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まひる

 金髪の少女が、タクシーから降りてきた。


「わぁ……」


 少女は、斜め上を向いたまま、その場でぐるりと一周した。


「お手伝いさんの読んでたマンガに書いてあった『ラーメン屋』っていうのはこれかぁ」


 外にいても店から漏れてくる香りにつられるように少女は店に入った。


「いらっしゃいませっ!」


 店員の元気な声が響き渡る店内。正午を少し過ぎた店内は、客で溢れ返っている。少女はうっとりとしながら、その場で辺りを見渡していた。


「横の機械で食券を買って下さーい」


 少女がその場から動いていないことに気がついた店員は、大声で言った。忙しくて、厨房から出ることができなかったからだ。

 2人分のとんこつラーメンを作り終えた後、再び店内を見ると、同じ場所に少女は立っている。少女の元に向かおうとした瞬間、タイミングが悪く注文が入ってしまった。


「お客様、こちらの機械で食券を買ってもらえますか?」


 客が帰った後のテーブルを綺麗にしていた店員が気がついたようだ。少女に近づいている。それを見届けて、厨房の店員は注文のとんこつ醤油ラーメンを作り始めた。


 あの年で食券を知らないなんて珍しいな。高校生くらいの少女のことを考えながら、厨房の店員は麺をゆで始めた。

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