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幼馴染みには、ご用心?

作者: 春蘭


 出来心で私は、寝ている幼馴染みにキスしてしまいました。







幼馴染みには、ご用心?



「ねぇ、今日一緒に帰…」


「あ、俺、今日用事あるから…。先帰ってて!」


「あっ、ちょっと!」


 言うだけ言って、彼は去って行った。私が彼にキスした日から、特に何も進展ナシ。それどころか、避けられてる感じすらする。


(まさかバレた?でも確かに眠ってたのに…。も、もしかして誰かに見られてたとか!)


 冷や汗をかくのが分かった。一度考えるとぐるぐる脳内を回り、ネガティブな方向へと向かう。今頃になって後悔してきた。


「嫌われちゃった…?」


 問いかけた言葉に答えは無く、結局その日私は独りで帰った。







   *


「早く出て来ないかな…。」


 私は、隣の彼の家の前で待っていた。彼と一緒に登校するために。


(避けてる理由聞かなきゃ…。あ、その前に謝った方がいいのかな?でもまだキスが原因か分からないし…。)


昨日と同様、悶々と悩む。こんな私でよくキス出来たと思う。自分に拍手したい。



何故、一線を越えてしまった?


 今までの幼馴染みの位置も切なかったけれど、避けられてる今に比べれば、側にいられるだけで幸せだった。

なのに、なぜ───。


(好き、だから…?)


無防備な寝顔に誘われ

もどかしさを引きずり

幼馴染みから離れたくて

気持ちが抑えられず

ただ感情のままに手を伸ばした


(どうであれ、最低だ…。)


 キスしてる時はあんなにノリノリで、満たされてたのに。今は後悔と罪悪感しかない。我ながら呆れる。


「なんで、バレたんだろ…。」



ガチャ、


 ドアが開く音がして、振り返る。眠そうな彼と、目が合った。


「あ、あのさ…!」

「ごめんッッ!!」


 理解不能な謝罪を叫び、ダッシュで私を通り過ぎる君。


「待って!」


 離れてしまう前に、私は彼の腕を掴んだ。君はビクッと反応する。


「なんで、避けるの…?」


 発する言葉が、震える。鼓動がやけに早くなり、体が熱い。彼の答えに大きな脅えと、小さな期待が混じる。


「――俺、」


やだ……!


「ごめん!!」


「えっ?」


気が付けば私は謝っていた。


「ね、寝込みを狙うなんて最低だよね!勝手にキスしてごめん!アンタの気持ち無視して…!」


違う、こんな事が言いたいんじゃない。私が、私が言いたいのは───


「本当に、ごめん!私なんでも謝罪するから…」


「ちょっ、オイ」


「お願いだから、避けないで…。嫌いにならないで……!」


最後のほうは、悲鳴に近かった。涙が瞳に溜って、『情けないな』とか、『恥ずかしいな』とか、あと『朝から近所迷惑かも』とかも、頭の隅で思ってた。


「好きになってくれなくていいから……。」


こんなの告白してると同じだ。しかも、言ってる事めちゃめちゃだし…。



「「………。」」


嫌な沈黙が流れる。私は自分が哀れに思えて、うつ向きっぱなし。君の顔が、怖くて見れない。


「―本当に、なんでも謝罪する?」


「え…。」


(やっぱり、怒ってる?)

ズシリ、心に重いものが沈む。心臓の音が煩くて、息苦しい。


「じゃあ……」


「!」


彼の手が、私の頬に触れた。ビクリと体が震える。思わず目を強くつぶった。


(叩かれる──!?)




ちゅっ



(――え?)


待っていた衝撃は来ず、変わりにきたのは、唇に柔らかい感触。


「………。」


「………。」


「……ええっ!?」


「遅ッッ!!」


 私は信じられないと、口をぽかんと開ける。彼はバツの悪そうな顔をして、目をそらした。


(え、ちょっと待って。今のって、もしかして、いやもしかしなくても…)


状況を理解した途端、カッ、と顔に、いや体全てに熱が集まる。


「な、なんで赤くなるんだよ!お前だって俺に散々キスしたくせに!」


「誤解される様な言い回しするな!!そういうアンタだって、真っ赤じゃない!!」


「こ、これは暑いせいだ!!」


「コート着てマフラーつけた完全防寒した奴が言うセリフかっ!」


「そ、それは……!」


「何よ……。」


 お互い赤面して睨みあ、…見つめ合う。しばらくそうしていたが、不意に彼がため息をついた。


「お前って、激にぶ…。」


 君は呆れた様に、微笑む。その表情につい、ドキッとしてしまった。


「嫌いになんか、なるわけ無いだろ。」


「―なんで?」


「……はぁ。」


またため息をつく彼。2回目はさすがに腹が立つ。何が言いたいの?と、目で聞いた。


「俺は、好きでもない女にキ、キスなんかしない!」


「………。」


「………。」


「………ええっ!?」


「だから遅いって!!」


(だって、それは、つまり……?)


 体がみるみるうちに熱くなっていく。心拍数が早過ぎて、死んでしまうんじゃないかとさえ思った。



「お前は?なんで俺にキスした?」


「ッ!!」


彼がうつ向いた私を覗きこんでくる。死ぬ程恥ずかしいけど、目がそらせない。

(急に真剣な顔しないでよ)

(分かってるくせに)

(やっぱバレてた?)

(いつから起きてたのさ)

言いたい事はいっぱいあるけど、今言わなきゃいけない言葉は…………




「───私は、」


ねぇ私たち

幼馴染み卒業して、いいかな?



読んで頂き、ありがとうございました。これは、短編『居眠りには、ご用心?』の続きみたいになってます。単品でも読めますが、そちらも読んで頂くとより話が分かりやすいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 甘尼ですね(漢字違っ 目覚めのキス憧れですね! ちょっとステップふんだ二人。 男性が書いてるように思いました
[一言] はじめまして、春日まりもです。 今回、初めてこの作品を読みましたがちょっとの文章なのにメチャクチャドキドキしました。幼馴染っていいなぁ〜と思いました。 本当に久しぶりにドキドキ感が味わえまし…
[一言] 本当の話だったら おお泣きしてました・・ てか・・今・・おお泣き中(まじに・・) ありがとう・・・・>><
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