つ。


「ほわぁ…」


「……ゲロ」


興味津々に自分を見るテオに、スーは目を泳がせていた。


「かわいい…」


「ゲ……」


「仲が良くて何よりだよ。じゃあ俺は外の扉の前で待ってるから」


「え?いっしょにはいらないの?」


「は?」


テオの言葉にゼルエルは動揺した。


ゼルエルがテオの裸体を見たところで欲情する事は無い。

とはいえテオは女の子で、八歳くらいなら異性に裸体を見られるのは恥ずかしい年頃だろうとゼルエルは考えていた。

だからテオの発言にゼルエルは動揺したのだ。


「えぇ〜っとぉ……テオはこぅ、男の人に裸を見られるのに抵抗とか無いのか?」


「…?なんで?」


「あ〜、それはだな、えっと…」


顔を顰め考えていると腕にスーの舌が絡み引っ張ってきた、ニヤケている。


「グェッグェッグェッ!」


「……」


「スーさんもいっしょにはいりたがってるね?…いっしょにはいろ?」


「…まぁテオがいいなら断る理由もないな、時間短縮にもなるし」


別にゼルエルは一緒に入ることに抵抗は無いためテオのお願いを承諾したのだった。



☆☆



テオは石鹸の泡でスーを揉み洗っている、背中の玉の隙間を擦られてくすぐったいのか、もぞもぞしている。


ゼルエルは浴槽に溜まった水にファイアーボールを突っ込んでいる。


「こんなもんかな」


「…なんでおゆにするの?みずじゃだめなの?」


「水よりお湯の方が気持ちいいんだよ。身体洗ったら入ってみるといいよ、ほら、頭洗ってやるから石鹸貸して」


「うん」


桶で湯を掬いテオの頭にぶっかける。


「ふぉぉぉぉ……!?」


湯が初体験であろうテオはかけられたお湯に驚いてスーをキュッと強く握る。

ゼルエルは笑いながらなんか鳴いているカエルを無視してテオの汚れてる頭を泡でわしゃわしゃと洗う。


「目ぇ入るから瞑っときな?」


「ん〜!」


「グェェェ!」


頭や髪をわしゃわしゃとされてるテオは目を瞑りながら小さく「うぁー」と呟いている。

握る力は更に強くなっているようだ。


「背中洗うぞ、前は自分で洗いなさい。結構汚れてるからしっかり洗うんだぞ?」


「う、うん」


布に泡をつけテオの身体を洗う。


改めて見るとテオには龍人種特有の角と尻尾がついていない、ハーフだからだろう、龍人じゃないほうの親の体つきになったのだろう。

人と猫人の子で尻尾がついてない、などといった話は珍しい事ではない。


テオの硬い身体をゴシゴシと洗う。

銀色の鱗を見ているとなんの龍人種なのか聞きたくなるが、疑問を飲み込んでひたすらテオの身体を擦る。


身体中泡塗れになったテオにお湯をぶっかけて洗い流すと、テオはまたふぉぉと小さく声を吐いていた。


「ほら、身体を洗ったから入っていいぞ」


テオはこくっと頷き立ち上がる。

浴槽に近づき跨いでゆっくりとお湯に体を沈めていく、スーは両手に握られたままお湯の底に沈んでいった。


(あ、……まぁスーさんは息できるから大丈夫だけど……)


「ふわぁぁぁぁ………」


「ゲゴボボボ……」


テオは気の抜けた声を出している

風呂が気に入ったのだろう、安心しきった表情だ。


しばらくしているとスーが浮いてきた。


「ぁぁぁ……あっ!スーさんっ……ごめんなさい…」


「……」


一瞬呆れた顔をしたスーであったが、すぐに顔を背け湯に身体を預ける。

ゼルエルは身体を洗いつつ、その光景を笑いながらみていた。


「お…おこってる?」


「気にしなくていいよ、その子水の中で息できるし。そんなんじゃ怒らないよ」


「…おこってないの?」


「ゲロ」


スーはお湯に浮きながら舌を出しテオの前でプラプラと振る。のんびりと湯に浮かぶスーの姿に驚きつつも、テオは笑顔を浮かべていた。


テオのお風呂初体験はこうしてゆったりとすぎていったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ