疑問の帰宅
きぃぃぃぃ・・・
ゆっくりと小屋を開ける。
あたりは既に暗くなり始めていた。
「結局見つかりませんでしたね。」
「あぁ・・・そうだな。」
一日中歩き続けたせいでもうクタクタだ。
今日はもう帰って寝たいよ・・・。
「あの、まだ宇津介さんはまだ戻ってきてませんか?」
賢者が尋ねる。
「えぇ、まだ帰ってきていません。全くあの子はどこまで言っちゃったのかしら・・・」
「そうですか。ありがとうございます。」
「どうします?今日はもう帰りますか?」
「帰ろう・・・。もう疲れた。」
「わかりました。じゃあ魔法使いには後日会いにきましょうか。」
そう言って賢者は扉を開けた。
きぃぃぃぃぃ・・・
「あれ?今誰かとすれ違いませんでしたか?」
「気のせいじゃないか?それより、早く帰ろう・・・。」
「そうですね。」
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ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・
帰りの電車に揺られながら俺は魔法使いのことを考えていた。
どんな人なんだろうなぁ。
・・・ZZZ
ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・
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「あぁ~。疲れたぁ・・・。」
家にたどり着いた俺はすぐにベッドに倒れこんだ。
気を抜いたらこのまま寝てしまいそうだ。
「着替えなきゃ・・・」
そう思って顔を上げると賢者は俺のパジャマを持ってきた。
「はいどうぞ。お風呂はいま沸かしてますから少し待ってください。ご飯も作りますね。」
そう言うと賢者は台所へ向かった。
「よくこんな見知らぬ俺の面倒を見てくれるな・・・」
湯船に浸かりながら俺はつぶやいた。
おそらく、賢者は夜ご飯を作っているだろう。
本当によくできた奴だ。
「もし、あいつが女だったら・・・」
って何考えてんだ俺は・・・。
「もう出よう・・・」
「・・・えぇ。会いにいったんですが・・・。はい。・・・」
お風呂から上がると賢者の話し声が聞こえてきた。
電話でもしているのか?
「はい。予定通りです。・・・かしこまりました。では・・・」
「誰との電話?」
「あぁ、勇者様。王様ですよ。」
あいつか。
「いつも連絡をとってるのか?」
「えぇ、逐一行動を報告しています。」
「へぇ~。お前も大変だねぇ。」
「まあまあ、そんなことよりご飯を食べましょう。今夜はオムライスですよ。」
「そうだな。食べるとするか。」
「いただきます。」
「どうですか?」
「う、上手い。」
少なくとも俺が作るより相当美味しい。
「凄いなぁ。料理の練習とかしてたのか?」
「いえいえ、いつも作ってれば自然に上手になりますよ。」
俺だって毎日作ってるのに・・・。
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「あら、おかえりなさい。」
「ただいま~。また遠くまで行ってしもうたわ~。」
「全く・・・。いつもそうなんだから。」
「へへへ。すいませ~ん。」
「そういえば、今日あなたにお客さんがきてたわよ。」
「私に?」
「そうそう。男の人が二人。」
「へぇ~。そいつは悪いことをしたなぁ。どんな人やった?」
「そうねぇ・・・」
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「ご馳走様でした。」
「お粗末様でした。じゃあ片付けちゃいますね。」
賢者はそう言うと台所へ消えていった。
「ふぅ~、美味しかった。」
賢者の料理は本当に美味しかった。
一体どれだけ料理を作ってきたのだろう。
俺の料理なんて足元にも及ばない。
・・・そういえば、魔法使いも仲間になったら家に来るのだろうか。
魔法使いは女って言ってたし、家に来るとなると・・・。
「それって・・・いろいろ大変なんじゃないか?」
賢者が台所から帰ってくると、俺は聞いてみた。
「賢者はなんで家に来たんだっけ?」
「そりゃ、仲間ですからね。一緒に居たほうが良いかと思って・・・」
「ってことは、魔法使いも仲間になったら家に来るってこと?」
「そうですね・・・。来ないんじゃないんでしょうか。」
「えっ?どうして?」
「別に強制ではないので・・・わざわざ知らない男の家に来ないんじゃないでしょうか?」
「強制ではないのか・・・。じゃあ、賢者は好きで家に来てるの?」
「いえ、私は王様から命令されているので。」
「俺の家に居ろって?」
「いえ、アドバイスをしてやれと。」
「ふぅん。」
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「じゃあおやすみ~。」
「おやすみなさい。」
暗闇の中で俺はひとり考えた。
別に賢者は家に居ろとは言われてないわけだし、賢者にも自分の家がある訳だし。
人の世話をするのなんて面倒だろう。
それなのになぜ賢者は家に来てる・・・
・・・ZZZ