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自由なる旅人  作者: ブラックニッカ
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1 清霊の花畑

ラーメンの清算を終え今度こそ元一郎達と別れたゼルエル達は毒湖の橋の先に向かうため歩きだした。

「素材の下処理や価値的にさぁ!」という理由から鳥塩ラーメンより解毒ラーメンの方が高かった事にゼルエルはぶつぶつと文句を呟いていた。


「あんなもんに銅貨三十一枚ってやっぱ納得いかねぇ……そこらの定食よか安いが……やっぱ納得いかねぇぞ……」


「あ、あはは……」


ラーメンの値段に不貞腐れてたゼルエルであったが、歩き始めて三十分たった頃にはすでに気持ちを切り替えていた。というよりも霧が深く景色の変わらない現状に飽きてきたところである。気持ちが切り替わったのではなく別に意識が向き始めたのだ。


「ながいね……このはし……」


「いくらなんでも長すぎるぞ……この湖どんだけデカいんだよ!……………………実は海か?」


「クァァァァ……」


また違う内容でぶつくさ話しながら、それでも歩くゼルエル達、結局それしかやることがないのだ。


更にそこから三十分程歩いたところで前方にようやく変化が現れる。

前方に広がる濃い霧の先である場所から霧が霧散してるのである。


「ゼル!うっすらだけど……じめんあるよ!きりもあそこで……ゼル?」


「う〜ん……」


「どうしたの?」


ゼルエルは足を止めて前方の霧が霧散してる場所を見ている。スーも同様に疑いの目を向け舌を伸ばしている。


「いや、ゲンさん達はこっちから来たらしいから大丈夫だとは思うんだけどね。テオ、霧ってのはじわりじわりと消えるもんなんだよ。なのに霧はあの部分から消えて無くなってる……ように見える。一定の場所で消えるって事は霧もしくは毒が入らないなにかがあるって事なんだ」


「……あぶないの?」


「いやー……ここより危険って事も無いだろうけど。橋の上じゃ石が無いから投げて確かめる事もできないな……………………よし」


ゼルエルは両手に影の魔力を流し黒く染めて、しゃがみ自分の影に触れ呪文(スペル)を唱えた。


「影魔法 第五階位【ドッペル】」


ゼルエルが触れた影は立体に形を作りゼルエルと同じ身長の黒い人型となる。

この魔法はかつて靴の無いテオをおぶらせてコルティオまで運ばせたものである。それを覚えてたテオは少し興奮気味に指を差した。


「あっー!わたしをのせたこだー!!」


「お、覚えてるのか?」


ドッペルはゆっくりと顔?の部分をテオに向ける。少したじろいだテオだがドッペルはVサインをしたり手を振っていたりとおどけて見せており、安心だと理解したのかすぐに目を輝かせてドッペルの手を握る。


「えへへ、あのときはありがとっ!」


ドッペルは照れるように頭を掻く。


「よし、お前先行して霧が霧散してる場所まで行って見てきてくれ。大丈夫そうなら遠くから合図を頼む」


ドッペルは姿勢良く敬礼をした後一目散に橋の向こうへ走って行った。そして霧の霧散してる先へまるでガラス窓をぶち破るかのように飛び込んで行った。

その様は普段のゼルエルとまったく違うものでテオは一瞬戸惑った。だがそれを知らずゼルエルは話を続ける。


「もしドッペルが消えるなら何かがある、もしくはいるって事になるが……」


「へ、へぇ…………えっ!?ドッペルちゃんしんじゃうの……?」


「ちゃん付け……いや、死ぬも何も俺の魔法だから……随分キョロキョロしてるな……」


霧の向こう、うっすらと見える所でドッペルは辺りを見回している。何故か手を振ったりもしている。


「なんか……ドッペルちゃんたのしそう」


「グァ〜」


しばらくするとドッペルは走って戻って来た。ゼルエルが確認を取る前にドッペルは親指を立ててポーズを決めた。

表情は見えないがドヤ顔が見える。


「ドッペルちゃんってゼルがつくってるんだよね?」


「…………」


ゼルエルは指を鳴らす。パチンと音が鳴ると同時にドヤ(してそうな)ドッペルは溶けるように地面に倒れてゼルエルの影に戻った。


「あぁぁぁぁぁぁあ!?ドッペルちゃん!?」


「いや俺の魔法だから!いつでも出せるからそんな顔すんな!」


テオはゼルエルの影を指でなぞりながら悲しそうな顔をしておりゼルエルはどうしたものかと戸惑っている。

一向に話が進まず見兼ねたスーが舌で二人を引っ叩いた。テオは頭に軽く、ゼルエルは頬に思いっきり。


「あう!」


「ぶぇ!?…………そうだよな、いい加減この景色も飽きたよな」


「ゲコゲロ」


「ドッペルのおかげで危険性が無いと分かったし、進むか!」


「……うん。…………ねぇゼル」


「あん?」


「また出してね、ドッペル」


「はいはい」(気に入ったんだな……)


ゼルエルはテオの頭を撫でて手を握り引っ張って歩きだす。テオもついていくように歩きはじめた。

歩くにつれ霧が霧散してる場所が近づく。それに合わせて視界が明るくなり先が見え始めた。

最初は何があるものかと険しい顔を浮かべていたゼルエル達だが先がハッキリ見え始めるにつれて目をキラキラと輝かせた。


「…………これは」


「きれい…………うわぁ!きれい!」


「ゲロ!ゲロ!グァァァァ!」


そしてゼルエル達は橋の最後、霧が霧散している場所を思いっきり超え大地を踏みしめた。


毒の湖、その真ん中に作られた謎の橋の終点は幻想的で広大な花畑に繋がっていた。




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