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青天の霹靂

 人生っていつもどこかでイベントが起こってる。それが何のイベントなのかわからないから…こう言うのかな…


 『青天の霹靂』



『今日、ここに来たのはですね。あなたの旦那様が、離婚届を提出された事を知らせるために来ました』


『は?』




 ー2012年7月ー 

 北カルフォルニアの夏は今年も暑い。あまりの暑さに、蝉さえも鳴くのを諦めてしまうほど、クソ暑いし蚊もいない。これって凄いよね。暑くて蚊が出て来れないなんてさ。


 まだ午前10時前だと言うのに、もう家の前のアスファルトからはすでに陽炎がゆらゆらと立ち上る。今年は特に連日ニュースでも、記録的な暑さだと騒がれているくらい、本気で暑い。この北カルフォルニアの暑さは半端じゃない。何しろと気づかないうちに日焼けをしているから、達悪い。

やはり湿度がないからなのかな。うっかりキャミなんか来て外にでも出た日には、物の1、2時間で肩も背中も水ぶくれ状態よ。

もしこれで湿気がプラスαされたら、恐ろしくてガクぶるものよ。


今日も日差しが強いね〜でもいい日になりそうだ!


 私は芽依。来月に初めての出産を控えている。そんな幸せいっぱいの芽依は、大きなお腹を抱えたまま呆然とその場に立ち尽くす。


 遡ること5分前。我が家のドアチャイムが鳴り響いた。


『お義母さん?それともお義祖母ちゃん?』おかしいな、今日は誰も家に来るような予定なんてないけどな。旦那は元気に仕事だし、あれ?確かお義母さん達は夫婦で何やら初孫誕生のための買い物に行くって言ってってたよね…。じゃあ、今玄関に来てるのは誰なの?


 旦那でもない、友達でもないし、義両親でもないって…。もしかして宅配かもって思ったけど、その考えは真っ先に打ち消した。来週には芽依の父が日本から出産祝いも兼ねて来る。となると本当に今、ポーチにいる人誰?





なら…誰よ?





 そっとドアスコープから除けば、そこに立っているのは黒ずくめの男女。何コレ?M◯Bなわけ?うちには宇宙人なんていないわよ。刑事?それとも、移民局?違うっぽい、なら何なの?




『こんにちわ。芽依 アームソンナさんですか?』


『は、はいそうですけど…?(あやしい。何でこの人達、ウチの名前知ってるん?スパイなの?)どちら様ですか?』


『実は私達、こういう物ですけど』


『裁判所の職員…?』


 私の目の前に出されたのは、顔写真付きの裁判所の職員の証明札。よくドラマとかで職員用のIDカードがあるけど、そんな感じの物って考えてくれたら良い。顔写真入りだし、まじまじとIDと目の前にいる2人がマッチしてるか、何度もジロジロ見てた。


 その結果…ほ、本物だ…。ん?ちょっと待って。なんで裁判所? 一体何? 私何もしてないアル。何も悪い事してないアルヨ。


 軽くパニックを起こして頭の中で片言になってた。『あ、あの…お話の続きをしたいんですが…』すまなそうに言われて、ふと我に返った私に、彼らはもっとパニックに陥る言葉を言って来た。


『今日、ここに来たのはですね。あなたの旦那様が、離婚届を提出された事を知らせるために来ました』


『……』


『奥さん大丈夫ですか?』


『え…あ…はい…聞いてます。もう一回言ってください』


思わず目眩がして来た。


『今日ここに来たのはですね、あなたのご主人が離婚届を提出されたことをしらせるために来ました』


『奥さん、大丈夫ですか?』


『…あ、は、はい…』


『こちらがその書類です』


 私に手渡されたA4サイズの真っ白な封筒。これにはこれから始まる(ウィル)とウィルの家族を巻き込んでく。それが大きな戦いになる事を予想させるほど、不気味に白く自分の手の中に映えてた。


『目の前で開封して下さい』


『は?』


『規則なんです』


 いきなりそんなこと言われて、はいそうですかって開けるようなバカはいないと思うけどね。

 もう、受け取ったんだから帰って欲しいんだけど。暫し芽依冗談でしょ?目の前の二人を見ても、帰る様子は一向にない。

こうなったら梃でも動かないわよって顔でこっちを見られてもね…。小さく吐息を吐いた。そんな私に急かす様に早く開けろと言って来る二人。

これがプレゼントとかだったら、嬉々として開けるわよ。自分の結婚生活が終わるかもしれないって書類を他人の目の前で開けるって事自体、私は慣れてないの!心の中で文句を言いながらも、目の前の二人を軽く睨んだ。

 マジなの?プライバシーの侵害はどこに行ったのよ!?

ええままよとばかりに開封した封筒の中には、彼らが言っていた様に離婚届が受理された事を知らせる手紙が入っていた。


『どうして? どうして離婚届が受理されるんですか? 私はサインしてないのに。同意もしてない!』


『カルフォルニアでは、夫か妻のどちらかが離婚届にサインしてあれば、受理は可能です。ではこれで失礼します』


 やれやれ仕事が終わったとばかりにさっさと引き上げてく。そんな彼らに、腹が立った。そりゃああれだって彼の仕事なんだろうけどさ。それでもむかつくじゃない。何で私だけなの?他の人だったら良かったのに…。

 

 身重の私には辛いよ。少しだけぽっこりして来たお腹には、私達夫婦の待望の赤ちゃんがいる。


 

 ウィル…どうして?私はあなたが分からなくなって来たよ。



『いつか子供が出来たらいいね』なんて笑い合っていた、あの頃はもう来ないの?

 



以前に書いていた『いつか笑顔になれる日まで』の改訂版です。

タイトルも変更することにしました。

正に晴天の霹靂です。

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