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現代における魔王討伐  作者: 藍川 捺槻
第一章  勇者誕生
2/8

新たな扉

ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・



電車に揺られながら、俺はもらった手紙を見つめていた。

「勇者かぁ・・・」

いまいち実感の湧かないまま指定された場所へ向かっている。


目的地はそう遠くなく、電車で3駅程度だ。

窓からはなんの不思議もない、いつも通りの町並みが見える。

俺はそんな様子を見ながら、目的の駅へ着くのを待っていた。

電車の中では女子高生が騒いでいる。

いつもと変わらない風景だ。



「さて、こっちで合ってるよな・・・」

駅へ着いた俺は、片手に地図を持って目的地に向かって足を進めていた。

地図と道を交互に見ながら歩いていく。




初めて来た町ではないので、意外とすんなりと目的地に着くことができた。

「この建物か・・・」


何の変哲もない雑居ビル。

まぁ予想の範囲内だ。

もし、奇抜な外観であったら今頃帰路についていただろう。


「えーっと・・・3階だったかな。」

そういえば、このビル。来たことがあるな。いつだったっけ?


そんなことを考えながら階段を上っていき、気づけば扉の前まで来ていた。

この扉の向こうにはいったい何が待っているのだろうか。

俺の心臓は高鳴ってきている。


「やっぱり帰ろうかな・・・」

急に怖くなってきてしまった。


よくよく考えてみれば、差出人もわからない手紙をあてにしてここまで来たのだ。

もし、いたずらだったらどうしよう。

もし、ここがヤクザの事務所だったら・・・

考えただけで、ぞっとする。


「どうしようかなぁ・・・。」

あれこれ迷った結果、俺は入るかどうかをコインで決めることにした。

表がでたらこの扉を開く。裏だったら・・・帰ろう。

俺はそう決めて、財布の中から小銭を取り出した。500円玉だ。


「よしっ。」

500円玉を指ではじく。

宙を舞う500円玉。

俺はそれを取ろうとした。


「しまった!」

そう思ったときにはもう遅かった。

取り損ねた500円玉は、そのまま地面に向かい落ちていく。

着地した500円玉は転がる。


そして・・・

「あっ!」

500円玉は扉の下にある隙間から、中に入ってしまった。

「これは・・・どっちなんだろう?」

中にあるのでは、もちろん結果がわからない。


「500円・・・入らないととれないよなぁ。」

その隙間に、手は入りそうにない。

「仕方ないか。」

俺は、意を決して扉を開けることにした。


コン、コン。

まずは2回のノック。

返事は・・・ない。


コン、コン、コン。

今度は3回だ。

返事は・・・やはりない。


コン、コン、コン、コン。

・・・無反応だ。


ドンッ!

今度は強めに扉を叩いた。

何も返ってこない。


誰もいないのかな。

そう思い始めた途端、安堵感が生まれた。

誰もいないのなら怖くはない。

俺は勢いよく扉を開けた。






・・・・・内装はとてもすっきりとしていて、清潔感があふれていた。

余計なものは一切なく、机と椅子だけが置かれている。

社長室ってこんな感じなのかな・・・



部屋の中をゆっくりと眺めていると、ふいに後ろから肩を叩かれた。

心臓がドクンッと跳ね上がる。

あわてて振り返ると、そこには白い口ひげを蓄えた俺より背の高い30才だと思われる男性が立っていた。


目が合って数秒間、驚きと恐怖で俺は固まっていた。


そんな俺を見ていたその男は警戒心を解こうとしてか、軽く微笑みを浮かべた。


そして口を開いた。

「おぬしが・・・勇者か?」


「へ?」

我ながら情けない声を出したと思った。

再び時間が止まる。






・・・床に落ちた500円玉は、裏を向いていた。






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