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自由なる旅人  作者: ブラックニッカ
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7 糸の町『コルティオ』

テオとペルティエ、ついでにスーが戻ってきてごちゃごちゃと色々あったが、テオの人種が判明したのでメルドは説明を始めることにした。


「はぁ、しかしあれだな、真逆の両親だな。嬢ちゃんの両親ってのは」


「そーなの?」


「あぁそうさ。俺は色んな客に会ったからな、どの種族がどんな特徴を持ってるかってのはある程度分かるもんよ。軽く勉強したしな」


「すごいんだね、……おじいさん?」


「おじっ!?」


「ぶふっ!あっはははは!メルド、老けて見えるってさ!あはははっ!」


「うっせーぞペルティエ!てめぇの方が歳上だろうが!…………なぁ嬢ちゃん、俺はこう見えてまだ三十路いってねぇんだ、おじいさんは勘弁してくれ…」


「…おにいさん?」


「それもなんか違和感あんなぁ…」


「テオ、”メルドさん”って呼んでやれよ、その方がいい」


「わかった……ごめんなさい、メルドさん」


「あぁ……」


「それで、何が真逆なんだよ?甲龍人は見たこと無いから分かんねぇ」


「……魔人は魔法に特化した人種だ。見た目姿は”人”で産まれつき高い魔力を備えてる。また珍しい属性が発現しやすく四属性以上持ちが平然と産まれてくる、そんな人種だ」


自分に関わる話だと理解しているのかテオは真剣な顔で聞いている、理解しているかは不明である。

ゼルエルもまた興味深そうに聞いている。


「対して甲龍人ってのは硬い鎧のような鱗を全身に纏っている人種で己の肉体を鍛え戦うタイプでな、だが魔法はすこぶる苦手なんだよ確か。そもそも龍人は魔龍人を除いたら魔法は苦手か一点特化が多い……はずだ」


「へぇ、だからテオは硬いのか」


「かたいの?」


「少しな」


テオは気になるのか、自分の手足をプニプニと指で突いている、なんか微笑ましい。

ペルティエは微笑みながら二本の手でテオの頬を撫でる。


「テオちゃん見た目は”人”なんだよね、尻尾無いし。鱗も肩以外無いよ、でもカチカチ!」


「そーなの?」


「そーだよー?魔力はどうなんだろうね?お母さん似だといいねぇ?」


「そーなの?」


「そーだよぉー!」


そういって笑うペルティエ、テオは不思議そうな顔で頬を撫でられ続けられている。

話が進まないのでメルドはペルティエの首根っこを掴んで止める。


「どけ、話が進まねぇだろ!……嬢ちゃん悪りぃけど足のサイズ測るからそこに座って「あ、それ私やっといたよ?」くれるか……」


どうやら水浴びした時に足のサイズを測ったらしい、人種を聞いていた事といい手の早い事である。


「メルド……」


「……はぁ、…おいペルティエ、奥に来い、兄ちゃんと聞いた話と合わせて靴探すぞ」


「りょーかい!テオちゃん待っててね!」


二人は靴選びのために奥へ向かう、テオはとてとてと歩きゼルエルの隣に座った。


「しっかし……変わるもんだなぁ」


「…?」


綺麗になったテオの髪を見てゼルエルは頭を撫でながら目を緩め笑う。テオは恥ずかしそうに俯いている。

スーは欠伸をしながらゼルエルの頭の上で二人を様子を見ていた。



☆☆



「そういえばメルド……」


奥で靴を漁っている二人、ペルティエはゼルエルに直接聞けなかった事をメルドに話した。


「水浴びした時に見ちゃったんだけどテオちゃん、体傷だらけだったんだ……なんか痣とか切り傷とか……」


「嬢ちゃんは捨て子らしいぞ?」


「え?」


「この町に来る前に拾ったっつってだぞ。兄ちゃんがやったわけじゃねぇから安心しろ」


メルドの言葉に安心したような顔をするペルティエ。


「よ、よかったぁ……ゼルエルさんそんな事する人に見えないから、でも、もしかしたらって……じゃああの傷は獣にやられたとか?親かな?……でも話してる時嫌ってる感じじゃあ……」


「さぁ、それは知らねぇがな。あの兄ちゃんに拾われて良かったんじゃねーの?普通お荷物なら見つけても見捨てるだろうしよ」


「そうだね……そうだね!」


「ほら、さっさと靴引っ張り出せ、裸足の嬢ちゃんがお待ちだろ?」


「うん!よぉし、とびっきり良いの選んであげるんだから!」




☆☆



いったい何故こんなにあるのか、メルドとペルティエは結構な量の靴を奥から引っ張り出してきた。

いずれも子供用で山道などに適した丈夫な靴である。

見た目は色鮮やかな物からシンプルな物もある。

元々冒険用の靴は少し大きめのものを選ぶのが定石ではあるが、テオの成長なども考え更に大きい物を選んでいる、長く使う事も考えてくれているのだろう。


「テオちゃん硬いから多少硬めの靴でも気にしないはずなのよね、靴擦れとか無いでしょう?」


「いや、嬢ちゃんは足に鱗ねぇだろ、靴擦れは起きるかもしれねぇ、やっぱ中は柔らかい方が良いだろ?…これとかどうだ?」


「えー!可愛く無い!黒い!似合わないよ〜!それよりこっちとか?」


「ばっかお前、これから先どこ歩くかもわからねぇのにそんなまっ白いの履かせられるか!汚れが目立つだろ!しかもそれ下が柔らけぇやつだ、岩山歩かせたらすぐおしゃかだろうが!?」


「えーっ!じゃあこれとか!」


次々と子供用の靴を引っ張り出しては片付けず店内に置き散らかしている

目の前で両手に靴を持つ二人の議論は白熱していた。

ゼルエルとスーは放ったらかし、隣のテオは事ある毎に足を上げられて穿かされては脱がされている。


あんまりにも長くなりそうなのでテオに聞くことにした。


「なぁテオ、今ここにある中で気に入ったやつとかあるか?」


「……いちばんやすい「値段を気にせずに選んだら?」…………」


「別に難しく考える必要は無いぞ?これ良いなーって思うの、手にとってみな?」


「……うん」


テオはゼルエルの足元に目線をやる。


「…?どうした?」


テオは何も言わずに立ち上がりキョロキョロと床に散乱した靴を見下ろす。

靴を踏まないように、白熱議論を繰り広げる二人の邪魔をしないように奥に進み一足の靴を拾い上げる。

両手で靴を抱えたままゼルエルの元に戻ってきた。


「……これ」


「……テオ、お前これ…」


テオが選んできた靴はゼルエルが履いてる靴に似ている。

ゼルエルが履いている靴は分厚い皮でできた濃い茶色のブーツである。テオが持ってきた靴も皮でできているようだ、薄い茶色のブーツである。

子供にしてはちょっと大人っぽい選択な気もするが…。


「テオ……それでいいのか?もっと可愛い感じの奴とか色の明るいのとか……」


「……ゼルとおなじがいい」


「え?」


「いっしょがいい……やすいなら…だけど…」


安いという言葉は聞き流した。

ゼルエルは頭を掻いてテオを見る、テオもまたこっちを見ていた。

テオがそれでいいと言うのなら別に否定する理由も無い。


買う靴を決めたゼルエルは二人を止めようと視線を動かすと、二人は議論をやめテオの持っている靴をジッと見ていた。


「……ふっ、嬢ちゃん、お目が高いな?」


「えっ…たかいの?」


「いやまぁ、そういう意味じゃなくてな?」


「確かにこれも良いよねぇ、でもちょっと地味じゃない?」


「子供が選ぶ感じじゃ無いのは確かだがテオが気に入ったものだからな。なぁメルド、これはどんな靴なんだ?」


「あぁ、こいつの内側は綿蜘蛛人の糸で編みこまれてるんだ。足の形でフィット感を変える柔らかい素材で温かく通気性が良い。外側はここらじゃあまり手には入らねぇ”ウェルドゥメルデ”っつう海の超獣の皮を使っている。柔らかいのに丈夫で当然防水だ。紐は当然蜘蛛糸製、靴裏には象蜘蛛人の作る硬質糸を使っている、滑りにくく硬い。使ってれば数年はダメになる事は無い筈だ。嬢ちゃんの足のサイズより大きい、問題はないぜ?」


「へぇ押すな、それだけ聞くと滅茶苦茶高そうだが?」


「そうだな、ミユ銀貨七枚と銅貨六十六枚だ。だから持ってきたはいいが選ばなかったんだが…」


「…やっぱり、たかいの?」


テオは俯いて、諦めたのか両手で持った靴を無言でメルドに靴を渡した。


「はい金貨」


「毎度あり」


「んぇッ!?」


メルドに靴を渡した途端、自然な流れで金を受け渡すゼルエル。

テオは驚いて変な声を上げ、それを聞いたペルティエは笑っていた。


「えっ?ゼル!?」


「テオ、何度も言うけど俺のためでもあるの!靴なんかで遠慮して、他の町に行く際に何かあっても困るの!」


「でも……」


「でもじゃない!これからどっかでメシ食ったら今度は服を買うんだ、テオが持てるリュックとか必要な小物も買うんだよ、いちいち遠慮されても困るんだって!」


「あっ……」


「ほれ釣り、袋に入れとくぞ。靴どうする?」


「履かせて行くから、もう影魔法使うの疲れたしな」


「ほらテオちゃん!足出して〜?」


ペルティエはテオを座らせ靴を履かせる。

テオはまだ不安そうにゼルエルと靴を交互に見る。

そんなテオの前に靴の代金の釣りが入った袋を出し、ジャラジャラと動かす。


「見ろテオ、前にも言ったが金は重いしかさばるんだ。その靴を金貨で買って釣りは銀貨四十三と銅貨三十四、これからだけでも邪魔なのに元々持ってる銅貨を合わせてさらに重くなる」


「なんか金持ちみたいだな、腹立つわ」


「うっせ!……とにかく、これ減らさなきゃ重荷になるんだよ。テオ、お前のために金を使わせてくれ、俺のために!な?」


「貧乏人が聞いたら殴りそうな言葉ね、ていうか殴りたいわ」


「……」


「テオ、頼むよ」


「……わかった、ごめんなさい、もう…いわない」


「うん、ありがとう」


ゼルエルは説得され困ったような顔のテオに笑顔を向けて頭を撫でる。

そんな二人をメルドとペルティエは散らかした靴を片付けながら見て笑うのだった。


「ゼルありがと」


「お、おう…」




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