第十話 昔話
あらすじ
生徒会室で目覚める和馬。先生の本名、轟井美夜の正体も知ることができた。何だか美羽姉の近くにいる人達って人間離れしてるような気もするけど、気にしない気にしない。
だが、そんな先生と美羽姉が僕の事をシスコンと言い始めた。否定するが全然認めようとしない二人。直接美羽姉に違うことを言ってもらおうとするが、校内放送で宣言したせいで和馬はシスコン認定をされてしまうのだった。
学園に生徒会長の弟はシスコン野郎と伝わってしまったまま、ひとまず六限目の授業を受けるが、クラスの視線が痛すぎる。僕はそんな中、美羽姉と授業を受け、授業が終わって放課後になるが速攻で家に帰った。美羽姉は生徒会の仕事があるとの事で僕は先に帰らせてもらった。
家に帰るなり、自分の部屋に入ってすぐさまベットにダイブ。ベットに横になるとわかる、僕が今日はどれだけ疲れていたのかが。
「……はぁぁぁ~」
枕に顔を埋めて思いっきり息を吐きだす。これだけでも何だか心が落ち着く。今日だけでいろいろ有り過ぎた。美羽姉の事、学園での事、護衛の人がいる事……ってどれも美羽姉の事じゃないか。いやいや、他にも何かあっただろ! 例えば、美羽姉に親友がいた事や親衛隊があった事…………これも美羽姉の事じゃないか! 駄目だ、さっきから美羽姉の事ばかり考えてしまう。やっぱり僕はシスコン何だろうか? ベットの上で仰向けになって部屋の天井の一点だけを見つめる。昔の事を思い出していた。
僕の小さい時から遊び相手は美羽姉や信三だった。幼稚園や小学校なんかでも仲の良い女友達も知る限り一人くらいしか居なかった。そのせいでか近くの異性はその子と美羽姉ぐらい。何だか考えると近くの異性を基準としているよな僕。
「……懐かしいな~」
身体を横にして、机の上に置いてある写真立てを眺める。写真には僕の小さい頃の姿が収められていた。一緒に写っているのは美羽姉と信三、それと唯一の女の子の友達であった子が仲良さげにしていた。もう一人の女の子は三年前に親の都合で引っ越してしまって、連絡を取っていない為どこで何をしているかは現在は不明。懐かしくなり、ベットから起き上がってポケットに入れていたスマホを取り出し、画面を操作してあるところに電話を掛けた。プルルルルッ、プルルルルッ。何回かコールが鳴るが、出る気配が無い。
「……」
忙しいのだろうか? また後で電話する事にするかと、スマホを切ろうとした瞬間。
『あー、もしもし? 和馬? 何か用か?』
ようやく電話相手の信三に繋がった。今日中に連絡出来てよかった。ほっとしながら、僕は気になった要件を話す。
「信三さ、昔一緒に遊んだ女の子のとか覚えているか?」
信三は疑問に思った事だろう。そりゃそうだ、電話でいきなり女の子の事覚えているかだもんな。それもあんまり女の子の事を話さない僕が急にこんな電話をしてきたんなら、尚更不可解に思うはず。だが、信三はそんな事を言わず、僕の急な話でも答えてくれた。
『全く、そんなの覚えているだろう? 俺は女の子に関しては絶対忘れない。だっていつか会った時とかにさ、「久しぶり、元気にしてた?」「え!? この人私の事覚えててくれたんだ、大好き! 付き合って!」って展開になるかもしれないだろ?』
信三の言っている事はは傍から見ると馬鹿みたいと思うかもしれないが、これは本人にとっては大真面目らしい。実際、彼が女の子の名前やその他好きなものを間違えたり、忘れたりした事は無い。これをもっと勉強に活かせれば良かったんだがな。
「そんな展開には普通ならないから、諦めろ信三。人間諦めが肝心だぞ」
『くっ! そんな、そんな事言われてもな、俺にはどうしても諦めきれないんだ!! 俺を好きになってくれる女の子はいる! いるに違いないんだ!』
「いい加減、自分の性格考えたら? 女性からはお前の下心丸見えだから」
途中から逸れて、そんなどうでもいい話を数分したところで、信三が話を戻してくれた。
『それより、昔の女の子がどうかしたのか?』
「……あぁ、そうだった。……その子の名前とかーーー」
『赤崎千景。お前、昔はチカちゃんって呼んでた、懐かしいな。……それで何で急にチカの話?』
ただ単に懐かしくなって、連絡したくなったとは言えないよな。信三だって連絡先までは知らないだろうし、迷惑かもしれないからな。一応このまま信三から千景の事を聞こうかな? それと理由も言わないと信三が心配するかもしれないからな。僕はまた電話で理由を話す。
「……信三。実はな、机の上の写真立て見て懐かしくなってな、お前から思い出話でも聞こうと思って連絡したんだ。僕って記憶力悪いだろ、だから信三ならと思ってさ」
写真立てを持ちながら、僕は信三に理由を話すが、納得してくれるか?
『写真立て? あぁ、昔撮ったやつか。俺もコルクボードに貼って部屋に飾ってるよ。いや、懐かしいな。この時は小学校高学年くらいか? いや、本当になついな』
信三も今頃、僕と同じように写真を眺めているのだろうか? てか、この時小学生だったか。自分の姿を熱心に見つめていると、電話越しの信三が話の続きをしようと話を切り出してきた。
『そんで? 思い出話の何を聞きたいのさ、女の子関連はよく覚えているから、任せとき!!』
あぁ、今まさに信三がグッチョブサイン出してるのが想像できる。どうせまた『俺、カッコいい奴だろ! キリッ!』とかになってんだろうなぁ。でも、確かに今の信三はカッコいい。女の子関連でなければ……。僕は早速聞きたかった事を信三に聞いてみる。
「それでさ、千景ってどんな奴だったっけ? 記憶が微妙なんだけど……」
『チカの性格か~。ふむふむ………』
何故か急に信三が黙ってしまった。さっきまで任せとけとか言ってたのに、何か千景の性格に問題があるから喋れませんって言ってるみたいで怖いわ! 暫くして、信三の声がようやく耳に届いた。
『……まぁ、性格としては、おてんば娘、男勝り、美羽姉とよく喧嘩してたな……』
ん? そんな喧嘩があったなら、僕が忘れるわけがない。過去の記憶を探ってみるが、当てはまらない。美羽姉も頻繁に怪我をしていたわけじゃないしな。唸っている声が漏れたのか信三が喧嘩の事を詳しくは無してくれた。
『喧嘩っても、姉御が強すぎて、チカの方が一方的にやられてたよ。俺はその怪我の治療をしてたけどな』
「ふーん……なるほどね」
その後も少しずつ少しずつ時間をかけて昔話を聞く。たまに別の話になるが、それもまた楽しく有意義だとも思う。空が暗くなり始めた頃まで付き合ってもらった。おかげで段々と思い出してきた感じがする。まあ、感じがするだけで完璧ではないが……。
通話を終わりにしようかと話に出てきたが、信三が今日の僕のシスコン疑惑について話を出してきたせいで終わらなくなってしまった。そこんとこはスルーして欲しかった。さっさと終わらせて疑惑が大きくならないうちに電話を切らないと……。僕は自然に慌てず、その事を否定した。
「全く、僕はシスコンじゃないって言ってるのに……」
僕にとっての美羽姉に接し方は普通の事だと思うが、信三がそれは違うなと否定してきた。いつもは僕の味方の信三が珍しく違うと言うのでビクッとした。
『昔のお前と今のお前だと姉御に接する態度が違う……。何つーか、昔の方がベタベタすんの拒否ってた様な気がすんだよな』
「そ、そんな事ないだろ? 今も昔も何も変わらねーよ」
信三の言ってることはほとんど合っている。確かに昔よりも美羽姉の事を遠ざけようとか思わなくなった。それに美羽姉でも知らない僕の秘密が理由になっているのはもう少し先になってからの話だろう。
『そうか? まあ、何かあったら相談乗るから』
「ん? あぁ、ありがとうな」
軽く返事をして信三との通話を切る。スマホをベットの上に放り投げ、部屋にあるベランダに出る。日も傾いて周りの民家の灯りが次々とつく。そんな光景を眺めていると、家の前の道を歩いて帰ってくる美羽姉の姿が確認出来た。さて、そろそろ晩御飯の時間だから風呂にでも入ろうかな。ベランダから部屋に戻り、風呂の準備をする。
美羽姉は帰ってくると、すぐに食事の準備を始めた。僕はその間に風呂に入る。昨日みたいに風呂で何もしてこなければいいけど……。晩御飯ができるまでのんびり湯船に浸かっていることにした。
今回も読んで頂きありがとうございます。なんと今回第十回目の投稿となりました。何だかんだで失踪することなくやっていけています。本当に読者様に感謝です。今回は幼馴染の名前が出てきました。何話かしたら出したいと思いますのでお楽しみに。
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