表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/40

第四話 入学式後Ⅱ

あらすじ

 

 風呂の中でついつい寝てしまった和馬。目覚めた時にはなんと!? 目の前に裸体の姉が!? 動揺するものも、追い出すことに成功する。だが、美羽姉に強く当たってしまって心配なので部屋を見に行くことに。ノックをすると、美羽姉はいつもと同じように俺に対応してきたのであった。

 部屋に最後に入ったのはいつのことだっただろう? あれは、僕が受験勉強を始める頃、美羽姉に学園はどんな感じか聞きに部屋を訪れた時だった。美羽姉があそこまで僕を同じ学園に通わせるにも何か訳があると思って、その辺りも多少気にはなっていた。


「……美羽姉? 居る? ………入るよ」


 ドアに張り紙で……以下略。部屋に入ってみると、机に向かって何かしらの勉強をしている美羽姉が居たが、よく見ると勉強ではなく、日記のような物を書いているみたいだ。


「…………」


 こちらにはまだ気づいていない。脅かすのも悪いので、その場で座って待つことにした。だが、待つという選択肢が間違っていたのだろう。十分経っても、二十分経っても、美羽姉は手を止めずに、日記のような物を書き綴っている。ああああああああ、もう待つのが嫌になってきた。僕は立ち上がり、美羽姉の真後ろまで来ると、肩を指先でトントンと叩いた。ようやく気付いたみたいで、こちらに振り向いた美羽姉の顔に指を突き立てる。


「ふにゅ……って、何でカズ君がーーー!! 私の部屋に!! はっ!ま、まさか、夜這い! ま、待って、お姉ちゃんまだお風呂入ってないの…だからね、あと少し待って欲しいの」


 最初の方が早口で「ま、待って」からしか、聞き取れなかったが、とりあえず応えておくかな。


「待てるわけないでしょ! (だって、あれだけ待ってたんだから)」


「えぇーーーー! ど、どうしたの!? 急に? そんなにお姉ちゃんとヤりたいの?」


 美羽姉が身体を抱え込んで、部屋の隅にあるベットの上にダイブ! そのまま女の子座りをしてこっちを見る。全くどんな聞き間違いをしたんだろうな。


「美羽姉。どんな聞き間違いをしたか分からないけど、僕はただ、受験勉強する前に美羽姉の通っている学園の事が知りたいと思って美羽姉の部屋を訪ねたんだけど」


「え? ……あ、あぁ、そういうこと。なら、高森学園のこと教えてあげるよ。色々知っておかないといけないしね」


 そのまま僕は美羽姉に学園の事を色々説明をしてもらい、その後は、受験勉強の嵐。さらには、一年間美羽姉が近づいてこないということが起こった。そう思うと、もうそんなにも時間がたったな~と、非常に懐かしい………がここで過去の話は置いといて、現在の話。今となっては懐かしき部屋に入り、美羽姉はベッドに、僕はすぐ近くの椅子に腰を降ろした。


「で、で、どうしたの? 明日は学校だよ? 早く寝ないと、寝坊しちゃうよ?」


 美羽姉はいつも通り。本当に、全く、これっぽっちも気にしていない感じだ。だけど、全く気にしていなくても、僕が発した言葉は逆に自分が気にしすぎて眠れないから、謝ろう。


「美羽姉。さっきは本当にごめん!! 別に怒ってあんなことを言った訳じゃないんだ! ただ逆上せそうになって、それでーーー」


 だが、その言葉は美羽姉の変態発言により、かき消された。


「ーーー謝ることないよ! 全然気にしてないから! むしろカズ君に罵られて、ご褒美だと思っているから!! ……お姉ちゃん、そのおかげで新しい世界に目覚めたのー!!!ハアハア… だから、あの時は風呂場を出たのは、興奮して…ハアハア…ゾクゾクして少しの方がまずいことになりそうだったから……だ、だからね。カ、カズ君は何にも悪くないんだよ」


 だ、だめだ。早くこいつをなんとかしないと。見た目は優秀、中身は変態の超ウルトラデラックス級の不審者になってしまう。知らない間に弟を…実の姉弟をそんな目で見るようになっていたとは、このままだと僕がお、お…………。その後は無意識に声に出てしまったようだ。


「……犯されるーーーーー!!」


「な!? お、お姉ちゃんはそんなことしません。カズ君が大人になるまで待ちます!!」


「いや、それでもまずいから!! 姉弟でそんなこと出来ないからーー」


「お姉ちゃんは法律に縛られません。民法第734条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでないって書いてはあるけど、こんな法律は私が変えるから問題ないのよ!」


「ある意味すごい執念……だな…」


 僕は美羽姉に対して呆れていたというより怖い。美羽姉に一年も会わなかっただけで、こんな超絶弟好き好きラヴチュッチュな性格になってしまうとは、お、恐ろしい。


「……聞こえたよ、カズ君。今、一年間会わなかっただけって思ったでしょ? ………私には弟エナジーが足りなかったのよーー!!!!!! だから、補充させて。大丈夫すぐ終わるから…」


「美羽姉……目が、目が血走って、獲物を捕食するハイエナ並みに怖いよ。そもそも弟エナジーって何!? 僕にはそんな成分はないし、補充なんてさせないよ」


 やばい……ここはすでに美羽姉のフィールド(部屋)。下手に動いたら、何されるかわかんないぞ。今いる場所は……美羽姉は窓側のベット、それに比べて僕はベットの反対側のドア、これなら逃げるチャンスはいくらでもある。僕は美羽姉の目を見ながら、熊を相手にしているようにゆっくり足を滑らせながら美羽姉と距離を作る。だが、そんな考えはすでに見破られていた。美羽姉は僕が足を滑らせると同時に視界から姿が消えていた。ば、バカな!? そう思うと同時に背後に気配が……フッと振り返ると、そこにいた。


「ふふふふふ。驚いたでしょ。これはね、相手の盲点を突いた移動方法よ。人には必ずしも見えない場所が存在する。そこの部分を狙って、私自身も移動する。そうすることにより相手の視界から「私が急に消えた」と錯覚して、その後も私を見失うって寸法よ」


「あ、ありえねー……人間がそんな動きできるわけね~、美羽姉はどこまで本気何だよ!」


 流石に今の動きにはビビった。だってそうだろ。人が……しかも自分の知っている人が急に視界から消えるんだぜ! 遊園地のお化け屋敷よりよっぽど怖いわ!! んん? そういえば、今日も似たような動きをする人を見たような……あ、居たな、親衛隊長とか言う人。確か名前は……岡野さん? だっけか?


「……あのー、美羽姉。少し質問いい?」


「何?」


「もしかして、今日居た、岡野さんにその技教えてもらったの?」


「……そんなわけないでしょ、あれは私が教えてあげたの。岡野さんはまだ完璧とまではいかないけど、同じような事は出来るよ」


「…………マジ?」


「うんうん。マジマジ。カズ君と会わない間に努力に努力を重ねて、頑張って習得したんだよ」


「どこの世界にゲーム感覚で「長時間のレベル上げでスキルを習得したよ」みたいなことしてるの!?」


「人生なんてゲームみたいな物じゃないの? だってお金稼ぎ楽だったし、温すぎるよ人生……」


「いやいやいや、人生甘くないから! たかが16年生きてる俺が言うのもなんだけど」


 僕の話が終わると、美羽姉の瞳の奥がギラっと光って見えた。


「まぁ、それはそれとして……カズ君。聞きたいことはそれだけ?」


 鳥肌がたった。僕の野生本能が「危険! 危険! 直ちに撤退を!」と脳内で響いて聞こえてくるようだ。さっきまでとは違って僕は机の近く、美羽姉はドアの前、完璧に逃げ場がない。いや、諦めるな僕。こんなところでゲームオーバーになるわけにはいかない! 何か? 何かないか? この現状を打破出来るものは! だが、考えている暇はなかった。


「カズくーーん! 確保~」


「やばっ!」


 僕は美羽姉の抱きつき攻撃を机に手をつき、間一髪避けるものの、避けたときに手の下にあったノートで手を滑らせ、床に倒れた。


「…………痛ってーー、何で滑らせたんだ? ……ん? このノートで滑ったのか」


「あ!!!! そのノートは見ない……」


 美羽姉の声が届く前に僕は落としたノートを拾い上げ、表紙を見る。ここで普通は「勉強用のノートでしょ? 中身なんて見ないよ」となるが、表紙に書いてある文字・・に目がいってしまった。ーーー「弟観察日記 第4016号 四月○×日 朝五時~夜一時」ーーー。目を疑った。困惑した。動揺した。疑念を持った。そんな様々な感情が俺の中で蠢いた。

 そう、まさに、僕は、薄暗い部屋の中、手に持つとそれは鉄のように重く…冷たく感じる……。そう、高校1年生になったある日。僕の手元には弟観察日記と書かれたノートが握られていた。ノートの中は朝五時から綴られており、十分単位で記入されていた。僕はその一つ一つに目を通してみる。


「朝五時、カズ君はぐっすり眠っている。寝返り回数0

 回、呼吸回数111回。健康面に問題なし。……ね、寝顔かわゆい~(ハート)。スーーー、ハ~。スーーーハ~」


 …………観察って言うよりもストーカーの記録みたい。って十分ごとに観察しているって事は、この時間に僕の部屋に来てるってこと? 外では十分ごとに僕の近くに居るってこと? 気になるが、聞いたら負けであるような気がする。後のページは何が書かれているかは気になるが、見たら後悔しそうなので、そのままにしておくことに、ストーカーしているのが事実か嘘かは後にして、それよりも……


「……美羽姉? これは何?」


 ノートを持ちつつ、美羽姉に向き直る。


「そ、それはね。…そう! カズ君の観察日記だよ? こんなの姉弟なら普通のことだよね? 恋人同士でも相手のことを想いながら日記に書くことだってあるんだから!」


「恋人同士でもそんなのないからね! どこも普通じゃないよ。いい加減目を覚ましてくれよ美羽姉」


 僕は信じたくなかった。美羽姉が僕のことを一人の異性として見ていることに、ありえない……ありえないありえないありえないありえないありえないありえない!! もしかしたらさっきの「覚ましてくれ」は僕自身に言っていた事かもな。そうだ、やっぱりこれは夢なんだ。なんだかんだで美羽姉は僕の入学祝いでこんなドッキリを仕掛けたに違いない。


「昔の美羽姉に……戻ってくれよ」


 心から叫ぶ、これが今の僕の気持ち。確かに美羽姉は完璧な女性と言っていいほど魅力的だ。しかし、僕にとっては「姉弟」だ。この事実に変わりはない。


「さっきから聞いてるけど、私は今の性格と変化ないし、私は昔からずっとカズ君の事……す、好きだったからーーーー! お願い。だから……………結婚して(ハート)」


「そんな告白、嬉しくねーよ」


 やはり、逃げよう。今はゆっくり考える時間が必要だ。


「美羽姉、今日はここまでにしてまた明日話そうよ。だから、この話はーーー」


 その時、頭に何かピリッとしたかと思うと、身体が痺れた。僕はそのまま床の上に倒れる。そして、気絶する意識の中、会話・・が聞こえた。


「い…がいたし……? 記憶…け…のは簡単…………。………な…います…?」


 美羽姉の他に誰か居る! だが、僕がそう思うよりも早く気絶をし、次の日には今日の記憶は綺麗さっぱりと消えていた。


 今回も「姉による学園支配!?」を読んでいただきありがとうございます。ついに「弟観察日記」が出てきて、美羽姉のストーカーっぷりも和馬に発覚……さぁどうなる? と読者の皆さんは思っていると思います。次回からは学園での和馬達を書いていきますので、お楽しみに!!

 感想やブックマークをよろしくお願いします。更新日はちょくちょく活動報告でお知らせするので、目を通しておいてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ