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第五話 始まる学園生活!

あらすじ


美羽姉に謝りに行った和馬。だが、美羽姉は夜のせいか変態発言連発!? そして和馬を襲おうとする……がしかし美羽姉の運動神経の良さに捕まりそうになるものの運良く机の上のノートにより手を滑らせる。気になって見たノートには僕の1日の行動が書き綴られていた。美羽姉は弟としてではなく、一人の男として好きなようだ。それを知ってしまったからには一度よく話し合うべきだと感じた僕は美羽姉に明日話し合いをしようと言って部屋を出ようとするが、身体が急に痺れて、意識を失ったのてある。

 次の日の朝六時、いつもより少し早い時間に二日酔いのような気持ち悪さで僕は目を覚ました。頭痛がするせいで胃まで気持ち悪い。ゆっくりベットから上体を起こし、頭に手を添えて昨日の夜の事を思い出そうとする。確か昨日は、美羽姉の部屋に行った後……くっ! だめだ、どうしても思い出せない。


「…本当、何されたんだ? あ!そうだ。美羽姉に聞けば……」


 そう思った僕は部屋を飛び出し、一階のリビングに向かう。この時間の美羽姉はいつも母親と食事の準備をしているが、記憶が正しければ両親は二人とも美羽姉に百万円に踊らされて……いや、追い出されたというべきだろう。なので昨日から両親は家に居らず、美羽姉と家で二人っきりということになる。つまり、リビング兼台所にいるのは……


「あら、カズ君、今日は早いね。ご飯もうすぐだから、テレビでも見て待っててー」


 そう、確実に美羽姉がご飯を作っているが、今はそれよりも聞かなければならないことがある。


「……美羽姉、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…まだ忙しい?」


「…大丈夫よ、もうすぐ出来上がるから、朝ご飯でも食べながら聞きましょうか。カズ君、お皿とか出してもらえる? お姉ちゃん手が離せないから」


「わかった」


 いつも通りの美羽姉。いつも通りの食卓。いつも通りの日常。なにも変わらない風景。美羽姉の変わらない美味しい朝ご飯。僕は食卓につき、美羽姉と一緒に食事を取る。

 因みに今日の朝ご飯は、白米、ワカメの味噌汁、目玉焼き、野菜サラダと普通過ぎかもしれないが、美羽姉の料理の本領は……味だ。美羽姉は普通の料理ですら三ツ星レベルに仕上げてしまう超人なのだ。さて、今日はどんな味に仕上がっているか楽しみだな。


「美羽姉、いただきまーす!!」


「……っとその前にカズ君、私に何か用があるでしょ?」


 おっと、そうだった。美羽姉のご飯の前ですっかり忘れてた。


「あぁ、昨日の夜のことだよ。僕さ、美羽姉の部屋に行った後さ、何してた? 思い出そうとしても、記憶がないんだよ。朝はベッドにいたし……美羽姉、何かなかった?」


 昨日の夜の出来事。しかも美羽姉の部屋から記憶が……うっ! 何か思いだしてはいけないような気がする。


「昨日? うーんとね、カズ君が来たあと、その場で風呂場でのことを謝ってきて、その後、私を抱きしめ、耳元で『今夜は寝かせないぜ』ってありありな台詞を吐いて…………うん!! 何もなかったよ?」


「やめて! ニコニコしないで!! 記憶がないから本当の事かどうかもわからないんだからーーー」


 本当に、何も……なかった? 本当にそうなのだろうか? 何か、何か大事な事を忘れているようなーー。


「ーーーズくん! カズ君! ねぇ、聞いてるの? カズ君!」


「え!? あーうん。なに?」


「もう、カズ君。何ボーッとしているの? 用が済んだのなら、早くご飯食べちゃいなさい。遅行しちゃうよ。なんたって今日から新学期! カズ君とニャンニャンし放題なんだから〜。嬉しいでしょ〜カ・ズ・く・ん」


「……まあね、美羽姉と過ごす学園生活も悪くない」


「でしょ~♪。(ニャ~ン)」


 と美羽姉の後ろに猫の尻尾が見えた気がした、まあそのくらい喜んでいるって事。そんなことよりご飯食べよっと。美羽姉、感謝感激雨あられっす!


「あーーーーーむ。もぐもぐ。うん! なかなかいい感じ! 味は酸っぱく、辛くもなく苦くもなくとても味わい深い………オロロロロロロロ~」


「カ、カズ君!? ど、どうしたの? 何か変だった?」


「……み、美羽姉。飯が……飯が……ま、不味いで、す(バタッ)」


「カ、カズ君ーーーー!! お姉ちゃんより早く死んじゃダメーー(バジバシバシバシ)」


「痛い痛い腫れる腫れるって、弟の大事な顔だよ、フェイスだよ。今日学校行けなくなっちゃうよ」


 往復ビンタは終わり、なんとか気絶せずに耐える事が出来た。というか……


「何!! 今日のご飯、いつもと全然違うよ。どうしたの美羽姉? 僕、舌とか痛いんだけど! 本当にどうかしたの?」


「んーーーー。今日が楽しみすぎて眠れなかったからね~♪、カズ君との学園生活を考えるだけで寝不足だよ。それにご飯もたまたまそんな味になっただけで大丈夫、心配知らないよ」


「俺と学園で会う機会なんて少ないんだから、気にしすぎ。まあ、そこまで言うなら大丈夫だろうけど……」


 久々に美羽姉と今日から登校。僕も楽しみっちゃ楽しみ……ではない。だってだって恥ずかしすぎでしょ! 高校生にもなってさ、実の姉と二人仲良く登校ですよ? 昔からの友達に見られるのはいいよ、でもさ、これから仲良くなるであろう友達に見られてさ、いざ仲良くなった後にさ「そういえばお前、姉と登校してるんだって~。実はさ、シスコンだったりするの? お前」とか聞かれてみなさい、それが教室だったら恥ずかしくて穴があったら入りたい状態だよ。今日は言い訳として考えてきた「道がわからないため、少しの間、姉と一緒に登校」という理由がある。後、美羽姉も生徒会長として朝から学園の仕事を片付けるために早く家を出ることがあるため、ほぼ毎日登校とまではいかないはず! つまり、美羽姉との登校を終わらせるための理由作りを考える時間は約一週間となるはず、頑張れ僕、思考を巡らせ、この運命を破るんだ。


「カズ君、ご飯不味かったみたいだから、冷凍食品でもいい? そろそろ学園に行く準備だし……」


「あ、うん、いいよ」


 台所近くにある冷蔵庫を開け、食べたい食品を取り出す。食品を電子レンジで温める。すると、僕の耳に悪い情報がーーー


「カズ君カズ君。これからは毎日・・登校しようね。楽しみだな~♪」


「あ、あれ? 美羽姉? 朝って生徒会の仕事があるから俺とは毎日登校は無理だよね? たまになら分かるけど、おかしいな、僕の耳が悪くなったのかな? 難聴かな?」


「難聴ではないでしょ? もう、カズ君はそんなこと言って……大丈夫よカズ君。今年度の朝にやる仕事はぜーーーーんぶ終わらせたから問題ナッシング!! だからねカズ君カズ君。褒めて褒めて~(ルンルン♪)」


「褒める気にならねーー、あるのは絶望だけだ。はぁー、何てことだ。これじゃ毎日は確定したも当然じゃないか。(なでなで)」


「カズ君。言ってる事とやってる事が全然違うよ? あ、でも撫でるのは止めないでね〜♪」


 くっ、ついつい美羽姉の頭が出されると撫でたくなるのはどうしてだ? わからん…が触り心地がいいからかな。あ、目を細めて、猫みたい…か、可愛い! 僕は撫で続ける。ひたすら、なでなで、なでなでとしていたが、時間を見て思った。あれ? 何かまた忘れてる………あ、今日学園あったわ。時間は八時半を過ぎている………って遅刻や!? 撫でるのを止め、美羽姉に言った。


「美羽姉! ピーーーーンチだぞ、遅刻だぞ、そんな猫みたいに気持ち良さそうな顔しないで、早く早く初日から授業遅刻何て僕、嫌だからな」


 僕は美羽姉を放っておき、階段を駆け上る。鞄に必要な物を入れ、準備を済ませ、先ほど温めていた冷凍食品達を口に放り込む。熱々だったのでそのまま丸呑みをした。食道が焼けるー!?


「んんっ! み、水。…コクコクコク……っぱー。美羽姉準備はできーーー」


「ーーーてるよ〜♪ どう? 可愛い?」


「あー可愛い可愛い、ほれ、行きますよ」


 そんな美羽姉の話を華麗に返しつつ、靴を履き、学園に向けて扉を開く。


 *****


 昨日見た学園までの長い長い坂道をダッシュで駆ける。チャイムが鳴るまで後、一分。ま、間に合わないっ! 美羽姉は大丈夫かな? 一緒に来たはずだけど……あれ? 後ろを振り向くが、姿が見えないが、立ち止まり、目を凝らして坂の下を見ると、電話を片手にどこかへ連絡しているようだ。


「美羽姉~!! 何してるの~? このままだと遅刻しちゃうよ~!」


 僕は美羽姉に向かって叫んだ。電話はタイミングよく終わったようで、僕の方に歩いて来た。もう遅刻でもしても問題ないような……。


「さぁ、カズ君。行きましょうか」


「行っていってもさ、もう遅刻は確定だよ、あーあ」


 僕が落ち込んでいると、そっと耳元に声が聞こえた。


「実はね。私とカズ君が遅刻しても大丈夫な様に、さっき学園に連絡しておいたんだ。だからもう少しゆっくり歩こ♪」


「え!? それってどういうこと? 流石に美羽姉が誰からも信頼されている生徒会長だからと言ってそんなことは出来ないでしょ?」


 その通りだ。普通、学園では遅刻の連絡はするが、遅刻を無くす連絡など出来はしないのだ。だから、美羽姉の先程の行動はおかしすぎる。


「えっ!? だって理事長からの命令だよ? 誰も逆らえないでしょ?」


 ん? 今の発言は変だ。だってその言い方だと、美羽姉が理事長ですよーって言ってるようなもの。だから改めて……しつもーん。


「……美羽姉? 今の発言ですと、美羽姉が私立高森学園の理事長だと、仰っているようなものですよ?」


「だ・か・ら、そう言ってるでしょ? もう、カズ君ったら……」


 は、ははは、ははははは、はははははははははは!!

 これは夢か夢なんだな。だって学生ごときが理事長になるって、変だ。やっぱり夢かもしれない。朝、美羽姉のご飯が不味かったのも、美羽姉が少し可愛く見えたのも……まあ、可愛いのは事実だか。でもだ、学園がそんなことは許すはずかない。


「カズ君、入学式する前にちゃんと案内用パンフレットとか読んだ?」


「ん? そりゃ、目は通したよ? それがどうかしたの?」


「ちゃんと理事長名のところ見てみて~」


 鞄からパンフレットを取り出す美羽姉。よくもまあ、持っていたね。美羽姉からパンフレットを受け取り、ページを捲り理事長名を見る。


「……理事長名…………岩永…美羽!? これって美羽姉の名前じゃないか!? マジで!? 美羽姉、理事長だったの?」


「そうだよ~。お姉ちゃん、凄いんだから! もしも学園で何かあればお姉ちゃんに任せなさい!!」


「それって職権乱用にならない? ってさっきの電話はまさに職権乱用か……」


「ふふーーん、さらに言うと、あの学園や土地………お姉ちゃんの所有物だもん」


「え!? しょ、所有物? 何が?」


「え? 何って? 坂の上にある土地、学園…………高森学園はお姉ちゃんの所有物だよ」


「………嘘でしょ? またまたご冗談を…」


「嘘じゃないってば、本当、本当だから! あ、その目は信じてないでしょ~。もう、カズ君なんて知らない! カズ君なんてバナナの皮で滑って頭ぶつけて死んじゃえばいいんだ」


「信じた信じたってそんなに怒らないでよ。それより学園に行こうよ、遅刻は美羽姉の職権乱用のおかげでもう大丈夫みたいでけど、授業はちゃんと受けないといけないからね」


「カズ君、なんていい子に育ってくれたのかしらお姉ちゃん嬉しいよ。いずれはお姉ちゃんと……け、結婚。そして初夜を迎え、カズ君がついに私を抱き、ぁああん! 私の中にぃぃぃぃー!! ああぁん、ダ、ダメ。そこ……いい!! 蕩ける! カズ君に犯されるならいいよ、来てぇぇーーーー!!」


「さっきから何言ってるか知らないけど、来てほしいのは僕の方だからね。行かないなら置いていくよ」


 僕は美羽姉を軽くあしらい、学園に向かう。遅刻は美羽姉のおかげさまで無しとなったようだが、やはりズルはよくないような気がするし、僕だけが特別扱いもあんまり好きじゃないし、クラスでなんだか浮いちゃいそう。まあ、美羽姉が学園の長であり、生徒達の中でも上に立つ存在なのは分かったからこれからは話しかけないようにしよう。うんうん。そうだ、それが正しい。美羽姉と話すのは好きだけど、行動まで関わってくると、僕は流石に着いていけないからね。どんな無理難題が出てくるやら……


「カズく~ん、置いてかないで~。華麗にスルーしないで~」


 だが、今でも思う。美羽姉に会えてーーー


「あ、そうだ。お菓子、お菓子あげるから機嫌直してよ~」


 ーーー良くないな、うん。今子供扱いしたから、今度から美羽姉に対する扱いが下がったなこれは。


 *****


 初日に行った教室……1-5教室の前に僕はいるが、き、気まずい。初日に遅刻、更には遅刻を無しにしたという連絡が行っているはずだからきっと先生もクラスの皆んなも「なんだ、こいつ」みたいな雰囲気で見てくるんだよな。まあいいけど、とりあえず入るか。教室の扉に手を掛けて開けると、中では1時限目の授業をしていた。授業中にいきなり扉が開くのだから当然皆んな僕の方に一斉に顔を向けてきた。気まずいものの授業をしていた男性の先生に遅刻の報告をする為、向き直る。やっぱり連絡なんて来ていないのだろうか? 先生も僕の言葉を待っているようだった。


「せ、先生。……すみません、遅刻してしまって、次から気をつけます」


 ありきたりな謝り方をして、僕は軽く頭を下げる。だが、一向に先生からの答えが返ってこない。恐る恐る頭を上げると、先生は「何のこと?」みたいな顔をしていた。僕は先生の連絡が伝わっていないか聞いてみた。


「あの、先生。僕の事で何か連絡来ていませんか?」


「連絡? ……あぁ、遅刻の事な。理事長が無しにしろって連絡か」


「はい。その連絡です」


「まあ、無しにしろって話だからな。特に何も言うつもりはない」


「そうですか」


「だが、他の生徒の前でおとがめ無しって訳にもいかないから、とりあえず……廊下に立ってろ」


「……はい」


 僕は大人しく廊下に出る。はぁー、結局遅刻は無しだが、授業には出られないって事かそれなら遅刻でもいいんじゃん。そんなことを考えていると、こっちに歩いてくる美羽姉が見えた。


「あ、美羽姉どうしたの? なんか凄く機嫌悪そうに見えるけど……」


「やっっっっっぱり、そう見える? お姉ちゃん今すっっごーーーく機嫌悪いの。その事でカズ君の教室の先生にようがあってね」


「そ、そうなんだ」


 いつもは機嫌がいい美羽姉だが、機嫌が悪くなると本当に怖いからあまり逆らうようなことはせずに、そのまま軽く流してしまう方がいい。そんなことを考えている間に美羽姉は鬼神のごとく僕の教室に入っていく。と、扉が壊れそうだ……。教室はすでに騒がしくなっており、美羽姉の人気が凄いことが教室の中でもよく分かる。だが、その後先生の悲鳴とともに美羽姉が出てくる。


「み、美羽姉何したの? 妙に教室の中が騒がしいし、先生の悲鳴も聞こえたし……」


「それは教室のみんなにカズ君がどれだけ素晴らしいかを演説してきて、あと先生に学園を辞めるように言ってきたところだよ」


「え!? なんで? なんでそんな事したの?」


「だって、カズ君を苛める奴は……許せないんだもん」


「……もんって、あのね。僕は別にそんな事して欲しいわけじゃないしね」


「ぶーーー」


「ぶーーーじゃないよ、全く……」


 話をしていると、教室から授業をしていた先生がこうべを垂れて出てきた。なんか僕のせいですみません。先生。その背中はとても寂しそうでもあった。


 *****


 2時限目の授業が始まったが、何かが変だ。先生が黒板に文字を書く。カッカッカとチョークが文字を書く音が聞こえ、周りの生徒も真面目に取り組んでいる奴もいれば、チョークの音や先生の睡眠呪文でぐっすり居眠りをしている奴もいる。そんな普通の日常のはずなのに僕の座っている膝の上にはなぜか………。


「ぬふっふっふ~。カズく~ん、スリスリっと」


「美羽姉2年生でしょ。何で1年生の教室にいるの? それに笑い方が気持ち悪いよ。あと勉強の邪魔」


「えー、そんなことないよ。私はカズ君と一緒に居られて嬉しいし、カズ君の勉強は私が見てあげるから。そしたらお互いWin-Winでしょ? だから問題ないよ」


「いや、それはどうでもいいとして……僕は美羽姉が授業をほったらかして何で僕の教室に居るのかを聞きたいのだけど……」


「どうでもいいってどういう事? ねぇ~カズ君?」


「ごめんごめんって、全然どうでもよくありませんでした。ただの言葉の綾だって」


「そう? ならいいけど。んーー! カズ君に抱き締めていると落ち着くな~♪」


 そう言いながら首に手を回し、至近距離で美羽姉の顔が近くてつい顔を背けたら、そのまま顔を僕の胸にうずめてくる。しかもいつもとは違う非常にだらしない素顔でよだれを垂らしている。授業中とのことあってクラス連中が「リア充爆ぜろ!」とか「奴に罪深き裁きの鉄槌を下す者は居るか!!!」とかで騒いでいる。この後の僕の安らかなる生活が迎えられるかというと迎えられない雰囲気だと僕の第六感が感じている。


「あの、岩永生徒会長? 失礼だと思いますが授業中なので退席して頂けないでしょうか? クラスの子達も困ってというか、今にも生徒会長の弟様に未来永劫消えて貰おうと何だか鋏やらカッター等取り出しているのですが……」


 僕は先生の言葉で周りを見た。先生の言うように、武器(文房具)を取り出し、何人かで固まって作戦会議をしている様子がうかがえた。


「……そこの教師風情が私とカズ君の中を引き裂くの? 私がお前を雇った時の契約内容をもう一度確認でもしてきたらどうだ?」


 契約? そういえば美羽姉はここの最高支配者もとい理事長であるから教師達を雇った時の契約もあるのか。どんな契約なんだ? 美羽姉の方を向くと、ちょうどその契約のことを言うようだ。


「高森学園 第一条。岩永美羽を甲、岩永和馬を乙とする。学園における甲と乙の接触は24時間365日とする。第二条。乙に対するーーー」


「ちょっと待てい!!」


「どうしたのよ? カズ君。今この屑でどうしようもない教師に理事長直々に契約内容を教えてああげてるのよ! どうして止めるの!」


「普通止めるでしょ、こんな契約内容ならね。何! 第一条からすでに私事じゃん! こんなの酷すぎるでしょ」


 教師の皆様にお詫び申し上げます。我が姉が大変ご迷惑をおかけしました。僕から姉に言っておきますのでどうか気にしないでください。と後で言っておこう。その前に僕は近くに居た信三にある電話番号を教えてもらい、電話をかけた。


 *****


「いーーーーやーーーー!!! カズ君助けて~拉致られる~私まだ初めてなのに~」


 首根っこを掴まれて、美羽姉が引きずられていく。そう先ほど呼んだスケットによって……


「変なこと言わない。それに和馬君に迷惑かけないの。だからこそ私を呼んだんだと思うよ」


「え!? 杏ちゃん呼んだのカズ君なの? 何でよ~酷い酷いよ~。それに何でカズ君は杏ちゃんの電話番号なんて知ってるのかな?」


「そ、それは信三から聞いたんだよ。多分こいつなら知ってると思って……」


 美羽姉は信三の事を睨み付けた。余計なことをしないでよと言っているようだった。


「……信三~? 貴方何でカズ君に杏ちゃんの番号教えてるのよ~。そのせいで私は今まさにこんな状態になって、カズ君と授業一緒に受けられなくなっちゃったじゃない!!」


 ここで一応の説明だけはしておこう。信三は僕の昔馴染みである事は話したが、実は多少の長い付き合いである為に美羽姉とも顔を会わせた回数もそれなりに多いのである。さらに信三が美羽姉を呼ぶ時は姉御あねごと呼ぶ。まあ信三は美羽姉の事は嫌いでは無いようで、何というか逆に慕っている感じであった。だが、美羽姉が昔に話していたが、実は死ぬほど嫌いとのことで本当は今すぐにでも自身の身体を清めたくなったり、周りの空気ですら除染してやりたいみたいだった。そして現在……


「俺のせいじゃねえよ姉御。和馬が……」


 僕に視線を向けてくるが、そんな事では美羽姉の怒りの呪縛からは逃れられない。それより美羽姉が副会長から脱出してるし……


「カズ君のせいにするんじゃないの! 変態ストーキング男君。そもそもどこで杏ちゃんの番号を入手したのかな? もしも自分で聞いたのではなかったら、個人情報漏洩の罪で一生社会に復帰できないようにして裏から手を回してあげるからね。で、実際どうなの?」


「そ、それは……ほ、ほら天峰先輩が可愛いからね。みんな多分知ってるんじゃないかな?」


「杏ちゃんの名前を呼ぶだけでも重罪確定。謹慎1年とする」


「え!? マジ? そんな事で謹慎……そもそも俺そこまで悪いことしたか?」


 僕は口を挟まずに聞いててビックリだ。だが、美羽姉の目……あれはマジだ。マジで1年間変態じゃなく、信三を学園から追放する気だ。はぁ~そろそろ助け船でも出すとするかな。


「美羽姉。信三の事許して貰えないかな? あいつも……」


「うん! 許すちゃう~♪」


 僕に抱きつきながら美羽姉は即断即決した。


「カズ君の為なら私は何でもするから。もしカズ君が夜の営みが必要だとしたら、お姉ちゃんはいつでも初めてを捧げる覚悟は出来てるからね♪」


 美羽姉が何を言ってるのか理解不能に陥っていた。あ、頭が追いつかない……。熱が出そうでクラクラする。僕は頭を抱えて……あああああぁぁぁぁぁーーー!!! 考えるのなんてやめたやめた。僕は副会長である天峰杏先輩に向いて言う。


「天峰副会長………岩永生徒会長を連れ出して下さい」


「分かりました。この度は生徒会長が大変ご迷惑をおかけしました。和馬さん、後日ちゃんと謝りますので生徒会室へ来ていただけますか?」


「は、はい……」


 その時、昨日の生徒会室の事を思い出した。確実に美羽姉に捕まりそう。その後何されるか分からないな。と考えていたら、天峰副会長が周りには聞こえないように僕に近づきささやいた。


「……生徒会長の事は私が押さえておきますから安心して来て下さい」


「本当ですか? それは助かります」


 天峰副会長はやっぱり周りをよく見ているし、それに優しいな。生徒会長はやっぱりこの人がなって方がいいんじゃないか? それに眼鏡を外した姿も見てみたいな。はっ!! 足下から嫌な気配が…………よく見ると、先ほど捕まった美羽姉が又しても首根っこ掴まれた状態で僕を見上げていた。


「……杏ちゃん、カズ君に近づき過ぎだよ~」


「ん? あぁ。すまない生徒会長。それでは今度こそ失礼いたします」


「バイバイ~カズ君。また後で~」


「うん。じゃあね、美羽姉」


 引きずられながら、僕に手を振って教室から天峰副会長と一緒に姿を消す。


「和馬、サンキューな。流石にあれはやばかった」


 信三がさっきの助け船の事でお礼を言ってきた。まあ僕も親友を失うのは辛いからな。っとそれよりも……


「先生どうもすみません。僕の姉がご迷惑をおかけしまして」


「あぁ大丈夫ですよ。生徒会長の事ですから……さあ授業を再開しましょう。では教科書の21ページを開いーーー」


 キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。


「……先生、本当にすみませんでした」


 僕は授業終了の鐘の中、先生に土下座して謝った。


 *****


 だが、美羽姉の「また後で~」という言葉がすぐに現実のものとなった。その後の3時限目、4時限目は落ち着いて授業を受けるつもりが美羽姉が教室に来て、また僕の席に座ってくるのだった。なのでろくな授業が受けられず、初授業が全くもって進まなかった。そのまま昼休みを迎え、学食で

 食事をするのだがーーー


「カズ君。あーーん」


「いいよ、恥ずかしいし。僕だって子供じゃないんだから一人で食べられるよ」


 何故か美羽姉が学食まで付いて来ていた。


「えーーー!! 私はカズ君に食べえて欲しいのになあ~。お姉ちゃんこの時間が楽しみだったのに……。それにカズ君だって朝言ってたじゃない……。『私とニャンニャンし放題で嬉しいでしょ』って言った時、カズ君は『悪くないね』って言ってたでしょ? 私、カズ君の事信じてたのに……ぐすん」


 わ、わざとらしく顔を背けているな、美羽姉。だけど、俺の言った事は事実だからな~どうしたものかな? ここは恥ずかしいからやっぱり断ろう。それに学食の連中が恨めしそうに睨んでくるから気分が悪いし……


「ごめんね美羽姉……やっぱり恥ずかしいし……それにーーー」


「そう……なら、口移しで~食べて~」


 目を瞑り、口に食べ物をくわえてこっちに振り向く。う~っと軽く唸っていて、か、可愛い…じゃなくさっきから腕を掴まれて身動きが取れない。つまり逃げられない。それに美羽姉の顔が近づいてくるし、このままじゃーーー





今回も「姉による学園支配!?」を読んでいただきありがとうございます。そして謝罪をさせて下さい。

七月中には出す予定でしたのを八月中旬まで延ばして申し訳ありませんでした。決して失踪ではないですが、そう思われても仕方ないと思います。なので、私の全力を持ちまして、どんどん投稿スピードを上げて行けるように致しますので、どうかお許し下さい。今回は前回の内容の続きで、文章量を三倍にして執筆しましたので楽しんで下さい。そして、どうかお許しください。

さぁ、学園での生活も始まり、楽しくなって来ました。美羽姉も積極的に行動しますね。何よりあんなことしても怒られない……素晴らしい!! てなことで次回もお楽しみに。

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