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自由なる旅人  作者: ブラックニッカ
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魔玉蛙

亀の魔獣を灰にしてから数時間。陽が落ち始め僅かな光すら森の木々で遮られ辺りはすっかり暗い。

ゼルエル達はすでにテントを張り終えて、空間遮断で安全地帯を作っている。

途中で拾い集めた枝木を焚き火の中に放り投げ、吊るした鍋で料理を作っていた。スーは相変わらず頭の上である。


落ち着かない表情で。


それもそのはず、テオはというと焚き火の反対側に座りじぃっとスーを見つめている。

スーが亀の魔獣を倒してからというものずっとこの調子なのだ。不思議そうな視線を向けてずっとスー見ているのだ。


流石に長い間見つめられる事に嫌気がさしたのか、長い舌を出しテオの額を軽く小突いた。


「あぅ!」


「グェ!」


「……くっくっくっ、ぐぇっ!?」


鍋の中身をかき混ぜながら笑うゼルエルの頬を舌が強く叩く。もうなれた事なのだろう、ゼルエルは「痛いな……」と呟きながらテオの方を向いた。


「スーさんが気になるのか?」


「あ、えっと……カメの、まほう」


おそらくテオが気になってるのは亀の魔獣が作った魔法では無く亀の魔獣を倒した狐と槍の魔法だ。

ゼルエルは察したように説明をする。


「昼にスーさんが使った魔法は炎属性の第四階位【狐火】と天属性の第五階位【天上の戦槍】だ」


「きつね……てんじょー……」


「狐火は青い炎の方だな、魔力の練り込み方や込める量でいくらでも狐の数を増やせる遠距離の魔法だ。ま、普通なら多くて三匹くらいだろうよ。浄化作用もある」


「へー?」


「天上の戦槍は槍を作る魔法だな。これも魔力次第で大きさを変えれたり数を増やせたりできるんだが、これは本来一つ槍を作り出してそれを振るって戦うものなんだよ。一つ作り出すのに結構な魔力量が必要だから何個も出して飛ばして突き刺すなんてのは普通と違うが……まぁスーさんじゃ槍、使えねぇしな。この魔法は一回作っちまえば魔力が消費されることも無いみたいだし便利っちゃ便利だ……わかんないよな?」


「もえるキツネとブキをつくるまほうなんだね!」


「それだけ理解してりゃ十分だな。ほら、今日はシチューだ、器」


「しちゅう?……いいにおい」


そうこう話してる間もゼルエルは鍋の中をかき混ぜていたのだが、鍋の料理が完成したようだ。

香ばしい匂いが辺りを漂う。中身は白く様々な具材が入っているようだ。

テオから器を受け取りシチューを盛り、渡す。


「昨日のもそうだけどこれも”メルト”から作った料理だ。冷める前に食っちまいな」


「うん!いただきます!」


渡された器を受け取りがっつくように食べ始めるテオ。

何を食べても美味しそうに食べてくれるのでこちらも作り甲斐があるというものである。

そんな様子を眺めながらゼルエルもシチューを食べていると、スーに頬をペチペチと叩かれた。


「ゲロゲロゲロ」


「むぐ?……あぁはいはい、炎魔法 第一階位【ファイアーボール】」


「グァ」


腹が減ったと催促するスー。ゼルエルは手のひらに炎の玉を作り出すと、長い舌が炎の玉を赤い光に変え吸収する。


「炎魔法 第一階位【ファイアーボール】、ほい」


「ゲロ」


「炎魔法 第一階位【ファイアーボール】、ほれ」


「グェ」


何度も炎の玉を作り出してはスーに食べさせる。

テオは食べる手を止めてまたじぃっとこちらを見ていた。

今度はスーだけでなくゼルエルの方も交互に見つめている。


「炎魔法 第一……どうしたテオ?」


「スーさんはまほうがごはんなんだよね?」


「グェ」


「かげのまほうはたべないの?」


「あー、それか」


スーはゼルエルの炎魔法しか食べていない。

魔法がご飯だと聞いていたテオは不思議に感じていたのだ。ゼルエルは亀の魔獣から逃げてる際、炎の魔法は苦手だと言っていた。にも関わらず最初出会った時も今も得意な影魔法ではなく炎魔法をスーに食べさせている。


ゼルエルはスーを掴み自分の手に乗せてテオに見せるように説明した。


「スーさんは六種類の属性しか食べれないんだよ」


「なんで?」


「スーさんの背中に六個、玉が付いてるだろ?魔玉って言うんだけど」


「うん、ぜんぶいろがちがうね」


「背中の魔玉は使える魔法を示す。赤は炎属性、薄い黄色は天属性、濃い紫は毒属性で薄い紫は空間属性、白は二つあるけどこっちは若干青っぽいだろ?藍白の方は音属性で真っ白は聖属性だ」


指を差しながら教えるゼルエル、テオは器を持ちながら近づき興味津々に背中の魔玉を覗く。


「まぁ、そんなんだから俺の影魔法は食べれないわけだ。影魔法の魔玉が付いてないからな」


「じぶんのまほうじゃダメなの?」


「魔玉蛙は他者の魔法しか食べれないんだよ。何故か自分の魔法は食べれないみたいなんだよ」


「へぇ……」


「他者から魔法を貰えなきゃ生きていけない。でも属性が合わない魔法は食べれない。自分の魔法は食べれない。だから野生の魔玉蛙は数ある属性の中から同じ属性の魔法を使う魔獣なんかに寄生しないと生きていけないんだよ」


「たいへんなんだね……たいへんだよね?」


「あぁ、大変だな。”死体の方がよく見られる神獣”なんて不名誉な事言われてる場所もあるし」


「……」


テオはスーを撫でてにこりと笑う。


「ゼルにあえてよかったね?」


「そうだな。こいつ初めて会った時道端で干からびかけヴェッ!!」


自身の過去を晒されそうになりゼルエルの頬を舌で思いっきり殴る。そのままゼルエルの手から跳びテオの肩に乗った。


「ゼルにひろわれたの?」


「……」


「わたしと、おなじだね……あうっ」


肩に乗るスーを撫でながら言うテオの頬を舌がグリグリと押す。


「……へぇ、ふーはん」


頬を押されながら喋るテオ。

スーは舌を戻しテオを横目で見る。テオは肩に乗ってるスーがよく見えないために手を出し乗せた。

そのまま自分の顔の前に移動させスーと見つめ合う、そして……


「わたしもまほう、つかえるかな?わたしもスーさんにまほうたべさせたいな?」


そう言った。




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