二つ目の冒険
窓からまぶしい朝日が差し込む・・・
「ん・・・もう朝か。」
ゆっくりと俺は体を起こしていく。
俺の名前は松崎勇。いや・・・勇者と名乗ったほうがいいかもしれない。
そう、俺はつい昨日から勇者になったのだ。
きっかけは、怪しい一枚の手紙だった。
最初は半信半疑で・・・今も決して信じている訳じゃないが。
その手紙の指示に従っていくと、王と名乗る・・・これも怪しい男に会った。
俺は眠い目を擦りながら昨日の出来事を徐々に思い出していく。
その後、俺は指示されたバーへ向かった。
そこで俺は賢者と名乗る男に出会った。
・・・賢者?
「おはようございます。勇者様!」
「うわぁ!」
不意に声をかけられて驚いた。
そう、この男こそが賢者である。
昨日から同じ屋根の下で暮らすことになった。
・・・まだ納得はしていないが。
「やっぱり、自分の家に帰ったほうがいいんじゃないの?」
「いえ、勇者様のお供をするのが私の仕事ですから。」
・・・正直居心地が悪い。自分の家だってのに。
ましてや、出会ったばかりの男が家の中にいるのだ。
どうしても身構えてしまう。
「そんなに緊張しないでください。これから一緒に旅をしていく仲間じゃないですか。」
何でお前はそんな落ち着いていられるんだ。
ここは、人の家だぞ?
そんな気持ちはおさえつつ、俺はゆっくりと立ち上がり大きく体を伸ばした。
同時に腹の虫がなった。
「そういや、昨日夜ご飯も食べずに寝ちまったんだったな。」
時計を見ると、すでに9時を指している。
そりゃ、お腹も減るわけだ。
「朝ごはん食べるか・・・」
「あっ、準備できてますよ。」
「えっ?」
食卓にはすでに朝食が並んでいる。
「いつの間に・・・」
「今日は7時には起きていましたから。」
へぇ、働き者だなぁ。
そういえば、心なしか部屋が綺麗になっている気がする。
・・・なにも盗られてないよな?
やはり、信用はできない。後で貴重品などは確認しておくか。
「どうかしましたか?」
「いや、別に・・・。朝ごはん頂くよ。」
「どうぞどうぞ~。」
「ごちそうさまでした。」
「お粗末さまでした。」
この日の朝食はいつも以上においしかった。
俺にもこれくらい料理の腕があれば・・・。
ごはんも食べ終わり、テレビを見ながら寝転んでいると賢者に声をかけられた。
「あの・・・今日は何もしないんですか?」
「ん?何かすることあったっけ?」
「本気で言ってるんですか?呆れた・・・」
そういえば、昨日の回想の途中だったな。
俺は、賢者に出会った後不良に絡まれた。
その場はなんとか逃げ切ることができた。
その後王のところに戻って・・・
「王様に魔法使いに会いに行くように命じられたでしょう!!」
賢者が大声で言った。
「そ、そうだったな。」
俺はあまりに突然のことだったのでたじろいでしまった。
賢者が・・・怒るとは。
「もう、しっかりしてくださいよ。」
「あぁ、悪い。もう全部思い出したよ。」
王の命を受けた後、賢者と共にこの家に帰ってきたのだ。
「思い出したのなら速く行きましょう。魔法使いの所へ。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。準備させてくれ。寝癖もそのままだし、着替えもしないと・・・」
「なるべく速くお願いしますね。」
「準備できた。行こうか。」
あれから30分後、準備ができた俺は賢者に声をかけた。
「やっとですか。行きますよ。」
これじゃどっちが勇者だかわかんないな・・・
「あれ?今日は王の所へ行かないのか?」
「多分、大丈夫でしょう。特に何も言われてないので。」
「ふーん・・・」
「王様に会いたいんですか?」
「会いたくねーよ・・・」
そうこうしている内に、俺たちは最寄の駅に着いた。
「ここから11駅だっけ?」
「そうです。」
「ってことは40分くらいだな・・・」
王の居るビルがある駅を通り過ぎ、そこから8駅。
電車の中はそこまで混んでいない。
バイクとか運転できたら便利だなぁ~・・・
なんてことを考えていると賢者が話し始めた。
「勇者様は・・・魔法使いに会うのは楽しみですか?」
「え?まぁ・・・普通かな。」
「そうなんですか。私は楽しみです。色んな魔法が見られますからねぇ。」
「はぁ・・・」
魔法って言っても・・・ライター使ってたしなぁ。
あんまり期待はできそうにないな。
「ここか・・・」
「着きましたね。」
目的の駅に降りた俺たちは目の前に広がる景色をみていた。
「結構大きい森なんですね・・・」
「ここは、こんなに自然が残っているのか。」
桜が満開だ。
魔法使いがいそうな雰囲気ではない。
「もっと怪しい感じだと思ってた。」
「きっと華やかな魔法使いなんですよ。さぁ行きましょう。」
俺たちはゆっくりと魔女の森へ足を踏み入れた。
風が吹きぬけて、桜の花びらが散る。
こんな所もあったんだなぁ。
どことなく懐かしい気分になった。
今度はゆっくりお花見に来たいものだ。
森はまだまだ続いている・・・。
先は長そうだ。
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「ふふふ、楽しみですね勇者様たちは・・・」
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