3 ゼルエルとテオとスーさん
ゼルエルとゼルエルの影魔法におんぶされてるテオは森を進みながら何気無い会話を交わしあっていた。
「テオ何歳?」
「…はち」
「八歳かぁ〜」
(八歳…町の学習院で勉強してた頃だなぁ…)
ゼルエルは自分の八歳頃を思い出しながら歩いていると、戸惑ったようにテオが聞いてきた。
「…あの…ゼロエロさ「ゼルエル」」
自分の名前を間違えられて思わず食い気味に訂正してしまった。
「ご…ごめんなさい……」
「別に怒ってないよ、ていうかあれだな…」
「…?」
「知り合いの人達は俺の事”ゼル”って呼ぶし、そー呼んでくれないか?」
「…ゼル…さん?」
「”さん”もいらない」
「……ゼル」
「うん、その方が気が楽だわ」
ゼルエルはそう言いながら頭の上に目線をやった。
スーを指を差し聞いてみる。
「このカエルの名前は?」
「スーさん」
「……」
「ゲロ」
自分の名前は覚えられてなかったがカエルの名前はしっかりと覚えられていた。しかも即答されて悔しい。
スーはそれに気が付いたのか、舌でペチペチとゼルエルの頬を叩いた。
きっとカエルらしからぬムカつく顔をしているだろう、ゼルエルは少し顔をしかめ頬を叩く舌を掴んだ。
「グェェェッ!?」
すぐに手に掴まれた舌が引っ込んだ。
怒っているのか前足で頭を蹴っているが、そんな事気にせずに前に進んだ。
「仲…いいね」
「まぁ六歳からの付き合いだからな」
「グァッ」
スーは不機嫌そうな声で返事をする。
「そう言えばさっきはなんて言おうとしたんだ?」
「…ゼル、なんさい…って」
「あぁ、俺は十七歳だよ?」
「そうなんだ……………スーさんながいきだね」
”六歳からの付き合い”と聞いてからゼルエルの歳を聞いた後に何年の付き合いか計算したのだろうか?
大人ならすぐ分かるかもしれないがテオは八歳、しかも奴隷でまともに学ぶ機会も無かった筈の子だ。
テオは賢い方なのかもしれない。
「まぁ普通のカエルじゃなくてこれでも神獣だからな」
”これでも”という部分に反応したのか、スーはまた前足でゼルエルの頭を蹴った。
「しんじゅうってすごいの?」
「まぁ一部の国とか町とかでは神獣を崇拝してるところもあるからなぁ」
「…すーはい?」
「いっぱいの人に信頼されるって事だよ」
「しんじゅう…すごい、スーさんもすーはいされてる?」
「んー、魔玉蛙が崇拝されてるところもあるかもしれないなぁ…見た事無いけど、蛙人あたりでなら崇拝されてそう。まぁ少なくともスーさんは崇拝されるよう子じゃないよ」
ゼルエルは笑いながら答えた。
頭の上ではてしてしと叩き続けるスーの姿がある。
そんな話を続けながら上を見ると、太陽が真上に登りそうになっていた。
「もうそんな時間か…昼メシにしよう。ダークチキンまだ少し余ってるから塩で食うか。悪いけど焼くから少しまって…遠慮すんなよ?」
「う、うん…」
黒い影はテオを降ろすと地面に消え、普通の影となってゼルエルの足元に戻った。
ゼルエルはリュックを降ろし中からダークチキンを取り出し食事の準備に取り掛かるのであった。
☆☆
昼メシを終え、またドッペルを使いテオをおぶり、森を進んだ。
しばらく歩くと森を抜け、少し遠くを見ると建物の集合体がある。町だ。
「あそこは糸の町『コルティオ』…だった筈、様々な蜘蛛人種が住んでる町って話だ」
「『いとのまち』?」
「そうそう、あそこの名産品は様々な蜘蛛人種達が作り出す糸なんだよ。特にあそこで作られた服とかは丈夫だったり魔法に強かったり温度変化に強かったりするらしいぞ」
「すごい…!」
「あそこならテオの服や靴も買えるだろ」
「えっと…」
自分の服を買う、という言葉にあわあわとしはじめるテオ。さすがに服まで買ってもらうのは、と思っているのだろう。
だから説明をする。
「テオ、お前に服や靴を買うのは俺のためでもあるんだ」
テオはなんで?と言った表情で首を傾げる。
ゼルエルは右手の人差し指を上に向け、若干演技じみた口調で喋り出す。
「テオ、君は今奴隷の格好をしている。しかも裸足だ。首輪が無いとはいえ奴隷の格好をしたテオを連れ回すのは俺個人としても避けたいんだ、避けたい理由がある」
ふざけた口調の割に真剣な目でテオを見ながら説明する、テオは焦ったようにこっちを見ているが気にせず続ける。
「君は今、髪がボサボサでお世辞にも綺麗とは言えない。そのうえ傷だらけで奴隷服に裸足。貴族なら視線をそらされたりするだろうから気にし無いだろう、だが俺は貴族じゃない。周囲の人は色んな目で俺を見るだろう。おそらく俺は周りの目線に耐えられなくなってしまう」
「う…うん」
「しかもあそこは蜘蛛人種、または蜘蛛人種と婚約した人種以外住めない町って話だ。君の住める場所を探すにしてもしばらくは旅を続けなければならない、分かるね?」
「そ、そうだね…」
「そうして旅を続ける中で靴の無い君をドッペルで抱え続けるのは正直辛い。今、数時間ドッペルを使って君を抱え続けてたわけだけど正直ヘロヘロだ。毎回これでは困るんだ。だから、俺のために服と靴を買わせてくださいお願いします」
「わ、わかった…」
熱く語りからそのままお願いをするゼルエルに、テオは少し焦りつつそれを了承した。
「とりあえず買い物は明日にするよ、町入って宿に入る頃には陽が沈みかけてるだろうし。テオは明日服を買うまでコートで着てる奴隷服を隠しておいてくれ。スーさんはいつもみたいにリュックに入ってね」
「うん…」
「ゲロ」
二人の軽い返事を受け、二人と一匹は『コルティオ』に向かうのであった。




