最低の夏
あったかい春が過ぎ、季節は夏へ移り変わる。地元の小学生達は学校の裏庭に向日葵を植え、キャッキャと夏の鋭い陽射しに興奮している
明日から夏休み
高校生もあと少ししたら夏休み
夏休みほどテンションの上がる瞬間はない
金曜日の夜に子供向けアニメを見て「ああ、明日から休みだ!」と明日からの休みを実感し得られる幸福感をこれから40日間子供たちは体験するのであろう
アパートの二階の一室。
学校の裏庭が見えるこの部屋は窓を開けると風通しが良く、気持ちいいひんやりとした涼しい風が部屋へ流れてくる。
しかし風通しが良いせいか、インスタントラーメンを作ろうと点けたコンロの火は風に揺られ弱くなってしまう
風通しを取るか、コンロを取るか
腹の減った男は当たり前のように窓を閉めた。
沸騰したお湯へラーメンを入れ、箸を泳がせるように麺をほぐす
「…これからどうしようか。」
憂鬱になりながらもラーメンを作るこの人物。
名前は名護 向日葵。名前はヒマワリでも性別は男。この前日にバイトをバックれた20歳のフリーターである
彼は不真面目なわけではない。学校もきちんと卒業し、19の時にはバイトで一人暮らしの資金を貯める生活をしていた
バックれを決めたバイト先では仕事も真面目に行い、職場の人間達への印象も抜群に良かったのだが彼自身は良く思っておらず、なんだか苦痛で急遽バイトに行くのをやめた。
職場の人間からしてみればなんであんな真面目な人が…と思うかもしれないが
残念、名護 向日葵という人間の根っこの部分は腐りきっているのだ
もう一度窓を開け、安い味の塩ラーメンを鍋に入れたまま向日葵は豪快にすする。新しい風を部屋へ迎え優雅にすする安物の麺もいつもより美味しく感じるものだ
ポキポキ♩とポッケに入れてあったiPhoneが音を鳴らし振動し、向日葵はなんとなく誰からの通知なのか察しがついた
(今なにしてんの?)
(あ、バイト?)
向日葵はラーメンを咥えたまま返信をする
(ばいとばつくれた)
右手には箸。左手でテキトーに返した言葉へ奴は何事もなかったように返信してくる
(バックれかよw最低だなお前ww暇ならちょっと俺んち来いよ。なぜなら俺が暇だから!)
(暑いからお前が来い)
(行きます)
なんなんだ、こいつ
人生で何回も訪れたこの季節
でも、なんだか今年はやけに太陽が睨みつけてくるみたいに輝いていた




